【国内事例122】 「人間力を育む千葉ESDの地域展開」


概要

 今回紹介する「人間力を育む千葉ESDの地域展開」は、国立大学法人千葉大学(以下、千葉大)が、千葉県に於けるESD(Education for Sustainable Development =持続可能な開発のための教育)の推進を支援するため、県内の高校を中心としたユネスコスクール登録校のネットワークを軸に展開しているものだ。これは「日本ユネスコ国内委員会」が実施する「平成27年度グローバル人材の育成に向けたESDの推進事業」の一つとして採択され実施している。
 この事業で目指すことは「子供達へのESD活動の展開は、将来のグローバル社会で、真に持続性のある発展を目指すため、“感性の豊かなサイエンスマインドを有して環境を視野に入れながらグローカル”に子供達が成長していくことが重要であり、人間力を有した子供達の成長が必要不可欠である。このことの達成を目指して本事業が立案された。すなわち、本事業の目的は“人間力を育むESDの地域展開”にある。」(千葉大HPより)としている。

経緯

ESDは、環境省と文部科学省が主務官庁となり推進している事業である。 文部科学省では、ESDを「現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です」とし、その中核を担う一つがユネスコスクールである。 千葉大学では、教育学部が附属学校を中心に“感性に働きかけるESD教育”を含めた広汎なESD活動の実績があり、これをユネスコスクールに広げて行うものである。

ユネスコスクールは学校単位で登録するため、登録状況については地域毎で濃淡がある。千葉県では他の都県に比べて高校の登録件数が多く、これが地域の特徴となっている。こうした経緯もあり、千葉大では県内のユネスコスクール登録高校のネットワークを軸に、ESDに関する取組を行っている。

■関東地方のユネスコスクール登録状況

区分 幼稚園 小学校 中学校 一貫校等 高等学校 大学 特別支援 その他
茨城       1         1
栃木   1 2 1         4
群馬   11 6 1 1       19
埼玉   4 2 1 1       8
千葉 1 7 1 3 9   1   22
東京   43 21 10 6 1   4 85
神奈川   3 2 1 2     1 9
新潟 1 13 13 3 1   1   32
山梨 1 2 1 1         5
静岡 3 2 5 2 1     1 14
6 86 53 24 21 1 2 6 199
日本の加盟校:961校(2017年3月現在)
関東計199校 21%

ユネスコスクールについて

ユネスコスクールは、1953年、ASPnet(Associated Schools Project Network)として、ユネスコ憲章に示された理念を学校現場で実践するため、国際理解教育の実験的な試みを比較研究し、その調整をはかる共同体として発足しました。世界182か国で約10,000 校がASPnetに加盟して活動しています。日本国内では、2016年10月現在、929校の幼稚園、小学校・中学校・高等学校及び教員養成系大学がこのネットワークに参加しています。日本では、ASPnetへの加盟が承認された学校を、ユネスコスクールと呼んでいます。ユネスコスクールは、そのグローバルなネットワークを活用し、世界中の学校と交流し、生徒間・教師間で情報や体験を分かち合い 、地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指しています。

  1. ユネスコスクールの活動目的
    • ユネスコスクール・プロジェクト・ネットワークの活用による世界中の学校との交流を通じ、情報や体験を分かち合うこと
    • 地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指すこと
  2. 参加している学校
    • 公立私立を問わず、ユネスコの理念に沿った取組みを継続的に実施している、就学前教育・小学校・中学校・高等学校・技術学校・職業学校、教員養成学校
  3. 参加校に求められること
    • 法的拘束や義務はありませんが、積極的な活動が求められます。
    • 年に一度、日本ユネスコ国内委員会に報告書の提出が必要です。
    • ユネスコが提案する教材が送られ、教育現場での実験・評価を依頼されることがあります。
    • ユネスコから年に数回、世界のユネスコスクールの活動報告が記載されている情報誌が送付されるとともに、ユネスコが行う様々な活動に参加する機会があります。

文部科学省および日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールを持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)の推進拠点と位置づけ、加盟校増加に取り組んでいます。


ユネスコスクール公式HPより



運営方法

 千葉大学で展開するESDの特徴としては、千葉大がこれまで培ってきた大学の世界展開力強化事業「ツイン型学生派遣プログラム=TWINCLE」など、ASEAN地域の大学とのパイプを活かしている点だ。ASEANから留学生を招いて、県内地元企業とESDについてのフォーラムを行ったり、高校生がASEANの高校・大学教員の前で日頃のESD活動についてプレゼンテーションをしたり、ともにディスカッションを行ったりしている。

■多様な組織と連携

千葉大では、ユネスコスクール登録校のほかに、千葉県内の教育委員会、ユネスコ協会支部、企業、社会教育施設などと連携し、本事業を展開している。
→ 参加組織一覧


実施状況

千葉大では、3ヵ年事業として、下記のように取り組んでいる。

  1. ワークショップ
    「感性を育むESD教育」の一環として、ASEANNからの大学生と高校生がともに楽器を演奏することにより音楽による交流を楽しむ。
    ワークショップ実施風景

  2. 学校見学と授業観察
     ASEANの大学生と千葉大生がともに幼稚園、小中学校を訪問し、日本の義務教育および幼児教育において、グローバルマインドの育成をしながら、ESDの基本要素の一つである環境への関心を醸成させるために、学校見学と授業観察を実施する。

  3. 千葉大学・ESD研究会
     千葉大学と千葉県ユネスコスクール高等学校連絡協議会の共催でESDに関するシンポジウム、講演会を行い、その後、高校生が討論会を行う。

  4. フォーラム
     千葉県で事業を展開している企業との連携をはかり、各企業によるESDの地域展開の実践報告の後、企業とASEANからの大学生、高校生が意見交換する。

  5. ESDの推進のための教育研修
     幼、小、中、高等学校教諭、養護教諭を中心にESDの指導力を高めるための教育研修を行う。

  6. 成果発表会
     ユネスコスクールを始めとする小中高・特別支援学校の生徒たちが日頃のESD活動について発表し、その後討論会を行う。


  7. 連絡協議会
     本事業のコンソーシアム構成団体・ESDコーディネーターの連携を深め、千葉ESDコンソーシアムのもとで、千葉県におけるESDの地域展開のための協議をおこなう。

なお、本事業3年目(最終年度)に当たる平成29年度は、さらにニュースレターを発行しさらなるESDの普及を促進していく予定である。

 

ポイント

「日本ユネスコ国内委員会」が実施する「グローバル人材の育成に向けたESDの推進事業」では、教育委員会及び大学が中心となり、ユネスコ協会及び企業等の協力を得つつ、ESDの推進拠点であるユネスコスクールとともにコンソーシアムを形成し、ESDの実践・普及及び国内外におけるユネスコスクール間の交流等を促進を目指す事業だ。
各地域の特性に応じた活動が組まれており、千葉大の場合は、これまでの千葉大の様々な取り組みを土台に、高校のESD活動の支援を軸に活動が展開されている。
一般的にESDや環境教育は、小・中学校で取り組まれる事が多く、高校での事例は少ないとも言われる。しかし義務教育を終えて、将来の自分の進路を考える人格形成の重要な時期である高校時代こそ、特に生徒にとってはESD的な学びが必要な時期ではないだろうか。ESDは非常に多様なアプローチがあるが、千葉大のように高校に軸を絞った展開というのも、各地で取り組まれる必要を感じた。

 

カテゴリ

■事業協力・事業協定

テーマ

■ESD・環境教育

関係者(主体とパートナー)

  • 千葉大学教育学部
  • 千葉県教育委員会教育振興部
  • 千葉県内自治体の教育委員会学校教育部(5件)
  • 千葉県内の高校(12校)
  • 千葉県内の特別支援学校(1校)
  • 千葉県内の中学校(1校)
  • 千葉県内の小学校(1校)
  • 千葉県ユネスコ協会連絡協議会
  • 千葉県高等学校ユネスコスクール連絡協議会
  • 千葉県内のユネスコ協会(4件)
  • 千葉県公民館連絡協議会
  • 一般社団法人千葉県経営者協会
  • 千葉県内の企業(5社)
  • ユネスコ・アジア文化センター

→ 詳細

■参考資料

 

取材:伊藤博隆(関東地方環境パートナーシップオフィス)
2017年3月