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持続可能な開発セミナー第2回「地球環境問題各論勉強会」:地球温暖化と森林問題 議事録2

GEOC連続セミナー

「持続可能な開発」セミナー 第2回
「地球環境問題各論勉強会」:地球温暖化と森林問題

■森林問題編


講演要旨
(3)政府・国連における取り組み状況

講師:林野庁海外林業協力室課長補佐 今泉裕治氏
●資料:世界の森林動向と持続可能な森林経営の推進に向けた国際的な議論の概要(PDFファイル 48K)
 

「持続可能な森林経営」の概念が1992年の地球サミットで確立した。それ以降、合意を実施に移すため、国連を中心とした取り組みがなされてきた。

  • 世界の森林の減少・劣化の進行
    国連食糧農業機関(FAO)が世界の森林調査をしている。最新調査によると、1990~2000年には年平均939万ha(日本国土の4分の1に相当)の森林が減少しており、これに歯止めがかかっているという調査はない。1970年代後半から問題になっており、FAOなどで取り組みが始まっている。1986年には、国際熱帯木材機関(ITTO)が設立された。日本が世界に貢献する努力をし、本部を横浜に誘致した。林野庁でも熱帯林問題に関する懇談会を開催。世界の森林問題に貢献するための取り組みをしている。
  • 国連環境開発会議(地球サミット)―「森林原則声明」の採択
     「地球サミットの前後に相次いで採択されたのがリオ3条約(生物多様性条約、砂漠化対処条約、気候変動枠組条約)。」森林関係も、開発を規制する条約をつくろうという動きが先進国を中心にあったが、途上国を中心に「先進国も歴史的に破壊して発展した」と反対。そこで、わが国などを中心として原則的なことを合意しようということで声明としてとりまとめたのが「森林原則声明」である。持続可能な森林経営の概念が盛り込まれ、それ以降の国際的な取り組みのバイブルとなった。

    • 地球サミット以降の国際的な議論
       ・取り組みの原点としての「森林原則声明」
      森林原則声明の主要なポイントは次の通り:

(1)「持続可能な森林経営」の概念の確立

将来のニーズにも応えるべきという「持続性」と、木材以外の幅広い財とサービスを提供すべしという「多様なニーズへの対応」の2点に集約。

(2)森林経営に関する各国の主権と責務

他の国に制約されるのは発展途上国として受け入れられない。国内の森林はその国が管理する。

(3)各国における政策の確立

それぞれの国が、責任を持って森林を持続的に管理する戦略を立てて実施するという政策を取る。

(4)幅広い利害関係者の参画

影響を受ける幅広い利害関係者が、政策にかかわる必要性がある。

(5)途上国に対する資金や技術移転の必要性

単に資金・技術供与拡大ではなく、森林分野のODAは「持続可能な開発」の観点から極めて重要な投資対象であることを実地に証明していく努力が求められている。

  • 森林・林業分野での最近の国際的な議論・取り組みの概観(国連での動きを中心として)
     こうしたことを、着実に各国の実施レベルにつなげていくために、地球サミットフォローアップの枠組みが国連の下にできた。

(1)森林に関する政府間パネル(IPF)/森林に関する政府間フォーラム(IFF)/国連森林フォーラム(UNFF)

 森林に関する政府間パネルと政府間フォーラムは2年間の暫定的な枠組みで、政策的な提言をまとめた。それに対して国連森林フォーラムは、国連の常設機関として2001年に設置され現在も継続中。国連の組織体系としては重い位置づけの国連の「持続可能な開発委員会」と同等の枠組み。毎年1回5年間会議を開き、会議以外でも関係者が取り組みを実施。今年で4年目を迎える。

■森林に関する政府間パネル(IPF)

■森林に関する政府間フォーラム(IFF)

国連森林フォーラム(UNFF)

(2)国家森林プログラム(nfp)

 FAOを中心に、国連開発計画、世界銀行と連携をとって、先進国の援助の下に発展途上国のためのプロジェクトを実施する。

(3)モニタリング・評価・報告(MAR)に関する国際的な取り組み

 持続可能な森林経営の基準と指標に関する議論がここ10年来続いている。各種の取り組みが効果的に進んでいるかどうかをチェックするための基準指標について、熱帯林諸国、ヨーロッパなどがそれぞれチェックリストをつくり、森林の状態をモニターしている。森林面積、木材生産量、生物多様性の保全、レクリエーションとしての利用などの指標がある。モニタリング結果を国際的に報告し合い明らかにしていくよう、林野庁を中心に世界に呼びかけている。
参考:2001年に開催された「持続可能な森林経営の推進に向けたモニタリング・評価・報告(MAR)に関するUNFF貢献会合」について

(4)持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)と「パートナーシップ」推進の動き

 ヨハネスブルグ・サミットでは、政府間で合意した取り組みと並行して有志による取り組み、パートナーシップが奨励された。国、NGO、国際機関、産業界など、同じ目的を持つものがパートナーを組んで一定の目的に従って取り組みを進めるという概念である。例えば、林野庁は外務省と共同して、インドネシア政府と一緒に「アジア森林パートナーシップ(AFP)」を提案。アジアの人々と、アジアの森林に関心を持つ欧米諸国、国際機関、NGOも一緒に立ち上げた。

  • おわりに~今後の展望
      「地球サミットで、森林条約は合意に至らなかったが、議論の対象として は残っている。先進国ではカナダやヨーロッパ諸国は積極的で、日本も前向きだが、米国は後ろ向き。途上国では、国際的基準にのっとったほうが有利と考えた国が前向きに転じてきている。全体的にはすぐにコンセンサスを得られるという状況ではない。
     UNFFの当面5年間の締めくくりの会合が来年に開かれる。そこでどのような結論が出るかが重要。少しは進んだ国家森林プログラムの確立やモニタリング・評価・報告(MAR)などを核に、国際的規律ができる可能性はあだろう。

(4)NGOによる取り組み状況

講師:(特活)グリーンピース・ジャパン 尾崎由嘉氏
●資料:原生林保護キャンぺーン(PDFファイル 2M)

○グリーンピースは、世界の「原生林保護キャンペーン」を展開している。

  • 世界の原生林の現状
    世界資源研究所のデータによると、世界的に地球上の森林は8000年前と比較すると、80%減少・変化している。その最も大きな原因は商業伐採である。環境への影響を無視した計画による生態系に配慮のない大規模な皆伐や、再生不可能な伐採が行われている。違法行為を知らないで違法伐採された木材・製品を取引しているケースも多い。
  • 日本市場のかかわり
     日本は木材供給の80%を輸入に頼っており、日常的に使われる建築材・紙製品もほかの国の原生林の破壊につながっている。特に東南アジア、アフリカ、ロシア、南米から輸入している。
  • 原生林破壊による影響
    • 先住民の生活や伝統文化に影響
    • 生物多様性の喪失
    • 環境システムへの影響
    • 木材市場への影響
  • 木材消費側が取るべき対策
    • 木材消費の削減、再生製品の使用
    • 企業の購入調達方針の徹底や森林管理に対する認証FSC、国産材の利用
    • 生物多様性条約の会議の場で対策をとるようもとめている。
    • 輸入側の対策(政府による厳しい輸入規制、対策)
    • グリーンピース・ジャパンの各地での取り組み

カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州

ブリティッシュ・コロンビア州では長年、企業による破壊的な伐採が行われ地元先住民と対立していた。1999年にグリーンピース・ジャパンでは、どこの森の木材がどのような製品になって流通しているかについて日本企業に公開質問状送ったところ、226社が現地で皆伐を行うインターフォー社という企業から木材を購入していることがわかり、データを公表した。その結果70社がその企業からの購入を停止。伐採企業は市場が失われる危機を感じた。地域の声や環境保護団体の声を無視してきた州政府が話し合いを提案し「保護する」という合意が達成。今も先住民族と環境保護団体、科学者などすべての人が同じテーブルにつき、保護計画案などの話し合いを行っている。

オーストラリア・タスマニア州

樹齢400年以上、高さ90メートル近くもある樹木が点在するタスマニア州では、合法だが大規模な伐採が行われ、その9割が日本の紙市場への輸入。跡地には紙生産向けの単一樹種が植林されている。グリーンピースのスタッフが現在まで5カ月間にわたり、樹上65メートルで座り込みを続け、保護を訴えている。日本の企業に知ってもらいたい。

アジア太平洋地域

インドネシアやパプアニューギニアなど、生物多様性のホットスポットといわれるこの地域のために活動を続けている。今後、輸入国側でも輸出国側でも対策をとらないと原生林が失われていく。

  • 原生林減少の意味するもの
     生物多様性が失われるという生態学的な影響と、そこに住む人々の伝統が失われるという社会的な影響がある。グリーンピースは、森林そのものの機能と、環境システムの維持に対する影響の視点で森林保護を考えている。
     国際会議など取り組みはあるが、私たちの提言では輸入国側の対策が取られていないという認識である。実際の政策が行われるべきである。消費者・企業が購入方針を徹底することで、対策が取れることを認識してほしい。

 


Seminars on Sustainable Development

グローバルな課題を理解し、各地域・各テーマでより効果的に活動するために

各地・各団体の環境保全活動は他の活動や「持続可能な開発」という概念とどのような連関性を持っているのでしょうか。今回の一連のセミナーは、グローバルな流れと地域活動のつながりを見つけるために企画しました。国連を中心に取り組まれてきた地球規模での動き(歴史やヨハネスブルグサミット、その関連の条約)などについてまず捉え、また各団体の具体的活動とその連関性はどのようになっているか考え、各団体活動の位置や使命を再確認することを目的としています。これによって環境・開発問題に関してのさまざまな視点を養い、また連携やさらなる発展の可能性を見出すことが期待されます。
*用語解説は主にEICネットのホームページにリンクしています。