GEOCスタッフブログ

フューチャーセッションの設計を振り返ろう

フューチャーセッション・ウィーク@GEOCの締めは、
「デンマークから学ぶ!これからの教育フューチャーセッション」でした。

今回は、セッションのレポートというよりも、
ファシリテーター目線でセッション設計を振り返ってみます。


■50人越えのチェックインとは?

こういうセッションの時に、よくチェックインという形で、自己紹介をしたり、場になじんでもらう工夫を行います。
ただ、参加者が50人を超えることが確実視されていたことや、セッションのプログラムが時間みっちり詰まっており、
そのための時間を設けることが難しそうでした。

そこで、会場内の椅子を、3・4脚ごとに1つの小さな円をつくり、開会までの間に、
お隣さん同士で話しやすいつくりにしてみました。

それと、最初のプログラムの、デンマークツアー報告の際に、
報告者1人が10分話すごとに、近隣の人と1・2分意見をシェアする時間を設けました。

50人全員と話したり、1人ずつ自己紹介すると時間がかかるし、浅い感じになってしまうので、
お隣の人がどんな人なのか、繰り返し話す時間を持つことで、この後の対話を行う時間への準備としました。

どうすれば、場になじめるか?


■気になることを、場に向けて書き出してみる。

また、ツアー報告の際には、ホワイトボードを活用しました。
何に使ったかというと、各報告者が話した中で、キーワードになりそうな言葉や、
具体的な数字として出てきた事実を付箋に書いて、ボードに貼り出したのです。

・エネルギーコンテストの賞金が500クローネ(日本円で1万円相当)
・500%電力を自給している
・大学に入る前に自分が何をしたいのか試せる場
など、ふとした時に見直すことで、どんなことを話していたのか思い出せます。

場合によっては、ここで書き出した付箋を並び替えて、グルーピングして、
これまでの話の内容をまとめることもできます。

今回のセッションでは、まとめもしていませんし、その後、参加者に見られてもいませんでした。
残念ながら、あまり有効に活用できていなかったのは反省点でしょう。

話を共有するための工夫を


■話したいことを話しませんか?

その後、気になるテーマを話した報告者に個別に話を聞く時間を持ちました。
本来ならば、その後に、テーマごとにアイデアをまとめる時間を持つ予定でした。

けれども、テーマごとに集まることで、アイデアに制約をもたらしてしまうこと、
その5つのテーマに収まらない人もいるだろうことを、進行している中で感じて、
「自分が実施したいアイデア」を簡単に書いてもらい、
アイデアの内容が近い人たち、また共感するアイデアを書いている人たちで集まってもらいました。

結果として、この判断が正しかったのかわかりませんが、
その後の30分は、非常に盛り上がり、具体的なアイデアも出てきました。

折角だから、皆が「今」話したいことに焦点を絞る


この後、グループごとにアイデアを発表してもらいましたが、時間の都合上、1分で無理やりマイクを奪うという、
荒業の進行をしました。(一応、それが笑いに変わるような進行をしました)

これはあまりお勧めできなくて、参加者に自ら気づいてもらう、という仕掛けが必要だったと思います。
(ベルを鳴らす、手を挙げるなど)

あとは、発表が終わった後に、当然ながら、クイックレスポンスをした方が、
場が盛り上がったり、気づきが深くなったりします。

このような場合ですと、類似の事例を提供したり、
かなり具体的なアイデアの場合なら、参加者を募ってみたりするのも一つの手です。


と、このセッションのファシリテーターを務めた立場から、
どんなことに気を付けて設計してみたのか、現場でどのように判断したのかなど、書いてみました。
これが正解というわけでもないですし、むしろ、これいまいちだなあ、というものまであると思います。

今後、フューチャーセッションを開催する人の何らかの参考になれば幸いです。

会場を出た後も、話は尽きない


ちなみに、終わった後、私はすぐに帰ってしまったのですが、
参加者の皆さんは、熱心にその後も話を続けられていました。

こういう光景を見ると、主催者冥利に尽きますよね。


Takayuki Ishimoto

生物多様性の戦略=地域の活性化戦略!? 能登のとりくみ

過疎、高齢化からどう抜け出すか?
多くの農村が抱える課題ですよね。

昨日は、世界農業遺産や、その日本初の認定地である能登の里山・里海を
学ぶセミナーをGEOCで開催しました。
認定される地元のメリットは、それをうりにしてに観光客を増加することなのかな…と、
ぼんやり想像してしまっていましたが、そう単純じゃないようですね。

農業遺産の認定は、コミュニティとその環境、との持続可能な発展
‥(長いので中略)のシステムと景観。
ということで、生物多様性、知識、文化なども基準となっています。
認定により、観光の収入が増えたとしても、それが農家に還元されなければ、
それを維持することはできません。
さらに、特に途上国では、そのすばらしい景観が有名となり、
観光客が増えたことによって都市化や、棚田の踏み荒らされるなどの
逆効果も起こりかねないようです。

では、どうすればいいのか? 能登では…
認定されてまず、人びとの「意識」「ほこり」が変わった。
いつも暮らし・光景の価値を人びとが認識し始めた。
自治体も、農家や伝統を守るNPOの取り組みに資金的な支援をするなど
様々な取り組みを始めた。
認定から2年も経て、ようやく7つの農協が連携し、
能登全域を挙げて減農薬を行い棚田米のブランド化した。

すぐに過疎の課題がなくなるわけではないけれど、
10年・20年のスパンをかけて、
農業遺産保全・生物多様性保全・地域活性化の施策を
一体としてとりんだ成果が少しづつでてきたようです。

里山・里海の作り出す、美しい景観。
伝統を脈々と受け継ぐ人びと‥、その発展に向けて行政やNPO‥。
私もそんなところに住みたい…と、思わされました。
ただ、地元では『これが最後のチャンス』とも捉えているとの
石川県の担当の方の説明に、日本の農村の抱える課題の深刻さを再認識しました。
最後にご案内☆
そんな、奥能の民俗行事「あえのこと」を実演・解説します!
農耕神事の一つ一つに知恵と文化が詰まっています。
6月22日(土)14:00~@GEOCにて

また、環境省が力を入れるグリーン復興の核、
「三陸復興国立公園」をレンジャーが直々に解説します。
どのように、自然環境と地域のくらしを後世に伝つつ、活用して
復興していくのか?
6月21日(金)19:00~@GEOCにて

また、『未来へつなぐ、里山・里海展
-三陸復興国立公園、世界農業遺産「能登・佐渡」-』開催中です。

いずれも詳細はコチラ
/event_seminar/multi/detail94
おまちしています♪
Midori Kitahashi

エネルギーの未来は、「BUKE LIFE」にヒントあり?!

エネルギーの未来を考える!
そんなワクワクするフューチャーセッションがGEOCで開催されました。


■お互いを知る

市民のエネルギー自治に関心が高まっている



ます初めに、フューチャーセッションズの有福さんから、
「3.11の震災以降、エネルギー自治の期待が高まっているが、行政、市民、企業のマルチステークホルダーの関係性の中で、どのようなプロセスを経ていけばよいだろうか」、という本セッションの背景が示されました。

その後、セッション参加者一人一人の簡単な自己紹介。
エネルギー会社の社員、エコアパートの経営者、地域のエコメディアの運営者、バイオマス関連のコンサルタント、科学館のコミュニケーターなどなど、多様なバックグラウンドを持っている方々が集まりました。


■インスピレーションを得る

フィッシュボウルで気づきを得る


続いて、今回の事例提供となっていただく、鎌倉市の方からお話をしてもらいました。
鎌倉では、産業部門よりも、家庭部門の方がCO2排出量が多いということや
(というのも、工業区域が大船などの一部に限られているため)、
歴史的景観を保つために、景観条例等で建物の高さが規制されており、大型の風力発電等の導入が難しいこと、
観光地であるため、道路の渋滞が激しく、車での移動が不便、
など知られざる鎌倉のエネルギー事情を知ることができました。

さらに他の角度から、エネルギーの話を深めるため、フィッシュボウル(金魚鉢)形式で、参加者による対話を行いました。
話したくなった人が、前に出てきて自由に入れ替わりながら話をしていくという、ちょっと変わったスタイル。
最初は、遠慮がちでしたが、時間がたつにつれ、話したくなってきたのか、どんどんみんな前に出てきます。

この時、話の中で出てきたキーワードとして、印象に残っているのは、
・パッシブデザイン
・夏の排熱を利用する方法はないか
・コンセントの内側を知る
・お母さんの参加
・エネルギーの時給を知る、教育リテラシー(ESD的) です。

その他のキーワードはこちらをご覧ください。(クリックすると拡大表示されます)

フィッシュボウルで出てきた意見
(クリックで拡大)



■エネルギーの未来のために何ができるか、深める

ワールドカフェで、問いを深める


一旦、休憩を挟んで、ワールドカフェでさらにエネルギーの未来を探求します。
ここでは、事例提供して頂いた、鎌倉市をモデルケースに、同市のエネルギーの未来を考えていきます。

[Round1]自分たちでエネルギーをつくるとしたら何ができるだろうか?
[Round2]自分たちでエネルギーをへらすとしたら何ができるだろうか?
[Round3]自分たちでエネルギーを融通(ピークカット、マネジメント)していくとしたら何ができるだろうか?


テーブルを巡りながら、様々な話題が出てきます。
やはり、古都鎌倉として、武家の都という点を生かせないか、
自動販売機を撤去して、水筒に変えられないか、
観光客が多いので、振動発電をしてはどうか、
コジェネレーションで排出される熱を、足湯で活用できないか、
など、実現可能性はさておき、自由なアイデアが生まれてきました。


■クイックプロトタイピングで、2020年の鎌倉を描く

クイックプロトタイピングでエネルギーとの関わりを描く


さて、これまでの時間の話を踏まえて、「2020年の鎌倉市のエネルギーの未来」について、
ポスターを作成していきます。

短い時間の中で、必死にアイデアを形にしていきます。
全体のシステムを捉えて、どのようにアイデアが組み込まれていくか、
俯瞰的に見て考えていきます。

BUKE LIFE


私のグループで出てきたのは、「BUKE LIFE」という案です。

武家の都、鎌倉をエネルギーの視点でとらえなおします。
「BUKE LIFE」というのは、鎌倉時代の暮らしを再現した宿泊施設を設けて、
観光客にそこで数日間生活してもらいます。
そうすると、薪を使わなければエネルギーは得られないので、普段、いかに私たちが
エネルギーのことを見ていないのかを実感できます。

また、お寺や神社には、お堂型のコジェネレーション設備があり、
発生した熱を足湯やホットヨガに活用します。

また、自動販売機を撤去して、「サムライボトル」という水筒を持っていれば、
どこでも給水ができるようにします。

という風に、荒唐無稽なアイデアも含まれているように思いますが、
このアイデアを丸ごと使うのではなく、要素を見れば、活かせそうな点が見えてきます。

少なくとも、「武家」というコンセプトは、鎌倉が鎌倉足りえるためにも、重要な要素です。
エネルギーを、ただ環境の話として捉えるのではなく、その他の要素と有機的に繋げることは、有効でしょう。


今後、鎌倉市では、市民参加型でのエネルギー基本計画を控えているそうです。
今回のセッションで生まれてきたアイデア、またプロセスが何らかの形で役立てば幸いです。


なお、本セッションのことを、FutureCenterNEWS JAPANさんが、分かりやすくレポートしてくださっています。
合わせてご覧ください。


Takayuki Ishimoto