【インタビュー実施報告】GEOC森里川海シリーズ企画
「コーヒーとチョコレートの時間」 2020年3月27日

実施概要

日 時 2020年3月
会 場 地球環境パートナーシッププラザ
主 催 環境省、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)、日本サステイナブルコーヒー協会
登壇者 川島良彰氏(日本サステイナブルコーヒー協会 理事長、株式会社ミカフェート 代表取締役社長)
池本幸生氏(東京大学 東洋文化研究所 教授)

GEOC森里川海シリーズ企画として「コーヒーとチョコレートの時間」を企画していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、公開イベントではなくインタビュー及びその撮影に変更し、コーヒーに焦点をあててお話しを伺いました。


▼GEOC森里川海シリーズ企画「コーヒーとチョコレートの時間」インタビュー(前半)



▼GEOC森里川海シリーズ企画「コーヒーとチョコレートの時間」インタビュー(後半)

インタビュー内容

1.お二人の、コーヒーとの出会い

川島良彰氏(以下、川島)
コーヒーの焙煎を営む家庭に育ち、高校を卒業してからエルサルバドルに留学してコーヒーについて学んだ後に、上島珈琲に入社。2003年まで世界各地のコーヒー栽培地で働き、2008年に株式会社ミカフェートを設立した。

池本幸生氏(以下、池本)
元々タイ王国の研究をしていたところ、縁がありベトナムの貧困の研究に携わった。ある時、ベトナムでコーヒーの花がきれいに咲いており、そこからコーヒーにも目がいくようになった。コーヒーの鑑定を上島珈琲の方に依頼したことをきっかけに、川島氏とのご縁がうまれた。

 

2.世界各地で生産されているコーヒーが、栽培地から手元に届くまでの道のりは?

川島
アラビカ種は種から実生で育ち2~3年目あたりから40年間ほど実が採取できる。栽培地では実から種である生のコーヒー豆を取り出し、日本に運ばれてから焙煎される。

池本
カネフォラ種(通称、ロブスタ)と呼ばれる病害虫に強く、苦みのある種類がある。こちらは実のまま乾燥させて種を取り出す。ロブスタを栽培している農家は自宅の庭で乾燥させている景色がみられる。

川島
ロブスタは病気に強く低地でも育てられているが、アラビカは熱帯地方のなかでも標高が高いところが産地となっている。昔はロブスタとアラビカの生産比率が3対7だったのが、最近ではロブスタの生産が増えて半々くらいになってきた。

 

3.「コーヒーの危機」とは

池本
現在のコーヒー豆の約26%がブラジルで、20%がベトナムで生産されている。コーヒーは10年おきくらいで価格の高騰と下落を繰り返しているが価格が高騰したときに栽培量は増加。このタイミングは生産地の政治や経済の状況と密接に結びついている。

川島
ところが、コーヒーの市場価格の変化は日本で飲むコーヒー料金には反映されていない。この業界のひとつの特徴として、価格を上げづらいということがある。2001年から2003年、コーヒー豆価格が低い時期に栽培地では農家が廃業してしまう、コーヒー豆を収穫しても捨ててしまう、といった事態がおきていた。このようなことが続いたら業界も立ち行かないと警鐘を鳴らしていたが、なかなか響かなかった。

池本
コーヒー価格の暴落によりコーヒー農家たちが危機的な状況にあることについて、国際コーヒー機関(ICO)は声明を発表していますが、メディアに報じられることも少なく、日本では知られていない。

 

4.「おいしいコーヒー、いいコーヒーを購入したい」という私たちにできること

川島
レストラン業界での原価率は一般的に20~30%なのに対して、コーヒーの原価率は3%以下といわれている。スペシャリティコーヒーなどはもう少し高い原価率が設定されているが、全体の10~15%にすぎない。80%以上のコーヒー豆はいわゆるコモディティと呼ばれ安価で調達されている。これまでの業界の慣習に流されず、きちんと原価率を確保している販売者が選ばれていくことが大切。そのためにもおいしいコーヒーを求めていただきたいし、もしレストランでおいしくないコーヒーが出されたら、ちゃんと「おいしくないですよ」と言っていただきたい。例え質の良いコーヒー豆でも、売れ残り日本の倉庫で2~3年経過すれば完全に劣化する。それを安く仕入れてあたかも高級品のように売っている実態もある。それを社会が受け入れていたらコーヒーの危機は打開できない。

池本
最近は生産者や農場の名前が載っているコーヒー、認証を受けてラベルがついているコーヒーもある。フェアトレード、レインフォレスト・アライアンス、バードフレンドリー、様々な認証があるので、そういった情報にも気を配って選んでもらえたらと思う。

美味しいコーヒーというのは、そうなるように大切に作られ焙煎され、私たちの手元に届く。
消費者として「美味しいコーヒーを求める」「コーヒーが手元に届くまでの情報を求める」ことが、小さいけれど販売者や業界を変えていくちからにもなると感じた。
今回は言及できなかったが、気候変動がコーヒーの生産に与える影響、業界の構造的な課題、国を越えることにより届きづらい情報など、コーヒーをめぐる問題は複雑だ。だからこそコーヒーを飲む自分は世界の生産者とつながっていることを意識して、言葉にしていくことが自分たちにできる変革の一歩ではないだろうか。