【国内事例120】 「横浜市ESD推進コンソーシアム」


概要

 今回紹介する「横浜市ESD推進コンソーシアム」は、横浜市教育委員会(以下、横浜市教委)が代表団体となり、横浜市内に於けるESD(Education for Sustainable Development =持続可能な開発のための教育)の推進のため、市内のユネスコスクールやESD推進のモデルとなる学校を支援するための組織だ。大学、市役所各部局、NPOなどがメンバーとなり、市内の公立学校の取り組みを支援する。

 これは「日本ユネスコ国内委員会」が実施する「平成28年度グローバル人材の育成に向けたESDの推進事業」の一つとして採択され実施している。
 この事業で目指すことは、各学校の特色や取組をESDで見直すことで、各学校へのESDの浸透を図ることで学校の力が向上することで、「期待感あふれる、未来志向のESD」を目指すものだ。

 

経緯

 横浜市内では、平成22(2010)年に横浜市立永田台小学校が初めてユネスコスクールに登録され、全国的にも注目されてきた。しかし、横浜市内の公立小中学校へのアンケートでも、ESDの取り組み状況としては、必ずしも高いとはいえない。そこで、横浜市教委として、永田台小学校のような優良事例を他校でも推進するための取り組みとして、平成28年度より日本ユネスコ国内委員会の支援を得て「横浜市ESD推進コンソーシアム」を立ち上げた。


ユネスコスクールについて

ユネスコスクールは、1953年、ASPnet(Associated Schools Project Network)として、ユネスコ憲章に示された理念を学校現場で実践するため、国際理解教育の実験的な試みを比較研究し、その調整をはかる共同体として発足しました。世界182か国で約10,000 校がASPnetに加盟して活動しています。日本国内では、2016年10月現在、929校の幼稚園、小学校・中学校・高等学校及び教員養成系大学がこのネットワークに参加しています。日本では、ASPnetへの加盟が承認された学校を、ユネスコスクールと呼んでいます。ユネスコスクールは、そのグローバルなネットワークを活用し、世界中の学校と交流し、生徒間・教師間で情報や体験を分かち合い 、地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指しています。

  1. ユネスコスクールの活動目的
    • ユネスコスクール・プロジェクト・ネットワークの活用による世界中の学校との交流を通じ、情報や体験を分かち合うこと
    • 地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指すこと
  2. 参加している学校
    • 公立私立を問わず、ユネスコの理念に沿った取組みを継続的に実施している、就学前教育・小学校・中学校・高等学校・技術学校・職業学校、教員養成学校
  3. 参加校に求められること
    • 法的拘束や義務はありませんが、積極的な活動が求められます。
    • 年に一度、日本ユネスコ国内委員会に報告書の提出が必要です。
    • ユネスコが提案する教材が送られ、教育現場での実験・評価を依頼されることがあります。
    • ユネスコから年に数回、世界のユネスコスクールの活動報告が記載されている情報誌が送付されるとともに、ユネスコが行う様々な活動に参加する機会があります。

文部科学省および日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールを持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)の推進拠点と位置づけ、加盟校増加に取り組んでいます。


ユネスコスクール公式HPより

■横浜市内のユネスコスクール登録状況

校種 学校名 登録年
小学校 横浜市立永田台小学校 2010
小学校 横浜市立幸ケ谷小学校 2013
中学校 横浜市立市ケ尾中学校 2012
高校 慶應義塾高等学校 2012
その他 横浜シュタイナー学園 2011

日本の加盟校:961校(2017年3月現在)
関東計199校 21%



運営方法

横浜市ESDコンソーシアムの特徴としては、永田台小学校などのユネスコスクール登録校とESD推進のモデルとなる学校(H28年度=12校)で実施する推進モデルの策定等をコンソーシアム全体で支援し、それを全ての市立学校にESDのノウハウを提供するものだ。横浜市内には、小学校が341校、中学校が146校と合計で500校近くあり、全てで一斉に展開することは難しい。「横浜市ESDコンソーシアム」は、3ヵ年計画で市立学校でのESD取り組みの増加を目指している。

■多様な組織と連携

「横浜市ESDコンソーシアム」は、下記のような団体で構成されている。

  • 横浜市教育委員会(代表団体)
  • 実施校(ユネスコスクール登録校、本事業推進校)
  • 大学(東京都市大学、聖心女子大学、横浜国立大学、横浜市立大学)
  • 横浜市各部局(環境創造局、温暖化対策統括本部、総務局、ズーラシア、RCE横浜等)
  • 民間団体等(横浜市資源リサイクル事業協同組合、神奈川県ユネスコスクール協議会、JICA横浜、公益財団法人WWFジャパン、NPO法人開発教育協会/DEAR、市内企業等)など

実施状況

横浜市教委では、「横浜市ESD推進コンソーシアム」を3ヵ年事業として、下記のように取り組んでいる。

 

 

平成28年度では、下記のような取り組みを実施している。

  1. コンソーシアム協議会
    • 関係者を集めて、方針を検討する会議を4回開催
    • 「ESD推進のため教職員研修資料」の作成・配布
       
  2. 研修(授業づくり講座)
    • 平日の勤務時間外に開催される、各教科等教員の自主参加研修を開催。
      ①東部 概論型
      ②北部 概論型
      ③南部 対話型
      ④北部 連携型
      ⑤西部 連携型
  3. ESD推進校
  4. ESDの浸透と実践の充実のモデルとなる取組に臨む学校を募集し、推進事例を収集し、周知を展開
    • 各学校での実践
       例:横浜市立羽沢小学校
       子どもの自己肯定感を高める教育活動の展開とESDの視点の導入による教育内容の工夫改善
       
      左)まちとともに、まちを創る・守る~地域清掃・地域防災訓練での連携
      右)地域の特色を生かす~キャベツづくりに取り組む地域の方から学ぶ~
    • 授業公開

 

ポイント

「日本ユネスコ国内委員会」が実施する「グローバル人材の育成に向けたESDの推進事業」では、教育委員会及び大学が中心となり、ユネスコ協会及び企業等の協力を得つつ、ESDの推進拠点であるユネスコスクールとともにコンソーシアムを形成し、ESDの実践・普及及び国内外におけるユネスコスクール間の交流等を促進を目指す事業だ。
 各地域の特性に応じた活動が組まれており、横浜の場合は、これまでユネスコスクールの登録校やESDに取り組む学校が少なかったことから、教員向けの研修を実施するとともに、新規に取り組む学校に関しては、コンソーシアム関連団体がESDの取り組みを手助けすることで、スムーズで質の良い取り組みになるよう配慮されている。
 ESDの取り組みを始めるには、学校毎の特性に合致させる必要があるため、それに見合ったテーマを定めるのは、学校単独での取り組みだけでは立ち上げは難しい。また政令指定都市である横浜には18の区が存在し、港に近いところから、里山的な環境が残る場所など、一口に“横浜”と言っても地域の文化背景はまるで異なる。例えば、横浜市南区のM小学校では、在校生の56%が外国ルーツの生徒で、日本でも有数の外国人集住校であり、なかでも中国人生徒の比率が高いことから、入学式は日本語と中国語で行われている。こうした事情を考慮しつつ、教員も定期的に異動するため地域特性を理解するまでには時間もかかることから、500近くある公立学校それぞれで独自のESDを展開することは容易ではない。横浜という大都市ならではの特殊事情を考えると、時間はかかっても本事業のように少しずつ積み上げていくのが良い方法なのではないだろうか。

 

カテゴリ

■事業協力・事業協定

テーマ

■ESD・環境教育

関係者(主体とパートナー)

  • 横浜市教育委員会(代表団体)
  • 実施校(ユネスコスクール登録校、本事業推進校)
  • 大学(東京都市大学、聖心女子大学、横浜国立大学、横浜市立大学)
  • 横浜市各部局(環境創造局、温暖化対策統括本部、総務局、ズーラシア、RCE横浜等)
  • 民間団体等(横浜市資源リサイクル事業協同組合、神奈川県ユネスコスクール協議会、JICA横浜、公益財団法人WWFジャパン、NPO法人開発教育協会/DEAR、市内企業等)など

 

■参考資料

  • 横浜市教育委員会資料(web掲載なし)

 

取材:伊藤博隆(関東地方環境パートナーシップオフィス)
2017年3月