[海外事例28] カナダ、グアイ・ハアナス、ライエル島の自然再生と歴史 2014年3月7日

概要


カナダ西海岸、クイーンシャーロット諸島の一つであるライエル島の自然再生プロジェクトは、川と川岸に広がる森の再生と原住民族ハイダ族にとってのライエル島の文化的重要性を結びつけている。協働管理されているこの活動は、観光客や若い世代を様々な活動に巻き込むことで、保護地域への愛着を育み、長期的に支援が続けられているモデル的な活動である。
保護地域になる前、ライエル島は過度の伐採によって森の生態系が犯され、支流が受ける影響によって鮭の繁殖場が失われつつあった。
1985年、ハイダ族の長老たちが中心となって伝統的居住地での伐採に反対するデモを行ったことが、その後1993年、グアイ・ハアナスの国立公園・国定史跡への指定と、当時カナダではまだ珍しかった保護区の協働管理体制の設立につながった。

パートナーシップのポイント


現在、自然再生活動を含む管理方針は、カナダ政府ハイダ族の代表からなる評議会の合意を経て決定されている。
2009年、国立公園は、自立した鮭の繁殖場を取り戻すため、川と川岸の森を復活させる活動を立ち上げた。これは公園内の生態系を修復するだけでなく、地域の伝統そして経済的手段としての漁業への支援、また、ハイダ族が大切にしてきた自然・文化的史跡の象徴である鮭とつながりを取り戻すことを促した。

ハイダ・フィッシャリーズ(ハイダ族の漁業者管理組織)、ヘキト・ストレイト・ストリームキーパーズ(環境保護サービスを提供している会社)、カナダ水産海洋省は、この活動に大きく寄与しており、欠かせないステークホルダーである。河川内構造の設置やモニタリング調査などのフィールドワークは、国立公園局とハイダ・フィッシャリーズの職員によって行われている。
この活動の特徴のひとつとして、若年層を巻き込んでいることが挙げられる。国立公園局と水産海洋省の共同で開発されたプログラムは、生態系と文化の視点から鮭の重要性を伝えることを目的としており、教室に水槽を置いてライエル島から持ってきた種親の稚魚を育て、その稚魚を再生された川に放流するなど、子どもたちは積極的に鮭の成長過程を学んでいる。また、ハイダ族の長老や代表もライエル島の歴史や国立公園での活動や管理運営について話すなど、新しい世代の育成に貢献している。

まとめ

・観光客や地域住民、子どもたちを身近な環境保護活動に巻き込むことで、豊かな自然の大切さを知ってもらう機会になる。
・自然に根差した原住民ハイダ族の文化とのつながりに焦点を当てている。
・国立公園の協働管理組織である評議会は、合意形成を助ける意思決定の仕組みとして機能し、多様なステークホルダーが共に、ハイダ族の環境・文化・地域コミュニティー
に基づいて活動の目標や目的をかたちづくっていく場となっている。
・他の政府組織との生産的で安定したパートナーシップは、効率のよい活動内容の実施、高い結果をもたらした。特に、地元組織との良好な関係は活動を成功に導いた大きな要因である。

テーマ

森林保全、ESD・環境教育、生物多様性

主体

国立公園局
ハイダ族

パートナー

ハイダ・フィッシャリーズ(ハイダ族の漁業者管理組織)
ヘキト・ストレイト・ストリームキーパーズ(環境保護サービスを提供している会社)
水産海洋省
地元の子供たち
国際自然保護連合(IUCN)

参照

「保護区における環境再生」p.91-92. 国際自然保護連合(IUCN)