[国内事例51] 市民とのパートナーシップを進める札幌市環境プラザ 2011年11月5日

市民とのパートナーシップを進める札幌市環境プラザ
~オープン記念行事を市民と市が共同で開催~

2003年9月1日、札幌市に環境学習拠点「札幌市環境プラザ」がオープンしました。これを機会に札幌市内の環境に関係する組織や団体に所属する人が、市民で盛り上げようとして記念行事を開催する実行委員会を結成し、札幌市に呼びかけて共同でオープニングイベントを実施しました。

市民参加をうたった環境学習施設

1997年2月環境学習施設である札幌市環境プラザ(以下「環境プラザ」)の設置についての環境審議会答申が出されました。答申の中では各利用主体による運営委員会の設立が望ましいこと、コーディネーターとしての専門性を有するスタッフを配置することを重視するなどの方針が盛り込まれています。計画を具体化するために市は「環境プラザ検討会議」を設置、2001年には「環境プラザ中間提言」に110件もの市民意見が寄せられました。さらに、2003年3月には市が呼びかけて、市民と「札幌市環境プラザの管理運営に関する意見交換会」が開催され、約50人の参加者が集まって環境プラザの施設や運営について活発な意見交換がなされたようです。このように、環境プラザでは利用者の参画を運営の基本方針として掲げ、そのときどきに市民の声を聞きながら計画を具体化させてきました。オープニング記念行事を市民の発意で実施しようという動きが生まれたことも自然なことでした。

市民が市に記念行事を提案

2003年5月、環境プラザのオープンを市民に幅広く告知し、施設を良く知るとともに、環境プラザを利用しながら市民として運営に関わることのできる基盤を作るために、市民参加による運営をオープニングの時から実施しようとして、市民による記念行事の有志が賛同者を募りました。趣旨に賛同した企画連名者10人が企画書を持って札幌市担当部局と話し合いをした結果、札幌市担当者も参加する協働組織「環境プラザオープニングイベントみんなでやろう会(以下「みんなでやろう会」)」を立ち上げ、環境プラザがオープンする9月1日から7日にかけてワークショップや連続講座を実施することが決まりました。

市との合意を受けて、6月から札幌市はホームページを用いて「みんなでやろう会」のメンバー募集を開始しました。7月4日に第1回の会合を開催し、以降その枠組みの中でオープニングイベントの企画が進められました。

懇談会を通じた市民との対話を継続

札幌市は、環境プラザオープン後の運営方法について、市民の意見を聴く場として懇談会を開催することとしました。第1回目の会合は7月23日北海道環境サポートセンターで開催され、行政職員を含めて約60人が参加しました。当日は市とNPOとの協働のあり方、運営方法をめぐる意思決定の仕組み、国と道と市の各拠点間の連携等が論点となりました。

市は環境プラザの開設後も月に1回ほどの間隔で市民との懇談会を継続する意向です。その中で市と市民との協働を生み出そうとしています。

環境学習・環境情報拠点は市民参加が鍵

札幌市環境プラザが一般に公開された9月1日。環境プラザの開設記念行事を市民から提案し、自ら実施してしまおうと「オープニングイベントみんなでやろう会」を呼びかけた丸山博子さんとお会いできました。市民が行政に対して「このような行事をやって欲しい」と要望するだけでなく、自ら行事の運営主体となり、行政と協働して環境プラザのオープンを祝い、楽しむ行事を実現しようと考えたのです。

カウンターの前で待っていた丸山さんは「環境プラザオープニングイベント・市民スタッフ」と大きく書かれた緑色のエプロンを身につけています。「誰がスタッフなのか一目でわかることが大事。それに、ここの運営に市民が参加していることをもっと知らせなければならないと思うから。」

札幌市環境プラザは市が設置した環境情報・学習拠点です。基礎自治体が設置する拠点は、多くの市民が利用し、共に創り上げることが重要なのだ、と丸山さんは考えています。だから、オープニングイベントを市民が一緒になって創ることを提案したのだそうです。けれども、丸山さんが考える市民参加の形は、オープニングイベントにとどまるものではありません。

手作り展示の意味

使い古しの段ボールを切って作った台紙に、手書き文字で書かれた「環境クイズ」の展示パネルが何枚か置かれてありました。市民による手作り展示です。博物館の展示を手がける専門の業者が作った電子器機を多用する展示物の中で、その部分が不調和を感じさせます。けれども、この展示物こそが「市民もここの運営に参加できるんだよ。みんながそれぞれ伝えたいことをこの空間を使って伝え合おうよ」というメッセージを雄弁に語っているのです。 お金をかけて作った展示と比べて、市民の手作り展示は見栄えがしないかもしれません。けれども、地域住民を対象とする環境情報拠点は、市民が自ら環境について考えていること、活動していること、見聞きしたことをリアルタイムに発信し、それを蓄積していく媒体なのです。市民が参加できる仕組みを作り、気軽に関われることのできる雰囲気を演出することが重要な要素なのだと、丸山さんは言います。 自分たちが住んでいる地域の環境を考え、それを良くして行こうと活動する市民が集い、交流する場としての札幌市環境プラザ。オープニングイベントと手作り展示は市民と市との協働の第一歩となりました。この後、どのようにして発展していくのか、注目して行きたいと思います。

川村 研治(環境パートナーシップオフィス)