【開催報告】シンポジウム「グリーン×デジタルが先導する豊かな地域循環共生圏づくり」 2022年1月17日

開催主旨

地域の魅力を活かしながら資源循環や自然共生に取り組むことで脱炭素も実現し、それぞれに相乗効果が得られる、つまり地域においてSDGsを達成する社会、地域循環共生圏の創造を目指すにはどうしたらよいか。
本シンポジウムでは、グリーンとデジタルをキーワードに、今、地域が抱える課題に対し、どのような工夫で地域づくりを進めているのかを共有しました。さらに、ICT等の科学技術を活用したコミュニケーションや行動変容にも着目しながら、これからの地域づくりにおけるパートナーシップのあり方について意見交換が行われました。

開催概要

|日時| 2021年12月6 日(月) 14時00分~16時30分
|場所| zoomウェビナーとYouTubeにてオンライン開催
|主催| 環境省
|共催| 国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、
地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)

当日の動画

当日の様子はYouTubeからご覧いただけます。

当日の資料

〇登壇者プロフィール

〇基調講演:仁坂吉伸氏(和歌山県)資料

〇事例発表Ⅰ 正田英樹氏(株式会社chaintope)資料

〇事例発表Ⅰ 秋吉浩気氏(VUILD株式会社)資料

〇事例発表Ⅱ 竹本明生氏(国連大学サステイナビリティ高等研究所)資料

〇事例発表Ⅱ 今井弘二氏(国立研究開発法人情報通信研究機構)資料

開催内容

○基調講演
 「環境問題の解決に資する和歌山県の様々な取組」

和歌山県知事 仁坂吉伸氏

和歌山県での地域資源を大切に守りながら、後世に引き継いでいくため、それらをブラッシュアップして活用していこうという取組が紹介されました。 具体的な取組として、温室効果ガスの排出削減を目指した森林吸収源対策や自然エネルギーの活用、循環型社会を目指した3Rの推進や海洋プラスチックごみ対策、さらに、循環産業の好例として、世界農業遺産のみなべ・田辺の梅システムについてお話いただきました。 また、近年は関係人口の増加に向けた農家民泊や農業体験の他、ワーケーションにも力を入れており、通信環境の充実や顔認証システムの導入、コーディネート機能の集約など、今後もさらなる受け入れ態勢の強化を図っていくとのことでした。 講演後の質疑応答では、地域づくりのパートナーとして企業の役割と自治体としてのサポート、急速なデジタル化の流れに目を背けずキャッチアップする努力をしてきたことなどをお話しいただきました。


○事例発表Ⅰ 地域・企業

「ブロックチェーンを活用した地域循環共生圏づくり」
株式会社chaintope 代表取締役CEO 正田英樹氏

地域で生まれた再エネ資源の可視化、地域内での再エネ資源の循環、地域通貨の活用という3段階での取組が紹介されました。 現在実証されている取組として、佐賀市の清掃工場ごみ発電所等にシステムを導入し、地産地消率やCO2削減量をリアルタイムで市民に見える形で展示していることが紹介されました。今後は、他資源への応用や市民の行動変容につながるアプリ開発、地域通貨と連携した地域内経済循環への貢献などを検討しているとのことでした。

「デジタルファブリケーションを核とした地域循環共生圏の構築」
VUILD株式会社 代表取締役CEO/アーキテクト/メタアーキテクト 秋吉浩気氏

木工3Dプリンタやアプリの導入により、地域材を活用した家づくりを通して、地域の林業の課題解決や建築をより身近なものにする取組が紹介されました。また、昔は当たり前であった地域材の地域内消費を取り戻すことで、脱炭素にもつながることが紹介されました。 南砺市利賀村での実証実験で建築された家はグッドデザイン賞の金賞を受賞しており、今後はものづくりを核としたまちづくりの実践、地域循環共生圏の実現を目指しているとのことでした。


○事例発表Ⅱ 研究機関

「海外における脱炭素に向けた地域事例の紹介」
国連大学サステイナビリティ高等研究所 プログラムヘッド 竹本明生氏

2021年11月に開催された国連気候変動枠組条約第 26 回締約国会議(COP26)の報告を中心に、欧州を始めとした脱炭素に係る国際動向が共有されました。 気候変動対策においては、適応と緩和に加え、誰も取り残さない公正な移行や包摂性が重要視されていること、また、それを実現する上で、パートナーシップと教育の重要性が強調されました。

「臨場感ある共同体験を実現する技術がもたらす新たな価値創造とパートナーシップ~「みなっぱ」を利用した実践例と将来構想の紹介~」
国立研究開発法人情報通信研究機構ソーシャルイノベーションユニット戦略的プログラムオフィス イノベーションプロデューサー 今井弘二氏

ICT分野を専門とする公的研究機関として、臨場感ある共同体験をテーマに開発を進めている技術の紹介と、技術活用によるパートナーシップ形成や新たな価値創造についてお話いただきました。 具体的な実践例として、遠隔からの施設案内、科学教室における体験、仮想空間での作品展示、友好都市との遠隔交流が紹介されました。また、発表後の休憩時間を使い、大阪府枚方市の鍵屋資料館と北海道別海町をつないで、開発中の体験共有システム「みなっぱ」のデモンストレーションが行われました。


○質疑応答
一般社団法人環境パートナーシップ会議の星野智子副代表理事がモデレーターを務めた質疑応答では、デジタル技術の社会実装におけるポイントとして、市場におけるインセンティブの必要性、具体的な実例による理解と共感の促進、アナログのコミュニケーションの重要性などが共有されました。また、新たなコミュニケーションツールとして、AIの活用可能性が高まっていることも共有されました。


○総括

最後は、公益財団法人地球環境戦略研究機関の武内和彦理事長が、コロナ禍を契機に進んだ、自立分散でありながらデジタルによってつながる地域づくりの重要性を強調し、シンポジウムが締め括られました。