[国内事例102] 行政区を超えた一つのバイオリージョンを目指して(東京都/埼玉県:狭山丘陵)


概要


 狭山丘陵は、東京都北部と埼玉県南部に跨る東西11km、南北4km、総面積約3,500haの丘陵だ。周囲は平地であり、このあたりだけが小高い丘になっていることから、「緑の島」とも呼ばれている。2013年春、この丘陵を舞台に狭山丘陵全体の保全活用を一体的に進めることを目的とする「狭山丘陵連絡会」が発足した。連絡会の構成メンバーは、丘陵地にある公園緑地の管理者や周辺の教育機関、市民団体である。
 一般的に、都道府県、市区町村を問わず行政区を跨ると管理方針などの違いから、地域を一体として捉えて保全することが難しくなる。今回は地域の団体が県域を越えて連携し、一つのバイオリージョン(Bioregion=生物域)として守っていこうという取り組みを紹介したい。

背景

 狭山丘陵は都心から北西へ約40km程度にあり、中心には東京の水源である2つの貯水池(人造湖)がある。明治維新以降、急増する東京の水需要に対応するため、狭山丘陵の谷間に堰をつって多摩川の水を貯めておく、村山貯水池(通称:多摩湖)、山口貯水池(狭山湖)が昭和のはじめまでに作られた。こうした背景もあり、東京都と埼玉県の境は、複雑に入り組んでいる。(下記地図参照)

 東京都・埼玉県が管理するほか、埼玉県側に連なる北部緑地は行政、(公財)トトロのふるさと基金が所有するトラスト地、南部は東京都や東京都瑞穂町、東京都武蔵村山市、東京都東村山市となる。東京都側の多くは都立や市立の公園になっており、都立公園については指定管理制度が導入され、NPOと企業の協働による「西武・狭山丘陵パートナーズ」が運営しているが、こちらの取り組みは平成21年度 第25回都市公園コンクールにて、市民参加型のパークマネジメントが評価され「東京都立 野山北・六道山公園における新たな協働型パークマネジメント」について管理運営部門の国土交通大臣賞を受賞するなどの実績を持つ。

 

経緯―都道府県域を越えた地域のつながり

 国や東京都などでの決定を受けつつ、具体化してきた流れがあると言える。

 以上のような経緯があり、狭山丘陵の都県をまたいだ取り組みの下地が、行政的にも進められてきた。またこうした志向は、バイオリージョナリズム(生命地域主義)として、60年代後半のヒッピームーブメントに端を発し、70年代にアメリカで提唱された概念でもある。行政などの政治的な線引きではなく、河川の集水域(流域)単位で物事を考える事は、生態系のまとまりだけでなく、治水の面でもメリットがある。琵琶湖のように、県域と集水域が一致している地域は極めて少なく、より合理的な地域マネジメントを考える時は、複数の行政が連携する必要がある。

 

取り組みについて

 狭山公園など狭山丘陵にある都立4公園の指定管理者である、西武・狭山丘陵パートナーズの声掛けにより、狭山丘陵の周辺で活動する民間団体や施設が集い、平成25年3月に「狭山丘陵広域連絡会」を開催することとなった。構成メンバーは下記の通り(順不同)。

 これまでにも、個別に連絡を取ることはそれぞれあったが、関係団体が一堂に会することはこれまでになく、今後年1回程度、集まる事とした。
 平成25年度には、関係団体により「狭山丘陵フェア実行委員会」を設け、「狭山丘陵フェア」を秋に開催した。フェアのホームページや広報誌を作成し、それぞれが開催する行事をとりまとめたほか、「未来の里山シンポジウム」と題された、狭山丘陵の将来ビジョンを語り合う場も設けられ、200人ほどの参加を得た。

【今後の取組】
 狭山丘陵は広大であり、貯水池でもあることから、一口にエリア全体の保全といっても実施事項は多岐に渡る。当面の狭山丘陵広域連絡会で取り組むテーマは外来種に対応する問題で、今年度は特に下記の2種について、情報の共有や今後の対応を協議する予定だ。

  • キタリス →侵入生物データベース(国立環境研究所)
    特定外来生物に指定されるキタリスの野生化が2013年、狭山丘陵で国内初確認された。狭山丘陵にリス類は生息していなかったが、ペット由来で人なれしたキタリスが、近隣の加治丘陵などのニホンリスの生息域に移動すると、交雑が懸念される。 
  • アライグマ →侵入生物データベース(国立環境研究所)
    特定外来生物に指定され、各地で農作物の被害などが問題になっているが、この地域では希少在来種のサンショウウオなどの成体及び卵が捕食されるなど生態系のバランスが崩れる大きな要因となっている。

ポイント

 貯水池という特殊な環境であるが故に、行政だけをとっても様々な管理者がいることから、調整が難しい面はある。しかし、森を自由に行き来する野生生物にとって、行政区域の線引きはそもそも全く関係のないものである。より総合的に自然と対峙するには、こうした「人間の都合」による線引きを超越する必要があるが、大きな組織だと個別地域毎の調整が難しい。
「狭山丘陵広域連絡会」も現在のところは、地域の団体・施設で緩やかに連携しながら、特定のテーマについて話し合いの場を持っているという形だ。今後は東京都や埼玉県など、自治体などを巻き込みながら、より広範なテーマについて、広域的なエリアマネジメントに発展することを目指している。今後の展開に期待したい。
 
 

環境分野

■生物多様性・自然保護 ■エコツーリズム

協働方法

■事業協力・事業協定

関係者(主体とパートナー)

英語サイト

http://www.geoc.jp/english/what/case-studies/1234.html

取材:伊藤博隆(関東地方環境パートナーシップオフィス)

2014年3月