公害資料館連携フォーラムin富山 Vol.2 ~企業との対話の可能性~

前回のフィールドワークに引き続き、今回は「公害資料館連携フォーラムin富山」の最初に行われた基調講演について書きたいと思います。

今年の「公害資料館連携フォーラムin富山」では、「資料の保存と活用」「展示」「アウトリーチ」「企業との関係づくり」「学校との関係づくり」「マネージメント」という6つの分科会の他に、「企業とのかかわり方」という共通テーマで開催されました。このテーマはイタイイタイ病の原因企業である神岡鉱業株式会社、その親会社である三井金属鉱業株式会社と被害者団体であるイタイイタイ病対策協議会との1972年の裁判の和解以降、40年以上にもわたる「緊張感ある信頼関係」に学ぼうということで設定がなされました。毎年継続して行われる住民による工場立ち入り調査など、この公害問題における被害者と加害者との関係性の維持は国内で最も確立しているといってよいと思います。

さて、この共通テーマに関連してフォーラムの冒頭に、株式会社クレアン代表取締役の薗田綾子さんより「企業との対話の可能性」というテーマで基調講演を頂きました。信頼性としてのCSR(企業の社会的責任)という言葉の説明から、大手企業がステークホルダーダイアログによって実際に変わった事例について紹介してもらいました。
「対話のある社会と対話のない社会」の比較を個々人で考える時間なども効果的に取り入れられ、これまでCSRという言葉が身近でなかった人にとっても、非常にわかりやすい講演となったのではないかと思います。結果的に、「対話」という言葉が本フォーラム全体における一つのキーワードとして参加者の心に印象強く残りました。

薗田さんによる基調講演

薗田さんによる基調講演

公害問題はその発生当初から「被害者(=患者、市民)VS加害者(=企業、行政)」という構図の基に反対運動が行われ、その中には互いに乱暴な手段も用いられていました。しかしながら同時にそれらの長い運動の一つの成果として、今日における企業のCSRに基づく対話の窓口が生まれたのだと思います。

企業も市民団体も同じ地域に生きるステークホルダーとして、互いにより良い社会に貢献するような下地作りとしての「対話」が大切だと痛感いたしました。

kensuke eguchi