【開催報告】シンポジウム「ポストコロナ社会を生き抜く地域の知恵と持続可能性 -新たな地域循環共生圏(ローカルSDGs)の創造-」


開催主旨

本シンポジウムでは、コロナ禍で注目の高まった自立・分散型社会について、具体的な先進事例を共有し、特に、ウィズコロナの新しい活動を先導し、現在も発達を続けるICTが地域社会の内外をつなげる機能に注目して、ポストコロナの社会像に迫りました。

そして、デジタルトランスフォーメーション(DX)で進化したパートナーシップが生み出す新たな価値と、自立・分散型社会が地域の特性に応じて相互に支え合う地域循環共生圏(ローカルSDGs)を手掛かりに、持続可能な社会へと発展するポストコロナの地域社会像について議論されました。

開催概要

|日時| 2021年2月16 日(火)14:30~17:30
|場所| オンライン開催
|主催| 環境省
|共催| 国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、
地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)

当日の動画

当日の様子はYouTubeからご覧いただけます。

開催内容

○鼎談
 「持続可能な地域づくり×DX(デジタルトランスフォーメーション)」

村山泰啓氏(国立研究開発法人情報通信研究機構 ソーシャルイノベーションユニット戦略的プログラムオフィス研究統括)
内田東吾氏(一般社団法人イクレイ日本事務局長)
藤田香氏(日経ESGシニアエディター)

村山氏からは、ICT技術の活用によるデジタルデータの国際的な相互利用について、グローバルな視点から紹介されました。発展途上国も含めた世界中でデジタルが市民の暮らしを変え始めており、欧州連合では、欧州域全体のデジタル経済の強化、社会のインフラそのものを変えていく議論がなされていることが報告されました。テクノロジーの進化の下には、その使い方や文化、組織、社会など、いろいろなものが一緒に変わっていかなければそのテクノロジーが生かせない。すなわち市民一人ひとりが一緒に変わらなければ新たな発展につながらない、そうした議論が多方面で行われる必要があるとの考えが示されました。
次に、内田氏からは、自治体の視点からみたDXについて紹介されました。行政サービスの効率的な提供については、マイナンバーカードの活用可能性が議論され、まちづくりや市民参加という点では、オープンデータの推進やDXの活用が見られていることが報告されました。海外においては、例えばイタリア・ミラノでコロナ対策として市民サービスの強力なデジタル化が進められた事例もあることが紹介されました。しかし、こうしたサービスを受けられない市民の存在もあり、デジタル環境の整備、セキュリティ対策、コスト面などの課題もあることが共有されました。
最後に、藤田氏からは、地域目線、企業目線から見たDXについて紹介されました。地域で用いられるDXは「データの見える化」だけでなく、ビックデータの管理にも生かすことができ、その例としてスマート農林水産業とトレーサビリティの取組が紹介されました。農林水産業では、経験と勘をデータ化することで、後継者育成や働き方改革にもつながり、実際に漁業でのICTブイの活用により、海産物の品質向上・収量の安定化・燃料の節約につながっていることが報告されました。また、ブロックチェーン技術を用いた生産物のトレーサビリティによって、環境配慮の証明だけではなく、生産者の想いを乗せて消費者に届けられる仕組みなども紹介されました。

 


○事例発表

1.「ひろしまサンドボックス 広島県をまるごとデジタル・テクノロジーの実証フィールドに!」
広島県商工労働局地域産業IoT等活用推進プロデューサー 中井哲也氏

イノベーション立県を掲げ、①イノベーション創出の環境づくり「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」、②ものづくり産業支援のための「ひろしまデジタルイノベーションセンター」、③最新技術を活用しながら競争により地域課題へのソリューション創出を目指す「ひろしまサンドボックス」が紹介されました。

2.「ひらかたアイデアソン・ハッカソン(Hirathon)プロジェクトについて」
大阪府枚方市総合政策部企画政策課 中谷紀雄氏

2019年から始めた「ひらかたアイデアソン・ハッカソン(Hirathon)プロジェクト」で進めている、学生主体の地域課題解決に向けた実証の場の提供、実践の支援が紹介されました。

3.「アプリとオンライン配信を活用したみんなでつくるバリアフリーマップ「WheeLog!」の取り組み」
一般社団法人WheeLog代表 織田友理子氏
「車椅子でもあきらめない世界をつくる!」を目標に、同法人が開発した、利用者による情報の蓄積で構築されていくバリアフリーマップアプリが紹介されました。

4.「インパクトから始めよう、アジャイルガバナンスで進める金沢SDGs」
国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット事務局長 永井三岐子氏

石川県金沢市でのSDGsへのアプローチとして、市民参加型で作られた「金沢ミライシナリオ」をベースとした取組推進が行われていることが紹介されました。

5.「「にぎやかな過疎の町」徳島県美波町~人口6500人の過疎の町の取り組みから~」
株式会社あわえ代表取締役 吉田基晴氏

徳島県美波町において「にぎやかそ」をキャッチフレーズに進めている、ベンチャー企業の誘致やDXを活用したまちづくりの取組が紹介されました。

ディスカッション
事例発表後のディスカッションでは、一般社団法人環境パートナーシップ会議の星野智子副代表理事がモデレーターを務め、事例発表登壇者から、地域でのDXにおいては、アナログのコミュニケーションによる地域住民の巻き込み、多様なステークホルダーの参加、分かりやすい情報発信などが必要であることが共有されました。また、ポストコロナの社会については、地域の自立の重要性を実感したという声もありました。
ディスカッションの最後には、鼎談者からのコメントがあり、村山氏からはそれぞれの活動がつながることへの期待、藤田氏からはアナログとリアルの良さを残したDXの必要性、内田氏からは人口減少をポジティブな視点で取り組むことの提案について発言されました。

 


○総括

シンポジウムの最後は、公益財団法人地球環境戦略研究機関の武内和彦理事長による総括で締め括られました。 コロナ禍を契機としたリアルとバーチャルの融合の必然性の高まり、DXを活用した新しい形の持続可能な社会像の検討の必要性を指摘するとともに、希望のある明るい未来に向けて、DXを核とした横のつながり、新しいパートナーシップの在り方がこれからの課題になりえることが示されたということが、本シンポジウムの大きな成果であるととりまとめられました。