【報告】EPOラヂオ・持続不可能な私たち 社会と文化と環境と…vol.2(3/6)


第2回 それでも人は乗り越える

〇日時:令和3年3月6日(月)19:00~21:00

〇方法:オンライン開催(Zoom)

〇参加者:21名

〇主催:関東地方環境パートナーシップオフィス(関東EPO)

○内容

1.オープニングトーク 

  ・前回の議論をおさらい

  ・出演者紹介

2.リスナーからのおたより

3.最後に 

 

○出演者

五井渕 利明氏 /NPO法人CRファクトリー 副理事長・事業部長

早川 公 氏 /大阪国際大学 経営経済学部 経済学科 准教授 

石井 雅章  /神田外語大学 言語メディア教育研究センター 准教授 (センター長)

 進行:関東EPO高橋

内容

1.オープニングトーク

■前回のおさらい

≫前回の報告記事はこちら

高橋:前回を振り返って、コメントをいただけますでしょうか。

五井渕:前回の議論が正しいのかどうかは、わかりません。ただ「正しさ」だけではなく、「嘘がない」という姿勢を心がけて今回も議論に臨みます(笑)

早川:私自身もはっきりとした答えを持っているわけではありません。皆さんと議論して、将来の見通しを探して行けたらと思います。

石井:偶然性に満ち溢れた世界で生きる術は、これまで一部の人だけが身につけてきたのかもしれません。不確実性が高くなった現代では、協力や共有、学び合いが重要になると思います。

石井:前回はあり方(Being)について時間をかけて議論をしました。あり方というと、個人の中で全てが完結するように聞こえますが、社会で生きていく限り、社会性を完全に剥ぎ取ることはできません。具体的には、組織との関係も「あり方」の一部だと思います。自分のスタンスや信念だけでなくて、社会とつながる姿勢も「あり方」だと思うのです。

早川:今の話を聞いていて、ティム・インゴルドという人類学者を思い出しました。彼は著書『The Life of Lines』で「人間はあるとは一つの動詞である」といっています。人間が分割不可能な個人をイメージしがちですが、インゴルドは人間とはつくり上げていくものと主張しているのです。この考えは、今の議論と重なっていると思います。他者との関わりを含めた、その都度の達成が人間をつくり上げているとも言えるのではないでしょうか。

五井渕:私たちは西洋的な自我に疑問を投げかける立ち位置だと思います。自分の意思は自分の中だけから生まれてくるものではなく、他者との繋がりで生まれてくるという考えとも言えるでしょう。自分を常に高く固定的なものと見積もらないほうが健康に生きられると思います。

高橋:御三方は、全てを整理して予測できると思って作られてきた文化や生活のカウンターカルチャーを追求されているという共通性をお持ちです。早川さんの研究分野では、西洋と東洋の考え方の違いなどはあるのでしょうか?

早川:かつては⻄洋が⾮⻄洋を啓蒙するんだという考えがあった。文化人類学はそこに文化相対主義を観点から文化に優劣はなく対応であることを説明してきた。ただし、逆に70年代くらいの文化人類学者は日本の特殊性を強調しすぎているような気もします。西洋と東洋という二項対立の考えを持ち込み過ぎるのも良くないのでは、と思います。一つの文化に特殊性があるという考えに囚われすぎるのもよくないと思います。

 

■「持続不可能な私たち」とは誰のこと?

高橋:チャットでも書かれていますが、この企画 「持続不可能な私たち」というテーマにある「私たち」とは誰のことを指すのか、という問いについて、どうでしょう。

石井:難しい議論ですね。「私たち」という言葉をすんなりと使うことはできない世の中になっている気がします。あまり迂闊に「私たち」と言いたくない。

五井渕:あまり大きな主語を使うのは良くないかもしれませんね。世界は、地球は、人類は・・・。と、言いながら、私も「東洋は、西洋は」と言っていました。話している相手、コミュニケーションの相手とイメージを共有できているなと思った時は「僕らは」「私たちは」と使います。ですが、「持続不可能な私たち」という使い方では難しいですね。

石井:何かを共に達成したときに使う一体感のある「私たち」という用法が減ってきている一方で、それぞれがバラバラである時に「私たち」と使う機会が増えている気がします。

早川:私は今でも、このタイトルは秀逸だと思っています。ネガティブなイメージはありません。「持続不可能な私たち」を自覚する人が増えていくことがプラスにつながっていくと思います。

2.リスナーからのおたより紹介

•ラジオネーム 北海道ウルルン滞在記
•職業 社会人1年目

 

【相談内容】

•登壇者の皆さん、高橋さんこんばんは。
•ここ数年、何かにつけて「ユース」という単語を聞くことが増えてきましたが、実態としては人材育成や機会提供というよりも、あくまで大人や既存の社会組織の枠にユースをあてはめて利用・消耗する、ということが多いように見えます。
•その結果としての疲弊は、学外で積極的に何かしらの活動を行うユースなら誰しも必ず通る道といっても過言ではありません。
•悩みを聞いたりすることが多いだけに、(社会はこのくだりを何度やるんだ?)と不安になります。
•そこでお伺いしたいのですが、ユースが他世代と持続可能なかかわりを持つために必要なことって何だと思いますか?

 

石井:ユースという存在をを消耗している社会的な一面があると私も思います。ユースの立場から考えるならば、まずは相手を見極めることが必要だと思います。例えば、ユースと協働して自らの現状を変えようという意図がない相手とは付き合わないという手段があると思います。相手が自分たちの前提を変えるつもりがない場合、ユースは既存の枠に合わせるしかありません。ですから、変わる気のない人たちにユースが無理に合わせる必要はないと思います。

早川:同じような場面を何度も見てきたと感じました。相手の望んでいる枠組みだけで話が進んでいるのならば、疑ってかかることも必要だと思う。そういう人とは関わらずに自分たちでやるという気持ちを持ち続けることも大切です。私も20代の時、30代の男性が嫌いでした。しかし皆さんもいずれ今の自分が嫌っているような存在・年代になるでしょう。その時に、自分が肯定できる生き方を考えていけば良いのではないでしょうか?

五井渕:人手不足だから、インターンやユースを使いたいという組織があります。それは絶対にやめたほうが良いと思います。ユースは消費される都合の良い人材ではない。一見無駄に見えることもいずれ意味が生まれるという場合もあるでしょう。だが、その価値観を一方的に押し付けるのはよくないと思います。

石井:皆さんがお話しした「押し付け」もキーワードだと思います。私はWin-Winという言葉の使われ方が嫌いです。この言葉には「お前も得しているだろ」という押し付けを感じるからです。

早川:社会人という言葉も違和感を感じます。働いた年数だけを理由に正当性を主張して、学生を否定するのは間違っていると思います。このような「社会人」という概念から解き離れたほうが良いのではないでしょうか?

 

3.最後に 

高橋:これまでは「持続不可能性のあり方」を分析する視点で議論してきました。では、持続可能な社会を作るためにはどんな行動が必要なのでしょうか。

石井:先程の「ユース」の議論でもありましたが、一方的な価値観を押し付ける人たちは悪気があるのではなく、「自分が失敗した・諦めた経験を教えてあげよう」と思っている人もいる。ユース側としては、諦めた歴史を諭されても余計なお世話です。そういう人にあった場合は、「この人は諦めてきた経験を教えてくれているのだな」と判断した上で、相手の言い分を見定めて協力してみる。その上で、ダメと思ったら関係性を見直すこともできるでしょう。諦めのパターンばかりをもう教えてもらう必要はない。次のチャレンジにつながる関係性こそが必要だと思います。

早川:失敗を繰り返して修正することが次につながるのでは。失敗したら、すぐに確認して、軌道修正する。つまり「アジャイル」して成長することが大切と思います。持続不可能な私たちというタイトルで2回話せてもらいました。持続可能性を探すためには、自分自身が変わっていく必要があると考えさせられました。所属する組織の属性だけに囚われるのではなくて、大きな枠組みで成長していきたいと思います。

五井渕:「持続」は死生観と関連していると思います。いつでもどんな時でも人間は突然死ぬ可能性があるという、刹那的な意識を持っていた時期もありました。「自分は生きたいのか」と考えたとき、今は「生きたい」と思う。だが「死にたくない」ではない。能動的に「生きたい」という意味です。なぜ死生観が変わったのかと振り返ると、変わり続ける自分を許容してきた側面があります。過去の失敗や今大事なことが明日は重要でなくなる可能性があると受け入れた。「死にたくない」ではなく、能動的に「生きたい」と思える人が増えることが、持続可能な社会につながるのではないかと思います。

石井:「押し付け」というキーワードに気づけたことが学びでした。押し付けは持続不可能にさせる関係性だと思う。誰かに無理強いを押し付ける関係性は良くない。持続可能性を実現するためには、社会の変化をポジティブに受け入れ、チャレンジを通じた失敗や過ちを許し合えるような、いわゆる「てへぺろ文化」を広めるのが良いのではないでしょうか。ありがとうございました。

 

 (編集:Kantaro Suzuki/フリーランス記者)

  

ゲストプロフィール

五井渕 利明氏 /NPO法人CRファクトリー 副理事長・事業部長

2011年CRファクトリーに参画。数多くのコミュニティやプロジェクトの運営実績から、幅広い知見やバランス感覚に定評がある。NPO・行政・企業それぞれでの勤務・事業の経験から、それぞれのちがいを理解した支援が可能。多くの協働事業のコーディネートを手がける他、講師・ファシリテーターとしては年間100回以上の登壇がある。
誰もが「共に生きたい」と思える世の中を実現したいと願い、CRファクトリー以外にも多様な組織の経営や事業に参画している。一般社団法人JIMI-Lab(代表理事)、認定NPO法人かものはしプロジェクト(日本事業マネージャー)、株式会社ウィル・シード(インストラクター)、など。

早川 公 氏 /大阪国際大学 経営経済学部 経済学科 准教授 

大阪国際大学経営経済学部准教授。専門分野は文化人類学、地域志向教育論など。
筑波大学大学院人文社会科学研究科修了。博士(国際政治経済学)。専門社会調査士。
大学院時代につくば市北条地区のまちづくり活動に関わりながら研究をする。最近は、文化人類学の応用的関心からラジオプラットフォームstand.fmで「早川公のアカデミックソルトー文化人類学的アティチュードのすすめー」などを試行中。

石井 雅章  /神田外語大学 言語メディア教育研究センター 准教授 (センター長)

千葉大学大学院社会文化科学研究科都市研究専攻卒業。博士(学術)。専門は環境社会学で、主な研究テーマは「企業による環境問題への取り組み」「SDGsと自治体総合計画の接合」など。前任校ではゼミ学生と大学周辺の休耕地を地域資源として活用するしくみづくりを目的とした「休耕地活用プロジェクト」に取り組み、経済産業省「社会人基礎力を育成する授業30選」(2014年3月)に採択された。