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【開催報告】2050年の環境・社会・経済~これからの私たち GEOCトークセッションVol.4 新しい旅のかたち・サスティナブルツーリズム 2020年1月24日

開催概要

|日 時| 2019年12月19日(木) 18:30~20:30(受付18:00~)
|場 所| 地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)セミナースペース
|主 催| 地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
|協 力| 伊豆半島ジオパーク、地域人、環境省

プログラム

【講演 伊豆半島ジオパーク推進協議会 専任研究員 新名阿津子氏】
  • ジオパークは世界41か国147地域に存在し、日本国内には44地域ある(うち、世界ジオパーク認定は9地域)。
  • ジオパークではローカルの価値を確認し、利用できるように自然環境や地域文化を整理している。
  • 自然遺産や地域文化を守り,継承しその価値を認識する環境教育を行っている。ジオパーク活動の推進には地域の人との協働が重要である。
  • 地形や地質といった遺産の重要性は社会的に十分に認識されていなかったが、そこにはこれまでの地球の活動が刻まれている。開発などにより失われたら二度と手に入らないもろいもの。地球の記憶=人類共通の歴史なのだ。この価値をどうやって社会と共有していくかがジオパークでは重要である。
  • 観光地としての伊豆半島は観光を支えるサービス経済が発達している一方、オーバーツーリズム、地域経済の課題、社会課題、環境の課題を抱えており、サスティナブルツーリズムとして取り組み始めた。
  • 例えば16か所あるビジターセンターでは旅行者とのコミュニケーショをとり、伊豆半島の価値を伝える活動をしている。ビジターセンターは来て学んでいきたくなるちょっと知的な観光案内所の役割を持っている。
  • 2050年の未来図をマンダラとして描き始めた。伊豆半島の姿をいろんな人と議論しながらつくり基本計画としてつくり、地域づくりにつなげていく。
  • 一粒の砂にも地球の歴史が刻まれている。地球環境、経済、社会と私の関係、観光を通じてどのようにつくっていくか、考えることが必要である。

 

【鼎談 新名阿津子×森川政人(環境省 自然環境局国立公園課国立公園利用推進室)×渡邊直樹 (地域人 編集長)】

渡邊氏
ジオパークという文脈は時間スケールが長い。人間はスケールの大きな自然を目の前にすると畏怖の念を覚え宗教や信仰につながる。そこにいいガイドがいると、それまで見えなかったものを見えるようにしてくれ、学びや好奇心につながるのでは。

新名氏
伊豆でもガイド養成をしているが、そこに住んでいてもそれまでは知らなかった地域のことを知ることにつながっている。お客さんが感動して満足することがガイドの生きがい。さらに地域のことを知ることも生きがいとなる。

森川氏
国立公園の魅力を、写真や映像、訪問者のことばで伝えている。自分はこの仕事に携わって10年くらいになるが、最近は特に旅行者の求めるものが表面に見える風景だけではなく、その土地の背景にある物語にまで及んできていて、見た目の壮大さだけだとアメリカの国立公園にはなかなか勝てず、物語が日本の国立公園の魅力だとおもっていた身からするとそのことを伝えることの喜びを感じられるようになってきている。

渡邊氏
地域人「生きている街並み」という特集で、小さい高山みたいなところで外国人の方に自転車で特に特色のない田んぼや街並みを案内し、由来や歴史を説明することをやっている人がいる。それが人気で外国人観光客が増えている。
従来の温泉地のような団体観光の受け入れでは説明しきれなかった魅力が伝えられるようなことになってきた。

新名氏
個々人の満足度につながる、テーマのあるツアーに人気がある。必ずしもマスツーリズムを目指さないサステイナブルな観光の指標を持つ必要があると思い、それを検討しているところ。

森川氏
地域と自然のつながりで言えば、シカやイノシシが増えている状況。国立公園の大半が山岳地域にあるなか、絶滅危惧種への配慮からシカ対策を農林水産省とともに実施している。
また環境省では地域循環共生圏といって地域の中でエネルギーも食べ物もつくれるなら使おう、という政策を進めている。地域にとってはエコであり自然エネルギー発電のための産業も生まれる、持続可能な地域づくりを目指すもの。この取り組みを進めることで地域の歴史ある産業を継承することにも、つながりといった事を求めている観光客のニーズにも応えられると思っている。

新名氏
伊豆半島はわさびの生産が盛んだが、地元の食事処で半島外のわさびが出されることもある。伊豆のわさびが全部伊豆半島産になるといいなと思っている。

 

【質疑応答】

Q:世界的にみると日本のガイドの活躍はどうか。環境・社会・経済が一体となることを目指すとき、ジオガイドの方が利益を創造していくことについての展望は。

森川氏
国立公園のガイドツアーは有料のものが多くなっている。有料の分、サービスも充実している。知識は価値があるものなのだと理解が訪問者も地域にも広がればと考えている。地域の良さを伝えることも仕事として必要であり、次のガイド役につながるという点でも地域循環共生圏を支えていくと思う。

新名氏
国によって違うがギリシャではガイド資格は国家資格であり,2年間の専門教育を受けたのちにガイド資格を得られる。マレーシアではギリシャほどで厳しく運営されていないが,ガイド資格は品質保証を証明する手段となっており,ガイド価格にもその価値が反映されている。日本でもガイドの経済化をもっと積極的に進めていかないといけない。特に若い世代が将来,職業を選択する際,ガイドという職業が収入につながることを示すことは必要なことかと思う。ガイドだけではなくアクティビティと組み合わせたガイド活動や,ガイドにアクセスしやすい販売経路をつくっていく必要がある。

渡邊氏
村生活自体を体験できることに魅力を感じて海外から人がくるという事例はほかにもあり、ヒントがあるように思う。

Q:日本の旅の質の向上について、どのように考えているか

森川氏
旅の質を向上させるためには、環境省として伝え続けていくしないかな、と思っている。世の関心が環境問題に向いてきているのでそれを追い風に地域に目がいくようになるだろうし、その流れをとらえていきたい。

新名氏
旅の質的向上について、好奇心を刺激するコミュニケーションを取ることが大事なのではと思う。楽しさを、知ること・わからないことの楽しさに変えていければ。自分たちから変わっていきたい。

渡邊氏
福島県小名浜市在住の小松さんという優秀なライターでもあり、アーティストでありガイドでもある人がいる。視点の時間がながく地域を大切にしながらみせることにたけている。そういう旅が増えていくのでは。