環境保全活動・環境教育推進法”基本方針についての意見交換会(第2回)議事録3 2012年1月28日

環境保全活動・環境教育推進法”
基本方針についての意見交換会(第2回)議事録
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人材登録について

発表者:NGO[(財)日本自然保護協会]・志村智子氏

○ファシリテーター・青木氏:

まずお聞きしたい。この法律の基本方針に盛り込むべきポイントを一言でいうと?

○発表者・志村氏:

団体としてはまだ検討中だが、個人的には「育成の制度と同時に受け入れ側・使う人のトレーニングも必要」だと考えている。

○ファシリテーター・青木氏:

了解した。では発表を。

○発表者・志村氏:

  1. 環境教育の範囲は広い、どういう点で人材を育成するかも広い。たとえば、私たち日本自然保護協会の場合だけとってみても、自然を守りたい・・社会をつくる・・人をつくる・・ということが必要だと考え、人をつくるために自然観察会という場を利用しよう、ということで自然観察のリーダーをやるボランティアを25年以上育成してきた。意見の合意形成のトレーニングも含めて観察会という場を使っている。
    ただし、自然観察指導員とひとくちにいっても、約2万人が講習会を受講しており、得意分野も、活動の場面もとても幅広い。私たちは、活動の場、テーマ、手法を、3×3×3に整理している。NACS-J自然観察指導員の中だけでもこれだけある。これは自然の分野に限らないと思う。手法とテーマ・場と内容でいくつかのマトリックスができる。各分野で得意な人材がいらっしゃると思うので、それが活かせる制度であって欲しいと願っている。
  2. 環境教育そのものが過渡期。比較的短期間のうちに、多くの人材育成の制度ができたために、今回のような法整備を望む声が出た。それだけ過渡期ともいえるわけなので、登録期間は短いほうが良いが、利用する側からすると、そんなにころころ変わると使いづらい。
    実績の積み上げが見える仕組みがほしい(ミシュランのように)。一元的評価でなくその人を生かせる場がわかるような評価であるといい。
  3. 養成のカリキュラムで何時間勉強したかだけでなく、実際に貢献しているか、という視点で評価することも必要かと思う。
  4. NACS-J自然観察指導員は、このEE法ができると思う以前から始まった制度である。自発的な活動が前提になっているので、自分で場をつくっていくという前提でやってきた。環境カウンセラー等とは成り立ちが違う。そのため、不特定多数の人からの問い合わせには対応できない。システムがない。新たにシステムをつくるなら金銭的な支援も必要。

○ファシリテーター・青木氏:

これらを実行する主体としてはどこがいいと思うか。役所にデータ管理や登録の事務などやってもらったほうがいいか、民間のほうがいいかなど。

○発表者・志村氏:

検討していない。

○企業・関氏:

自発的に始まったそうだが、法的にこういう制度が決まったものとの違いは?

○発表者・志村氏:

基本的には同じ。日本自然保護協会は、できた人材が場をつくる、いわば環境教育のセールスをすることからつくらなくてはならなかった。学校でニーズがあって求められてやる、という前提の違いだと思う。

○環境省・滝口氏:

普通、いわゆる登録制度は、登録されるものの範囲が確定している。今回の人材登録制度は対象も手法も幅広い。いろいろな場で使え、変化、進歩していく制度でなくてはならない。それに合う運用の仕方は、普通の登録制度とはかなり違う。

○ファシリテーター・青木氏:

情報の管理・蓄積はどこがやるか。

○環境省・滝口氏:

データベースの予算は取っている。役人が直営で運営してうまくいくか。公益法人に任せるのは不明朗との批判があり、そのやり方はしない(会場より拍手・約1名)。その中で民間の方々のアイディアを生かしていくにはどんな制度がいいかは考えたい。

○NPO・柏原氏:

人材認定をされる側に立っている。指導者になりたいと思っており、気象予報士の資格をもっている。個人として動くときにどう動けば良いか分からない。動きやすい場を作るという意味では志村さんの意見に賛成。評価が相対的か絶対的かが気になる。データベース管理は官ではないほうがいい。全国各地にある“温暖化防止センター”は機能していない印象。あれは官。民間に委託したりする制度をつくるべき。

○企業・関氏:

私は否定的な意見。志村さんの意見は納得できるが、認定された人を誰が求めているのか。要望のない人を作っても仕方がない。漁業組合、森林組合など、既成のものを活用する事も視野に入れ、環境教育独自の人材を育てるのはいかがなものか。

○NPO・千賀氏:

組合にお願いすることが必ずしも良い結果を生まない。森林組合もいろいろなことをやってきていて、功罪も十分に論じられるべき。森林組合に対して否定的な意見の人を連れてきてやるならともかく、森林組合に一方的意見を述べさせることは私は大反対。漁協も同じ。漁協は漁港をつくることは是とするが漁港の功罪についての意見を持っていない。
資料を持っているのは民間。議論をしたものをまとめてきた人たちが認定制度で学校教育や地域で育成され、こういう意見がいろいろあって、自分はこういう立場だが、君たちはそれを聞いて自分の立場をつくるべきときちんと言える人が人材として活用されるべき。

○ファシリテーター・青木氏:

どういう人たちからのニーズであり、どういう人を活用しようとしているのかということだが。

○環境省・滝口氏:

地方の説明会に行くと、学校現場で環境教育をやりたいが、誰にお願いして良いか分からない、という声がある。誰かお願いするとき、教育である以上、教育のスキルを持っている人が必要。先生方だけでは対応しきれない。

○教育関係・内藤氏:

学校現場にいるので答えたい。教員はともかく忙しいが、コーディネートはしなくてはならないと考える。誰々さんをお願いするというノウハウを目的として、私たちは研修をしているが、謝金の予算もない。タダで来てくれるのは、県の環境アシスタント、温暖化防止活動普及員。ただし、その人に何ができるかという情報がなくてはならない。金は学校にない。笑い話にすらなっているが、百何十人かの専門家にお願いするのに、県の環境教育部署からもらえる謝礼は2000円の図書券5枚。学校教育にくいこむには、県のシステムに登録して認知してもらわないと呼ばれない。また、ニーズが教育課程に組んであるか。専門家として教育課程をつくらないと入れない。

○ファシリテーター・青木氏:

学校の先生に利用してもらうためにも人材は登録で、その人に何ができるかをはっきりする必要があると言うことか。ではここで皆さんの意見を聴きたい。

質問:情報システムは
いる:  いらない:
民がつくる:11  官がつくる:

これらについて意見のある方は?

○NPO・青木氏:

情報システムはいる、官が担ったほうがいい。
 なんらかの形ではいる。学校に入るには偏った人でないかというチェックや、スキルもいる。しかし教育にスキルはいるが単元の狙いなど今の硬直したある種の教育スキルに環境教育が押し込められるのは嫌だ。新しい環境教育が今のシステムに入るにはどうしたらいいか。うまく回るのであれば、情報システムはあったほうが良い。理論的には民と思うが、今の総合学習の問題点は、学校だと「会社休んでタダ働き」ということが出ているので、学校予算ということを考えると官かなと思う。どちらもあり得るだけに迷った末に挙手した。

○NPO・林氏:

指導者の養成や登録などは、本来、都道府県レベルにふさわしい事業と考える。今回の人材育成・認定事業の登録制度は国レベルで統一的に行われようとするもので、不適切。直接の育成や認定ではなく、それら事業の登録であっても、国がやるような事務では決してない。

○発表者・志村氏:

登録された人材が活かされるには、県レベルの方がふさわしいかも、ということは私たちも議論した。たまたま私たちは全国一律のプログラム・登録制度を採用しているが、生物多様性保全の視点からも地域の特性を生かすことは大事な課題。逆にこの法律の中でどう生かせるか、いい仕組みができることを期待。

○ファシリテーター・青木氏:

基本方針に、人材の管理は県の単位でやれという言葉が入っていれば良いという意見はあるか。

○発表者・志村氏:

わからない。

○環境省・滝口氏:

林さんの趣旨はよく分かる。人材の情報収集・提供は地域ベースの話なので、県・市の仕事というのは一つの正論。制度としていいものをつくるために、地域レベルでの活動をきめ細かく出せるような仕組みをつくらなければならない。調査中なので、その中で考えていく。

○NPO・千賀氏:

環境教育には答えがない。自分の考えをまとめ、立場をはっきりする教育。登録して研修・研鑽しスキルを持つための研修は必要。スキルは必要なのでその意味で教育現場に入る人たちを管理すべきと思う。

○教育関係・内藤氏:

埼玉県では早くからこの法律を勉強している。「国・都道府県・市町村」とある。国の命令系統がなければ動かない。今まで文部科学省は動かなかった。モデルを出すのが国。そういう意味で大事。

当日のファシリテーション・グラフィック
記録者:川村研治(地球環境パートナーシッププラザ(GEOC))
→人材の紙は3枚ありますので、内容は本文をご参照ください。

発表者:志村氏

  • 育成と同時に受け入れ側のトレーニングも必要
  • 対象・場・テーマなどを明確にした人材育成
  • 登録の期間は?
  • 制度による人材の情報蓄積・評価のできる仕組み
     →一元的でない評価
  • 主体は検討していない

会場より

  • 法の人材育成はNGOのやっていたのとはどう違うか?

発表者:志村氏

  • 内容は違わない。NGOはニーズの掘り起しからやってきた。

環境省・滝口氏

  • 情報蓄積は予算を国でとっているが、主体については未検討。「指定法人」はとらない

会場より

  • 評価は慎重に(相対評価? 絶対評価?)。
  • 情報蓄積は官でなく民に
  • 育成された人のニーズはあるか? 森林組合、漁協など人材はいる
  • きちんとした職能を持った人が育成される必要はある

環境省・滝口氏

  • 学校現場などでは、環境についての知識に加え、教える技能を持った人を求められている

会場より

  • 学校の教師は専門家とのコーディネートをする。その時の情報が欲しい。金も必要。学校に他の専門家が入るシステムがいる。

質問:情報システムは
いる:  いらない:
民:11  官:

会場より

  • 環境教育に必要な技能とは? 今までの学校教育の技能とは違うのか?
  • 県レベルでの情報は有効だが、国で集約する意義なし

発表者:志村氏

  • 地域レベルでの情報蓄積・発信は重要

環境省・滝口氏

  • 地域での情報発信が有効との意見には同意。仕組みづくりが問題

会場より

  • 環境教育の技能を持つ人の研修や、情報を集める仕組みは是非必要
  • 国がリーダーシップをとらないと地域は動かない。まず国から

  →次(テーマ3:国・自治体の役割について)


index(もくじ) ・ #1:挨拶 ・ #2:環境教育の定義について ・ #3:人材登録について ・ #4:国・自治体の役割について ・ #5:プロセスについて