環境保全活動・環境教育推進法 意見交換会 議事録2(2) 2012年1月14日

環境保全活動・環境教育推進法”
基本方針についての意見交換会(第3回)議事録

  

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2.環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関し政府が実施すべき施策に関する基本的な方針 について

(2)環境保全の意欲の増進、環境教育の推進のための施策

①学校、地域、社会など幅広い場における環境教育

コーディネーターの存在がカギとなると思われるが、これが職業として成り立つにはどうすればいいでしょうか?
 -NGO・大倉氏

○NGO・大倉氏

各地で環境教育が熱心に行われる時に、それを後押しする人の存在が大事だと感じている。コーディネーターの存在が強調されているが、職業として成り立つにはどうすればいいのか? 各地で後押しする人が必要であり、生計が成り立たないといけない。拠点施設も必要だが、施設に縛られない形で活動でき、自由度も高く生計が立つというある意味欲張った2つの矛盾したことが成り立つことが必要である。そんなコーディネーター像の必要性を、普段の活動の中で日々実感している。

○沖縄大学名誉教授:宇井純氏

台湾の例。台南にある干潟を埋めるか保全するかについて、いろんな利害関係者を集めた議論があった。市長が米国帰りの若い女性をコーディネーターとして任命して、8分通りまとまったところで市長が変わり、台北の別の政党の人間に引き抜かれ、議論が終わってしまったという例があった。三番瀬の場合にに非常に似ている。実際にあった例だが、コーディネーターとして有力な人間をまとめて欲しいと自治体が任命するということは、これから益々あるだろう。自治体の規模はいろいろであろう。首長に金を出す覚悟があれば、コーディネーターはつかまるだろう。その程度には、戦後民主主義は身に着けてきた気がする。

○ファシリテータ:青木将幸氏

合意形成の能力のある人、コーディネーターなど優秀な人材が食べてくしくみは大事。環境省としては、だから登録制度はそういうコーディネーターも対象にしようということか?

○環境省民間活動支援室:滝口直樹

登録しようとした人は環境教育を指導できる人であり、コーディネーターはそこに登録されている人が現場で活動できるようにする人であり、役割は異なる。制度を動かしていく上でコーディネーターが必要だということがまだまだ理解されていないので、コーディネーターの育成については概要案でも折に触れて書き込んでいる。

○「NPO法人・環境ケア」設立準備会:増山博康氏

基本方針の分量はどのくらいかによるが、省令やこの下にできてくるものがあって、そこでもこのような議論の場を設けた方がいいと思う。別の分野の事例だが、ある自治体の男女共生センターに環境団体が行って使わせて欲しいといったら、「女性の差別と人権とその歴史について学ぶ場所である」と職員に応えられ、その施設を使用するかどうか考えてしまった、という事例があるそうだ。悪い意味での官製フェミニズムだと批判したのだが、マニュアルどおりにしか対応できない場合があるということであり、そういうことを環境教育で引き起こしてはいけないということ。環境教育の中に「合意形成、コーディネーション、コミュニケーションスキル」など多様な概念が含まれるというようなことは非常に重要。ここで終わりではなくて、省令や要綱を作るところでこういう細かいけれど丁寧な議論を重ねていければと感じている。

○沖縄大学名誉教授:宇井純氏

環境省職員が日本中をかけまわって、いいコーディネーターがどこにいるかを探し回る必要がある。全国の公害反対の住民運動を見れば、優秀なコーディネーターがいる。霞ヶ関や永田町の外に出るということが、環境省の担当者については必要ではないかと思う。

ア.学校教育・・・この推進法の存在意義がほとんどない。55%のやっている学校と45%のやらない学校は、今後も変わらない。従って、イ。学校職員の資質向上は望めない。ウ・エ「幅広い場」、「人材育成・活用」もこれまで程度。法律はスローガンではない。規制が無ければ始まらない。
 -埼玉県日高市立高根中学校 内藤定芳氏

プログラムは現場から作るもので、与えられるものということの反復は、環境教育の根本の問題である。
 -千葉県立中央博物館 林 浩二氏

○千葉県立中央博物館:林 浩二氏

プログラムは専門家から与えられるものということを反復するというのは、環境教育の根本的な問題。本来、教育プログラムは地域・現場で自らが作るものであるはず。どこかの大学の先生らによって作られたプログラムを無批判に受け入れ、実践することに疑いをもたないようでは困る。これは環境教育界では古典的な議論であり、こういうことの問題性が全く理解されないで今更さも良いことのように書いてあるのはまったくもって不勉強と言えよう。

○地球環境パートナーシッププラザ(GEOC):川村研治

法律全体の考え方は自発性を伸ばす・意欲の増進が法律の肝であると考えるならば、自治体の職員・学校の教員や教育委員会などは一番自立性自発性に程遠い人達である。その人達に対して自立的自発的にがんばりましょうとしかこの法律で書き込めないところがこの法律の限界であると内藤さんは端的に指摘している。上からの命令でしか動けないような人達に対しては、そういう法律の作り方があるだろうし、自立性自発性を伸ばすということをもっと徹底的に行なうならば、自立性・自発性を持ったセクターをもっと学校や行政の現場に入れる制度的な仕組みとして書き込まなければ、自立性・自発性を原理とした活動は進まないということだと思います。

②職場における環境保全の意欲の増進及び環境教育

  ・「社会的信頼性」の名目で行政に対抗的団体を排除しないリスクの担保が必要である。
 -地球環境パートナーシッププラザ(GEOC) 川村研治

③人材の育成、認定事業の登録及び情報提供

人材に対してどのような財政支援を考えているのか、国際的な環境活動を行う人材の支援を考えてほしい。
 -COSPA 明智洸一郎氏

21世紀、日本国民の目指す方針は環境保護と国際協力。環境に国境はない。環境省、文部科学省だけでなく、外務省も含めた横断的なものでなければならない。
 -COSPA 明智洸一郎氏

○COSPA:明智洸一郎氏

人材にどのような財政的支援を考えているのか?私達は熱帯雨林の種の保全を行っている。環境については国境はない、と思っている。国際的視点は本基本方針の中に入っているのか。国内のことも大事だが、熱帯雨林の種の多様性ということについては先進国として日本は指導・教育していかなければいけないと思う。国際的な視点での取り組みをする人材はこの認定に入っているのか?財政的サポートするしくみははいっているのか?

○環境省民間活動支援室:滝口直樹

概要案の⑧に記述している。ただ、先進国が教えていくという発想だけでいいのか、我々が学ぶということはあると思う。が、もっと具体的に書き込みが必要というご意見があれば頂戴したい。

この前項の②とアの間に、全体説明がある。ここでも、全体説明を入れ、人材の大切さ、現在の取り組んでいる市民との関係を明確にして欲しい。
 -石井誠治氏

○石井誠治氏

地域には地域に取り組んで地域を知っている人がいる。全く新しく人を育成することもあってよいが、既に現場で取り組む人達を尊重し、さらにそれにプラスαとしての人材育成・認定事業であるということを、きっちりと述べてほしい。

④拠点機能の整備
⑤民間による土地等の提供に対する支援
⑥各主体間の連携、協力、協働取組のあり方の周知

国の基本方針に具体的な進め方が割と出ている。地方公共団体の基本方針の策定との関係、地方公共団体が行うとある策は地方公共団体としては制約されるものか。
 -兵庫県環境政策課 西川文雄氏

○兵庫県環境政策課:西川文雄氏

法律の中では地方公共団体も基本的な政策をつくるべきということになっている。ここまで基本方針に詳細に書かれているし、人材登録・認定なども国がやるということならば、都道府県や自治体は何をすべきか? 地方公共団体が環境教育の基本方針を作ってきた、またこれから作る中で悩んでいるところだ。あまり詳細に基本方針に書き込まれると国との差異化が難しい。また、NPOの側から自治体に求められているのものは何か?

○沖縄大学名誉教授:宇井純氏

歴史的には水質関連の法律は地方が先行してきたという事例がありました。環境省もそれは承知している。国がやっていないことでも市町村はもう一歩進めてやってきたのだという自負を持ち、(NPOも地方公共団体向けの)要求をつくり、(地方公共団体は)実績をつくっていけばいいのだと思う。

○環境省民間活動支援室:滝口直樹

基本方針は中央政府がするべきことを規定しているので、地方自治体に何をしてほしいということは書き込んでいない。もちろん、進んでいる自治体もある。宇井先生がおっしゃられたことにも絡むが、この法律はいろいろな主体の自主的な活動を促進するもの。国がやるから同じことを自治体がやってはいけないということではない。地方によって地域特性・独自性があり、それを生かす取り組みは、各主体がやっていただくことによって全体が盛り上がる。

連携促進法制度的裏付けが必要。「留意」、「努力」を書き込む意味が薄い。
 -地球環境パートナーシッププラザ(GEOC) 川村研治

○地球環境パートナーシッププラザ(GEOC) 川村研治氏

自立性・自発性に基づかない組織の人に連携促進を努力・留意しなさい、ではなく制度的なしくみをつくり、制度間で連携をとっていかないと、絵にかいた餅になってしまう。

美文には違いないが、実行され、達成される担保が全くない。
 -フリーランス 千賀修二氏

○環境省民間活動支援室:滝口直樹

批判は当たっている。自発的に今まで動いてこなかった行政の人達に、自発的に動けというのは難しいのはその通り。そのために制度的なアプローチをつくるのは、ありだと思う。グリーン購入法などは制度的な枠組みにより担保している。今回の基本方針作成のプロセスの中では具体的な枠組みは見えてこなかった。今後しくみを作るための方向性を作ったといえる。基本方針だけでも、「何かやらなきゃいけないのではないか?」と自治体の職員が少しずつ自分たちで進めていくための基盤作りにはなると思う。

○フリーランス:千賀修二氏

これは努力目標にしか過ぎない。実行され・達成されるための担保がない、と感じた。喫煙に関する法律で何が変わったか?実際に変わったのは病院と役所だけで、実際にレストランは全く変わった例は少ない。ISO14001のような構成がしっかりした仕組みがないと達成される可能性がないのではないか、と懇談会の中で産業界の誰かがいったが、私もそう思う。

○「NPO法人・環境ケア」設立準備会:増山博康氏

制度的枠組みは必要だが、自治体の(環境教育の基本方針を作る際に)環境部だけではつくらせないことを書き込んで欲しい。首長権限で庁内横断的な仕組みを作り、その中にNGOなども混ぜて作らなければ、なければ実行性を担保できない。ある自治体で環境計画を作った際に農林課が大反対した。環境基本計画によって農薬と化学肥料の規制されると困ると散々いわれた。そこで「この町のGDPを計算してみると農業のシェアは6分の1を切っているが、その農業が町全体の85%の農地と用水路を占領しているということを住民が知ったらどうに思うと思う?」と言ったら抵抗は一発で無くなった。事実をオープンに突きつけると抵抗は無くなる。環境のセクションがゴミのセクションとくっ付いているところは、“ゴミ”という事業をやっているから良いのだが、ゴミから切り離されている環境セクションでは、調査とか環境教育とかしかやっていくて、事業をやっていない。事業をやっていないところが環境教育の基本方針とかを決めているから良くないので、首長の権限の下に部署横断的な協議会をつくらせないといけない。
 また、自治体のステイクホルダーを在住・在勤で決められるのは困る。川の活動をしていても、川の向こう岸や上流・下流などでは関われないのはおかしいのでともかく止めてほしい。その点を法律の中で明記しておいて欲しい。

⑦情報の積極的公表

環境保全に関するとは何か? 国の保有する環境データとは違うのか?
 -フリーランス 千賀修二氏

○フリーランス:千賀修二氏

環境保全に関する情報とは何か? 例えば、農水省が持っていると思われる水田についての情報で、環境に良い情報だけではなく環境汚染に関するデータでも「環境保全に関する情報」という切り口でデータを出す、ということを規定しているのか。

○環境省民間活動支援室:滝口直樹

「環境保全に関わる情報」とは、環境に関するデータのこと。在れば出すべきものと考える。個人情報であるとか、データが整備できていない、などの制約はあるだろうが、あれば出すべき、ということだと思う。

○フリーランス:千賀修二氏

美田を守るのはいい。ただ化学肥料を使った水田だと、硝酸化窒素の地下水汚染やメタンガスの大量発生など、水田の環境の負の部分も明示されないと、環境保全にいい田とは何なのか?という議論にならない。

○環境省民間活動支援室:滝口直樹

法の23条(内容略)の条文には謳っている。努めるようにするということについては、国にかかっているので、農水省がそのデータを持っていれば、そもそも情報公開の対象になるが、情報公開法ではなくこの法律に書いてある事を盾に、出すべきと求めていくことはできる。そういう使い方をしないと、活かされない。

オーフス条約の環境に関する開発(あるいは・・・)のアクセス権の担保を明記すべきである。
 -フリーランス 千賀修二氏

○フリーランス:千賀修二氏

オーフス条約は国連の欧州委員会の中での条約。公共事業に関して計画段階から情報のアクセスを保障した法律である。欧州では8割の国がオーフス条約を批准したと聞く。日本でも同等な、環境に影響を及ぼす影響のある情報へのアクセス権を是非明示してほしい。

○環境省民間活動支援室:滝口直樹

オーフス条約については勉強会をEPO/GEOCでもやっている。欧州の批准国は数的には約30カ国。欧州の3分の1に過ぎないが、すでに発効はしている。日本の制度についてでは、評価はいろいろあるようだが制度面は既に整っているが、(行政側が)どう誠実に対応するかという運用上の問題がある、と勉強会の場でも指摘されている。

○「NPO法人・環境ケア」設立準備会:増山博康氏

合意形成・コミュニケーションなど環境教育は幅広い概念であるということでしたが、今の情報の話。環境教育にはまると思います。環境教育ところの文言にある人間と人間とのかかわりというところに情報がある。人材登録の際に情報の利用法活用法も入る。情報の利用法の登録団体が出てきたときにこれは情報の利用法だから環境教育ではないという理由で排除しないように明示して欲しい。

⑧国際的な視点での取組

京都議定書に米国を説得して調印させてください。
 -(株)関電工 松江良年氏

フロンガスの排出に罰則(罰金)制度を至急作って下さい。先進国で無いのは日本だけだ。
 -(株)関電工 松江良年氏

○(株)関電工 松江良年氏

この場に初めて来たので場違いで恐縮だが、CO2の排出はアメリカがダントツトップ。京都議定書にアメリカを説得して調印させてほしい。またフロンガスの排出に罰則を課するようにするべきである。

  →次(3:「その他の重要事項」と事項以外のご意見)


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