公害資料館連携フォーラムin富山 Vol.4 ~学校で公害について学んでいくこと~

こんにちは!

第4回目となる公害資料館連携フォーラムin富山の報告です。先日のブログでは「企業との関係づくり」分科会についてご紹介しましたが、今回は「学校との関係づくり」について書きたいと思います。

「学校との関係づくり」分科会は、1日目と2日目にそれぞれ違うテーマで開催されました。1日目には、県内の小学5年生に配布される「イタイイタイ病副読本」の作成に携わった富山国際大学の水上義行教授をゲストに迎え、学校カリキュラムの中にどのようにして公害教育を取り入れるかということについて話し合われました。2日目には、実際の教育現場の中でイタイイタイ病を取り扱った授業をどのようにしているかについて富山市立宮野小学校の先生である柳田和文先生にお話をいただきました。このブログでは2日目の分科会の話をしたいと思います。

宮野小学校はイタイイタイ病患者が最も多かった地域にあり、その校区には土壌復元工事が行われた地域も含まれています。そんな宮野小学校に赴任してくるまでは、富山県出身の柳田先生ご自身もほとんどイタイイタイ病に対して知らなかったそうです。そこで、4年生と6年生を対象に、イタイイタイ病を教材にした授業を実施されました。4年生は社会科の授業の中で、特にイタイイタイ病の原因究明にご尽力された萩野昇医師についての調べ学習を行い、6年生は総合的な学習の時間の中で「イタイイタイ病について伝えよう」という主題で授業が展開されました。いずれも県立イ病資料館の見学や被団協の髙木代表理事のお話を聞くなど、学校外の資料やネットワークが活用されました。小学6年生は神岡鉱業にも見学に行ったそうです。

分科会の中では、柳田先生から授業を実践していく中での工夫や気づき等をご紹介いただきました。印象に残ったことは、イタイイタイ病を勉強し始めた当初、生徒たちは神岡鉱業に対して強い批判的な印象を持ったのが、髙木代表理事のお話を聞くことでそれが少し変わった、ということです。公害を直接的に引き起こした原因企業である事実は揺るがないにしても、その後の「緊張感ある信頼関係」に対する企業側の努力について当事者である髙木さんがお話しをされたことで、生徒たちの神岡鉱業を見る目が一元的でなくなったのです。髙木さんから患者の立場で企業の批判をたくさん聞くと思い込んでいたら、むしろ企業を認める話もされたことに意外に思った生徒も中にはいたかもしれません。

 

分科会の様子

分科会の様子

 

書籍や映像などの資料を自分なりに受け取って「公害はいけない。原因企業は悪だ」ということを決めるつけることは簡単だと思います。もちろん事実は事実として受け止めなければなりません。ですが、大切なのはそこで思考停止をするのではなく、企業の従業員も同じ人間であるにも関わらずなぜそれが発生したのか、発生後にどんな努力があったのか、これから先二度と起こさないためにどうするかなどを考え始めることだと思います。そして、それを考え始める時にはやはりなるべく多くの立場の人から話を聞く必要があると思います。柳田先生の授業も決して学内で完結させるのではなく、その地域全体を学びのフィールドにし、関係者と生徒たちを直接交わらせたことが重要だったと改めて思います。

その公害教育を学ぶ過程は子どもだけではなく、大人にも当てはまることです。そのような意味で、柳田先生を通して、分科会参加者の方もまた公害教育について生徒たちから学んだような時間となりました。

 

すっかり長くなってしまいましたが、次回のブログでフォーラム全体のまとめをしたいと思います。

kensuke eguchi