「環境教育関東ミーティング2015」が開催されました 2016年2月29日

「環境教育ミーティング」は、環境教育、自然体験活動、野外教育に関心を持っている方々が集まり、実践発表や情報の共有、研修や交流の場として毎年開催されています。1987年に全国ミーティングが清里で始まり、その後地域のネットワークを構築することが重要であることから、地域ミーティングが開催されるようになりました。「環境教育関東ミーティング」は2005年にスタートし、東北との合同ミーティング(2011年)を含め、今年度で12回目の開催となります。

環境教育の普及、促進を図るためには、何よりも人と人との繋がりとネットワークが大切です。多くの人から多くのことを学び、それを多くの人に発信していくことが重要です。そして、ひとりの力ではできないようなことも、多くの仲間と共に達成することができるのです。今年度も多くの方にご参加いただき、盛会のうちに終了しました。

開催概要

名称 環境教育関東ミーティング2015
テーマ 集まれ! 環境教育のなかまたち
~ ありそうでなかった、いろんな出会い ~
会場 八王子セミナーハウス(東京都八王子市下柚木1987-1)
日程 2016年2月13日(土)~2月14日(日) [1泊2日]
対象 学生、個人、行政、企業、教育機関、NPOなど環境教育に興味、関心のあるすべての方
参加者数 120名
主催 環境教育関東ミーティング実行委員会
共催 関東地方環境パートナーシップオフィス(関東EPO)
旅行実施 (株)日本エコプランニングサービス
協力 NPO樹木・環境ネットワーク協会(公財)東京都公園協会日本環境教育学会(公社)日本環境教育フォーラム(公財)日本野鳥の会NPOフュージョン長池

プログラム

■ 一日目  2月13日(土)

●基調講演

「多様な人が集まる都市公園の実践から
    ~里山がはぐくむ多様性と後継者~」
富永一夫(NPOフュージョン長池 会長)

今回、基調講演をして頂いた富永さんは、関東ミーティング開催場所の地元八王子市で、長池公園をはじめ、八王子東部地区の公園152箇所の指定管理を担う中核団体の方です。
富永さん自身は環境の専門家ではなく、外資系の会社勤めで培ったマネージメント、マーケティング、セールスという手法を用いて、NPOの代表を務めてきました。 2001年から長池公園自然館の業務を受託し、2006年から指定管理者として、地域の10代から80代までの多世代ワークシェアリングによる「みんなの里山保全」の運営手法が評価され、第32回緑の都市賞で国土交通大臣賞も受賞しています。
 また、そうした特徴ある公園運営を行ってきた結果、若い世代も集うようになり、近年では次世代へのバトンタッチに向け、人間の萌芽更新(里山の木を切った切り株から、新しい芽が生長することで、次の木が育っていくこと)を決意。21世紀を50年生きる20代・30代が里山で産業を創り、シルバー世代は応援団に徹するという発想です。「里山には多様な生き物が、個性豊かに生きているが、美しく融合している」。これを人間に当てはめると、様々な個性を持った人々が、調和しながら社会を形成する「里山民主主義」と言えるのでは、と表現されました。

●全体会

進行: 青木 章彦
(環境教育関東ミーティング2015実行委員長・わたらせ未来基金

参加者全員が参加するプログラム。今回は初参加の方も多く、緊張をほぐすためにも、まずはじめに全員で大きな輪になり大ジャンケン大会です。
その後、テーブルに分かれて座り、今回のミーティングに対しての「思い」や「期待」を小さな紙に記入し、参加者の気持ちを共有しました。

 

 


●分科会A

環境教育に興味があるという人から、深く携わってきたという人まで楽しめる講習プログラムや、野外に出て行う活動プログラムなどを実施しました。(下記は紹介文)

○都市公園発!地域の人と身近な自然をつなぐ取り組み

片山敦(NPOフュージョン長池)、杉山俊也・山田陽子(NPObirth

地方自治法の「指定管理者制度」が導入されて、12年以上が経過しました。公園などの公的な施設の運営に、NPOなどの民間団体が関わるようになり、より柔軟な公園運営が行われるようになったとも言われています。本分科会では、国土交通大臣賞表彰を受けた2団体の実践について発表していただき、参加者の皆さんと一緒に、環境保全や市民参加といった、時代に即した視点を取り入れた公園運営について考えます。

○埼玉県産シカを使った革クラフトワークショップ

平井純子(駿河台大学

シカが森林を荒らしている!といった話をよく耳にするようになりました。実際に森を歩いてみると、チョコボールのような糞や植物や木々に残る食痕、シカ道など、彼らの数の多さを彷彿とさせるものだらけ。ニホンジカを巡る環境問題を考えつつ、いただいた命の有効利用の手段のひとつとして、今回は埼玉県で駆除されたシカの革を使ったクラフトを実際に行っていただきます。(材料費の実費は別途いただきます)

○大学と地域が行う人材育成活動 〜多摩川源流大学~

石坂真悟(NPO多摩源流こすげ)、矢野加奈子(東京農業大学

地域の一番の魅力や宝は「人材」です。東京農業大学では山梨県小菅村と一緒に学生を育て地域の宝にする多摩川源流大学プロジェクトという活動をしています。多摩川源流大学の活動紹介と大学が地域に入る意味や、そこで学生や住民が何を学べるのか、また地域住民と共に活動を盛り上げる方法等を、参加者と一緒に考えるワークショップを行います。これからの地域を担う人材の育成をみんなで考えましょう。

○「よそ見」したら「ふと」始まる「いきもの時間」作り

荻本央(よそ見屋ぷろここ

「よそ見屋ぷろここ」は「よそ見」をテーマに、「ふと」した時と場所で始まる、いきものを紹介できる時間・モノづくりをしています。アウトレットモールで野鳥の紙クラフト作りをしたり、環境系NGO等の展示物・ロゴを作成したりするなど、オリジナルのプロダクトを用いて「興味関心の少ない人とも生きものの話ができる」状況を作っています。今回はその取組のコンセプトと活動を、野鳥の紙クラフトを作りながらご紹介致します。

○きのこ・粘菌と親しむ方法:自然体験活動への導入事例

緒方光明(自然公園財団日光支部

森の住人であるきのこや粘菌(変形菌)たち。学校の教科書に登場するかれらは、生態系における分解者と紹介されていますが、じつはその他にもとても魅力的な側面を持っています。この分科会では日光湯元ビジターセンターにてこれまでに実施してきた「きのこイベント」の結果・傾向を踏まえた上で、きのこや粘菌のもつ魅力と環境教育の教材としての可能性をご紹介いたします。当日は、生きた実物も持参する予定です。

○暮らしを創る自然学校 ~古民家を環境教育の場に~

遠藤隼(オオタカ保護基金

里山のタカ、サシバを活かした町づくりを行う栃木県東部市貝町にあるのが私たちの管理している大きな古民家です。
築150年以上、一歩入ると日本古来の四季に寄り添う昔ながらの知恵と工夫が垣間見える五右衛門風呂や囲炉裏にも出会えます。そんな古民家を舞台に環境教育の場として、今後どのように活かしていけるのか。また、これからの自然学校の形として、古民家を活用法したプログラム展開も考える時間としたいと思います。

○誕生!インタープリターカー!活躍と今後の展開

加藤達也・榮永知洋((株)自然教育研究センター森林公園金川の森

どんな場所も自然体験の場に変えちゃう車「インタープリター・カー」。人と自然のつなぎ役であるインタープリターの専用車です。さまざまな自然遊びの道具を乗せて、場所を問わず発進します!インタープリテーションの研究機関である帝京科学大学アニマルサイエンス学科の環境教育・インタープリテーション研究室と協同で開発し、自然教育研究センターのインタープリターがイベントを行っています。日本初!?の新たな試みの車を是非お楽しみください。

●ポスターセッション

参加団体有志によるポスターセッションを実施しました。活動の紹介をするとともに、活発な意見交換が行われました。

○那須高原自然学校の団体紹介
  NPO法人 那須高原自然学校 真山 高士

○花と生きものと水源の森・栃木県県民の森
  栃木県県民の森・森林展示館 遠山 あづさ

○環境クラフト
  相田化学工業(株) 吉原 秀和

○美しい富士山を子どもたちに残していくために…
  認定NPO法人 富士山クラブ 早川 友梨

○三富今昔村くぬぎの森
  三富今昔村(石坂産業株式会社) 小堀 進

○ecoconの活動についての紹介
  全国大学生環境活動コンテスト(ecocon)  北本 健人

○写真で感じる【八ヶ岳清里高原の自然】
  (公財)キープ協会 環境教育事業部 佐藤 陽介

○カイコと桑を教材としたゼロ・エミッション活動
  森林インストラクター東京会 遠藤 正

○人と自然をつなぐ。25年続く自然保護活動。
  Field Assistant Network 松下 美希

○今地球で何がおこっているか~あなたの優しさが地球を救う~
  NPO法人 神奈川県環境学習リーダー会 石井 栄

○東アジア環境教育ワークショップの成果
  日中韓環境教育協力会 茂木 紀夫

○多様で美しい共生の地、長池公園
  NPOフュージョン長池 小林 健人・片山 敦

●夕食&交流会

  
左:韓国からご参加いただいた皆さんです。
右:環境教育の世界には東京農業大学出身者も多く、毎年恒例になりつつある、農大OBによる青山ほとり(通称:大根踊り)も元気よく披露され、場を盛り上げてくれました。
自由に交流できる場ですので、新たな出会いがあちこちであったようです。

■ 二日目  2月14日(日)

●早朝プログラム

朝7:00~早朝プログラムも実施され、多くの方が参加しました。

① 自然の葉っぱを使ったリーフモチーフのストラップ作り
   相田化学工業(株) 吉原 秀和さん

② 朝フォト!ワークショップ~伝わる写真素材を撮ろう!~
   フォトグラファー・キープ協会環境教育事業部 佐藤 陽介さん

③ いろいろな油を搾ってみよう
   森林インストラクター東京会 遠藤 正さん

④ ゆるーい野鳥観察 & お散歩♪
   日本野鳥の会栃木 手塚 功さん

 

●分科会B

分科会の2日目です。(下記は紹介文)

○地域の活動を応援しながら学ぶ「緑のボランティア」

高瀬唯(認定NPO法人自然環境復元協会

里山や公園などの身近な自然は、ボランティアなどの手で守られています。しかし、地域の保全団体は高齢化・後継者不足で悩む一方、若い人は自然と触れ合う活動を求めつつも、どこでやって良いか分からない、というミスマッチが起こっています。当活動は環境保全活動の未経験者を対象に、気軽に参加できるシステムを構築し2,000名以上の登録ボランティアがいます。「環境保全の担い手育成」について、皆さんと一緒に考えます。

○自然を広報する 〜絵本で伝える人と自然の営み〜

向田智也(絵本作家、イラストレーター)

自然環境を考える上で、「いかに人に伝えるか」ということは非常に重要です。しかし、自然環境に関わる人の多くは研究者肌で、「伝える」ということがあまり得意ではないように思われます。この講座では、「いかにパブリシティをもって自然環境を伝えるか」をテーマに、実際にそれを仕事にしている絵本作家と、チラシ、カード、冊子などを作成し、自然環境の広報について一緒に考えたいと思います。

○ツバメは減っている? ツバメを守るグランドデザイン

堀本理華・荒哲平((公財)日本野鳥の会

春から夏に人家の軒先などで子育てをするツバメ。ツバメは、古来より私たちの暮らしに寄り添い生きてきた野鳥です。ツバメが姿を消すとき、それは私たちにとっても懐かしい風景が消えるときなのではないでしょうか。この分科会では、ツバメを取り巻く状況や、河川敷のヨシ原に集団ねぐらをつくって眠っているなど、その知られざる生活史を紹介し、ツバメを守るためには何をしたらよいのかを考えたいと思います。

○田んぼの生きもの調査 ~子供たちや地元の農家のみなさんと一緒に~

高橋伸拓(平成理研(株)

様々な地域で行った生きもの調査の中から、地域活動・振興につながった事例の一部を紹介します。活動の中では、(1)“リアルさ”の追及、(2)“いのち”や“かたち”について考え、(3)“生き方”を間近にみる。それらを通じて(4)“なぜ”を引き出し、(5)観察・同定から保全へ発展していくようにしています。本企画では、経験の有無を問わない参加者を募り、「生きもの調査」の今後の在り方をワークショップ形式で検討したいと思います。

○環境保全でメシを食う

野村遼介(認定NPO法人アサザ基金

環境保全は、従来の行政主導によるものから、近年では企業の社会貢献活動による取り組みが幅広く行われるようになってきました。しかし、それらを持続的かつ発展させていくには多くの課題があります。環境保全の為の予算を立てるのではなく、環境保全が経済システムに組み込まれた新たなビジネスモデルの構築が有効であると考えます。アサザ基金のこれまでの活動を始め、来年度から本格的に始動する農業生産法人の取組を紹介します。

○環境教育と里山保全をつなぐカードゲームの体験型ワークショップ

後藤洋一(NPO法人 樹木・環境ネットワーク協会

「里山」は各地でもその重要性を増していますが、学校や環境教育の中で里山をとりあげたとき、現在の子供たちが生きる社会とのギャップをなかなか埋めることできません。そこで、本ゲームの登場です!ゲームを通じて里山と保全活動の意味を学べるだけでなく、生き物のつながりや多様性保全などをテーマとした学びを提供することもできます。雨天時のプログラムにも最適です。分科会では、ゲームを体験するだけでなく、改善や発展版などを話し合います。

○今ここで、この自然をどう伝える? 身近な自然観察入門

小林今日子((公財)日本自然保護協会

豊かな自然、生きものに対する豊富な知識、これらがないと自然観察会や環境教育はできないと感じていませんか?実は野外での環境教育は都会でも、お散歩道でも、誰とでもできます。今回は知識に頼らず、いつでもどこでも出来る自然観察会を体験します。さらに楽しみつつ、自然を守る仲間になってもらうヒントも学べます。37年間続く自然観察会リーダー養成講座の手法も活かして実施します。身構えずに環境教育しましょう!

 

●クロージング

 
進行: 青木 章彦
(環境教育関東ミーティング2015実行委員長・わたらせ未来基金
再び参加者全員が集い、「このミーティングで得られたもの」をテーマにグループ毎で話し合いました。
 
閉会
 

●エクスカーション

メインプログラムの終了後に、オプションプログラムとして実施しました。

 

場所:東京都立小山内裏公園(東京都町田市)
豊かな自然環境の保全と多様な人が関われる空間作りの両立を実現している都立公園を視察しました。