[国内事例119] 湿地のめぐみを次世代につなげるユースの取組み~ユースラムサールジャパン~


概要

平成26年、ラムサールセンターが実施している、湿地を中心とした子ども向けの環境教育プログラム「KODOMOラムサール」プログラム(以下KRプログラム)経験者である、中高生・大学生を中心に、ユースラムサールジャパンが発足した。「国連ESD・GAP(あいち・なごや宣言)を実践し、若いユースの力で世界中の湿地に新たな風を吹き込む」ことを目指した、ユースによる、湿地を中心とした様々な活動を展開している。

 

 

経緯

ラムサール条約について

ラムサール条約」はもともと、主に、全世界の湿地を移動しながら生活をする水鳥の生息環境の保護のために採択された条約で、地球的規模で自然資源の保全を目指した最初の条約である。2016年3月現在、日本がこの条約に登録している湿地は50箇所ある。

ラムサールセンターとKODOMOラムサールプログラム

もちろん、湿地保全の目的は水鳥の生息環境の確保だけではない。湿地はありとあらゆる生きものの生息地であり、人間活動にも深く関わっている。50の湿地には、50通りの生態系、受け継ぐべき歴史、守るべき文化があることは言うまでもない。ラムサール条約では、「保全」「賢明な利用」「CEPA※」の3つの行動により、こうした湿地を守ることを規定している。

 ラムサールセンターでは特にCEPA活動に力を入れ、2006年より継続的にKRプログラムを実施してきた。主に小学生を対象とした本取組みは、約10年間で、2300名以上に学びの機会を提供し、各湿地で活躍する子どもを育ててきた。平成26年度には、環境省の「地域活性化に向けた協働取組の加速化事業」(全国)に採択され、より各湿地の主体性にフォーカスし、ESDの視点を強化。いままで以上に地域の関係者と協働して展開した。

※CEPA:Communication, Capacity building, Education, Participation and Awareness

ユースラムサールジャパンの誕生

 そんなKRプログラムから、新たな動きが生まれた。それが、「ユースラムサールジャパン」だ。2015年9月に実施された「ESD・KODOMOラムサール湿地交流in藤前干潟」と併催する形で「ユース会議」が実施された。そこに集まったのは、KRプログラムの“卒業生”たち。そこでは、自分たちの知識と経験を活かして出来ることは何か、同世代の友人にも湿地や環境に関心を持ってもらうにはどうしたらいいかなど、活発な意見交換がなされた。また、中高生になると湿地に関わる機会が減ってしまうことからネットワークの必要性が話し合われ、その結果、「ユースラムサールジャパン」が結成された。

 

活動内容

  

中学生から大学院生までのメンバー自身で活動を計画立案、実施している。また、ラムサールセンターに協力して、KRプログラムのスタッフとしても活躍している。

 9月に実施された「第2回ユースラムサール交流会in琵琶湖」は3つの湿地(蕪栗沼/化女沼・藤前干潟・琵琶湖)から12名の参加があり、イベント出展やワークショップ、琵琶湖の湖水浴、在来魚/外来魚の解剖・試食などを実施した。ユースによる主体的な環境教育活動としてメディア等にも注目された。

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ブラックバス(外来魚)をさばく!

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琵琶湖で湖水浴を楽しむメンバー

 

ポイント

①世代間のネットワーク

 もともとKRプログラムの活動でのネットワークを母体とするユースラムサールジャパンには、ラムサールセンターはじめ、各湿地で活動するNPOや自治体などとのつながりがすでにある。ラムサールセンターのメンバーや各湿地の関係者(NPO、自治体等)が直接指導し、ユースの座学やフィールドワーク、運営などを支援しており、多くの大人に支えられている。KRプログラムのスタッフとしてユースが活躍することで、担い手としても期待されている。

②地域間のネットワーク

 ラムサール登録湿地をつなぐということは、必然的に地域を超えたつながりが必要となる。物理的な距離の問題はあるが、現代ではそれをカバーできるツールが充実している。無料通信アプリなどを活用して会議の議題を決めたり、活動方針を話し合い、定期的な会議やイベントを開催。ユースならではのネットワーク作りを実施している。

③主体性を活かす場づくり

こうしたタテとヨコのネットワークを活用し、彼らは主体的な活動を続ける。この「主体性」が、ユースラムサールジャパンの背骨になっていると言えよう。

KRプログラムを体験して興味を持ち、小学生のうちは湿地に親しむ活動を実践していても、進学など諸事情で現場を離れる子もいる。地域の活動団体も対象は小学生が中心という場合が多い。しかし、ユースラムサールジャパンが発足したことで、中学生になっても活動がしたいと思う子の主体性を活かせるチャンスが増えた。

彼らの活動は、何よりも、とても楽しそうである。学業の傍ら、運営の苦労もあるのだろうが、湿地を大切に思う気持ちが彼らをつなぐ。今後は、KRプログラムのスタッフとしてコミット度を高め、ユース版のKRプログラムを実施したり、ワークショップ等を通じた彼ら自身のより高いレベルの専門知識の構築、さらにそれをアウトプットする場として、主に同世代に対しての普及啓発やイベントを検討しつつ、国際会議などへの進出も視野に入れているという。

持続可能な社会を考えるとき、次世代を担う彼らが持つ価値観や行動力が重要であることは間違いない。こうした取り組みを参考に、各分野でユースのネットワークが構築されることを願う。

 

カテゴリ

 ■ESD・環境教育

 ■生物多様性・自然保護

テーマ

 ■実行委員会・協議会

 ■その他(世代間ネットワーク)

関係者(主体とパートナー)

【主体】
 ユースラムサールジャパン

【パートナー】
 ラムサールセンター
 NPO法人日本国際湿地保全連合
 ラムサール条約登録湿地関係市町村会議
 各ラムサール条約登録湿地にあるビジターセンター・NGO・NPOなど

 

取材:高橋朝美(関東地方環境パートナーシップオフィス)
2016年3月