【報告】里山ミライ拠点化計画 連続トークセッション 第1回「限界"突破"集落の作り方」(1/21実施)


里山ミライ拠点化計画 連続トークセッション

一極集中型の都市構造が確立されていく中で、日本では地方の人口が減少し続けてきました。中山間地には豊かな自然・里山が残されていますが、近年は過疎化が急激に進行し、「限界集落」と呼ばれる集落が生まれています。

一方、開発が進んできた都市部でも、里山に関する課題が山積しています。都市近郊に残された里山は、自治体やボランティア団体が中心となり維持してきました。しかし、近年は高齢化に伴う担い手不足や資金難など慢性的な課題を抱えています。

つまり、日本では、中山間地の里山も、都市部の里山も、どちらも問題を抱えているのが現状なのです。

そこで、今回の里山ミライ拠点化計画連続トークセッションでは、そんな里山に希望を見出して活動されている方々をゲストに招き、「里山を拠点にして明るい未来を築くためには、どうすれば良いのか?」という問いを議論しました。

第1回「限界"突破"集落の作り方」

第1回のトークセッションでは、中山間地エリアの里山で活躍されているゲストをお呼びして、限界集落が「限界」を超えるためのヒントを参加者とともに探りました。テーマは「限界“突破”集落の作り方」です。

【ゲスト】

足立知彦氏/元・南魚沼市地域おこし協力隊浦佐地域づくり協議会 フットパス担当
保坂幸徳氏/株式会社アットホームサポータズ 
藤本亜子氏/一般社団法人Earth company

佐々木真二郎/環境省 大臣官房 環境計画課 企画調査室 室長

開催概要

〇日時:令和3年1月21日(木)19:00~21:00

〇方法:オンライン開催(Zoom)

〇参加者:46名

プログラム

1.開会・趣旨説明
2.レクチャー・話題提供
 「里山未来拠点形成事業について 第1章~里山の今~」
  環境省 大臣官房 環境計画課 企画調査室 室長 佐々木真二郎
3.リレートーク・事例紹介
  ・足立知彦氏/元・南魚沼市地域おこし協力隊浦佐地域づくり協議会 フットパス担当
  ・保坂幸徳氏/株式会社アットホームサポータズ 
  ・藤本亜子氏/一般社団法人Earth company

  -それぞれが“里山”(≒限界集落)と関わった背景
  -いま何を思っているか/何に取り組んでいるか
  -私の思う、“里山”の未来はこうだ!  
4.クロストーク 「里山をミライの拠点にするために」
  登壇者;佐々木室長、藤本氏、足立氏、保坂氏/モデレーター;関東EPO高橋  
5.終了

内容

1.開会・趣旨説明/関東EPO

100年先も200年先も、地球で、この地域で、豊かに暮らしていくためには、持続可能な社会の構築が欠かせません。しかし、異常気象による災害や未知のウイルスの発生など、「持続可能」に逆らうようなニュースばかりが昨今話題になっています。

 今回のイベントでは、里山の今を知り、人間社会との繋がりを見つめ直すきっかけを作れればと思います。森里川海の恵みを未来の子供に引き継ぐために、里山について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

 

2.レクチャー・話題提供

「里山未来拠点形成事業について 第1章~里山の今~」/環境省 大臣官房 環境計画課 企画調査室 室長 佐々木真二郎

里山はかつて人間の経済活動と密着して、仕事やお金を生み出していました。しかし、薪や炭を利用しなくなるなど生活形式が変化するにつれて人間は里山を使わなくなりました。その結果、里山はお金を生み出さなくなり、管理されず放置される里山が増えてきました。里山から資源を取り出さなくても生きていけるように社会が変容し、地域から人やお金が出ていく構造になっていきました。今では、持続できない地域を意味するいわゆる限界集落も出現してきました。

このように、里山が衰退した問題の根本には、ライフスタイルの変化(化石燃料、大量生産、消費社会)があります。

環境省の新規事業「里山未来拠点形成事業」では、必要に合わせて資源を取り出してきた里山を取り戻す活動を応援します。自然と共存しながら経済活動ができる「稼げる、暮らせる」里山作りを支援する事業です。

 

3.リレートーク・事例紹介 

足立知彦氏/元・南魚沼市地域おこし協力隊・浦佐地域づくり協議会 フットパス担当 

 

・新潟県南魚沼市にある辻又集落に居住しています。上越新幹線の浦佐駅から車で15分程度離れた場所で、昭和30年代は48世帯200人ほど住んでいたが、今は16世帯42人が暮らしています。豪雪地域のため、冬は3メートル近く雪が積もります。日照時間も短く大規模な田畑の確保が難しい集落でもあります。

・南魚沼市地域おこし協力隊へ参加しましたが、住める状態の空き家がありませんでした。街づくりに本格的に参加するには「自分が集落に住まなくては始まらない」と思い、古民家の改修を任務として始めました。地域おこし協力隊としての任期が終わっても、その古民家に住んでいます。ここに住み続けると決めたことで、辻又の住民として本当に認めてもらえた気がします。

・この辻又集落に住み続けていることが最大の成果です。住民の1人として地域をつないでいきたいと思っています。地域の人に田植え機を借りて米作りを始めたり、集落の古民家カフェで専修大学の学生とオンライン交流会を開催したりしています。

・任期後の仕事として、地域の良さを探す里山歩き「浦佐のフットパス」に関わり始めました。地域に人が歩くことで、住民の人の意識も変わります。「お客様に見せるならば、綺麗に草を刈ろう」「見にきてくれた人たちに作物をお裾分けしてみよう」という声も聞こえます。

・限界の突破方法はわかりません。そもそも里山の限界とは何なのでしょうか。今でも5、10年後に何世帯が残るのかはわからない状態です。ただ、そんな限界集落でも、そこに人が住み何かをしていくことで、周りを巻き込み、何かを変えていけるのではと思っています。血は継げなくても想いを継ぐことはできると思っています。地元の人たちの想いを継いでいきたいと思います。

 

保坂幸徳氏/株式会社アットホームサポータズ・山梨丹波山村 狩猟とサウナ

・東京都、埼玉県、山梨県の境界に近い、山梨県丹波村をフィールドにしています。関東では最小規模の村で人口は540人です。

・私も地域おこし協力隊として入村しました。山梨県でぶどう、ほうとう以外の新しい名産を作りたい、という想いを抱いていました。今は、「タバジビエ」というブランド品のジビエ肉を推進しています。

・鹿の肉を売るには、鹿の処理工場が必要です。当初は鹿肉を東京に流通させる仕事だけをやりたかったのですが、村に住み始めたら、過疎化で鹿が取れない状況にあると知りました。鹿を処理する人材も高齢化でやりたくないと言い出していた。山梨を活性化するという原点に立ち返り、自分が希望していた流通だけでなく、鹿処理工場の運営もすると決めました。

・テントサウナを使い、「狩猟とサウナ」というイベントをやっています。地方と都会をつなぎ地域を活性させることが目的です。今後は複数の地域で「○○とサウナ」という同様のイベントを開催しようと計画しています。地域の特性とサウナを生かせば、どこでもイベントが開催できると思っています。

・サウナに入ると、お風呂に入ったような感覚を味わえます。災害時には、電気を使わなくても入浴をした気持ちになれるのです。この特性を活かして、災害時に自治体同士がサウナを貸しあう連携協定を結びたいと考えています。

 

藤本亜子氏/一般社団法人Earth company

・インドネシアのバリ島にあるウブドという地域に住んでいます。バリ島は90%以上がヒンドゥー教。インドとは異なるバリ・ヒンドゥー教と呼ばれていて、信仰が深い地域です。

・「トリ・ヒタ・カラナ」というバリ島の人たちが大切している考え方があります。それぞれ神々、人々、自然との調和という意味で、三つの調和が幸せの原則であるという考え方です。

・この「トリ・ヒタ・カラナ」に基づいて、経済が回るほど、人、社会、環境がよくなる循環型のホテルMana Earthly Paradiseを2019年に開設しました。太陽光発電で電力をまかない、雨水を濾過して飲料水やシャワーに活用しています。敷地内にあるエシカルマーケットでは、オーガニック野菜を使った料理や地産の商品などが購入できます。

・コロナが蔓延し畑で働く人が増えてきました。バリ島の観光業が打撃を受けたため、職を失った人たちが農村に戻ってきたのです。その光景を目の当たりにして、人々の暮らしを守る農村の圧倒的な力を感じました。

・ウブドは伝統文化を守り、自然に謙虚な暮らしをしている結果、生物多様性が守られ、同時に移住者が増加しています。

 

4.クロストーク 「里山をミライの拠点にするために」

登壇者;佐々木室長、藤本氏、足立氏、保坂氏/モデレーター;関東EPO高橋 

お互いの発表を聞いて…

佐々木氏:足立氏が「楽しみ」の大切を強調されていた。どんな活動でも嫌々やるのでは継続できない。地域を盛り上げる活動でも、真面目にやることも重要だが、楽しさが大切と再認識しました。

足立氏:藤本氏からのバリ島の話が印象に残りました。若者が活発で、環境意識が高いのはなぜなのだろうと疑問を持ちました。バリと日本の農村の違いは、どこにあるのでしょうか。

藤本氏:日本に比べると、バリ島の人たちは、土に近い生活をしていると思います。廃棄物汚染などに対しても、土に近いからこそ感じる独特な感性が地域で育まれている気がします。

保坂氏:「里山は寂しい」というイメージを持っている人がいる。私自身もそうだった。しかし、一歩入ってみると、そこに住んでいる人に寂しさはなく、楽しい人たちばかりという事実に気づいた。田舎に行くと、都会が恋しくなる。都会にいると逆に田舎の静寂が懐かしくなる。行ったり来たりするところに、未来のヒントがあるのではないのではないでしょうか。

 

限界を突破するには?

保坂氏:里山ばかりをフォーカスするのではなくて、それを見たり評価したりする人たちも同じ問題を抱えていると意識を変えるべきではないでしょうか。里山に住んでいる人だけでなく、全ての人が同じ方向に向かっていかないと限界を突破するのは難しいと思います。そのため、都会と里山の両方の視点を持つ人たちが重要であると思います。

足立氏:「突破」が見えづらい集落もあります。「移住者を増やしたり、関係人口を増やしたりすれば限界を突破できるのでは?」という考えもあります。しかし、地元に長く暮らしてきた方々に故郷の良さに気づいてもらい、移住者と理解し合うことが大切なのではないでしょうか。必ずしも地元に都合の良い人たちだけが移住するのではない。「都市と農村」の二項対立ではなくて、問題を解消するには、お互いの違いを理解する気持ちが重要ではないでしょうか。

佐々木氏:バリの人たちが、お金ではない価値観で動いているという視点を興味深く拝聴しました。利益を出し続ける資本主義社会では、どこかで虐げられる人たちが出る恐れがあります。そういう世界から脱却していこうという想いがSDGsのメッセージには込められています。「お金の価値観」だけで左右されない、助け合いの社会の素晴らしさを見つめ直す一つの術が「里山」なのでは、と思いました。ありがとうございました。

 

 (編集:Kantaro Suzuki/フリーランス記者)

所感

コロナ禍に遭い、窮屈な暮らしを強いられた都市部の人が、もっと自然にふるまえて、自由に呼吸ができる暮らしを求めて、地方への移転や二拠点居住を志向する流れが起きつつあります。
このような動きは、今までの一極集中型の社会の在り方を変えていくためには必要な流れだと思っています。
しかし、それだけでは、実は山積した課題は根本解決に至らないのではないか、パラダイムシフトと言えないのではないか。

そんなことを考えたくて、この企画を考えました。

アンケートで多くの共感をいただいていた部分として、今回日本の里山の在り方を照射するエッセンスとして藤本さんにお話いただいた、バリの農村の、自然とともにある暮らし(トリ・ヒタ・カラナ)があります。
たくさんの方から、「日本もこうであったら」あるいは、「自分の住む地域にも通じるものがある」といった感想をいただきました。

「生きる」という、人類すべてに共通するミッションから考えたとき、里山は、レジャーや余暇、癒しを楽しむ場所であるという価値の前に、食べものを作る、住まいを守るという、命に直結する価値があることが、バリの事例から共有できました。

だからこそ、「都市も地方も、運命共同体であるということを、理解すべきである」という保坂さんからのメッセージも参加者に響きました。
—過疎・高齢化した地域に必要なのは、アイディアではない。
 時間と、体力と、お金。つまり、「ずぶずぶの関係人口」である。

「ずぶずぶの関係人口」とは、都市部にも軸足を持ち、地方にもライフワークやコミュニティへの関わりをしっかりと持ち、二拠点を自在に行き来し、自分も楽しみ、周囲も楽しませながら、その視点でなければ創出できない価値を創造していくライフスタイルを選択する人の動きです。
この「ずぶずぶの関係人口」は、「里山ミライ化計画」に、必須の要素だと感じました。

一方で、「里山の限界」とはそもそも何なのか?村が、集落が、地域が「持続する」というのは、どのような状態のことを言うのか?という、足立さんからの問いかけも、重要な問いとして、残っています。
そこに暮らす人の血が途絶えてしまったら、もうそこはもとの村ではないのでしょうか?
そんなことはない、と、地域の外に暮らす私たちは思ってしまいますが、実際にそこで暮らす人にとっては、重要な問いなのです。
―血のつながりは残せなくても、想いを残すことはできる。
足立さんは、言葉ではなく、実践する姿で、そのことを村人に伝える活動を続けています。

さて、第一回「限界”突破”集落」は、ここまで。
都市のニーズを受け止める側の農山村からの報告を経て、次回は、都市近郊で実際に都市のニーズと里山の連結をデザインする立場のゲストにお話しを伺います。

次回は3月5日(金)!>>>第二回「新・里山時代の幕開け」

 

(関東EPO高橋)