【報告】「持続可能な社会を創る 企業と地域の協働セミナー」(8/25実施)


開催概要

 環境省の担当者が環境白書のテーマやねらいを解説する「環境白書及び環境基本計画を読む会」と合わせて、標記のセミナーを開催しました。


○場所:オンライン開催(Zoomウェビナー)

○日時:令和2年8月25日(火) 14:50~16:50

○参加者:172名

○主催:関東地方環境事務所、関東地方環境パートナーシップオフィス(関東EPO)

プログラム

1.開会挨拶・説明 (14:50〜)
  関東地方環境事務所環境対策課 鈴木一成課長

2.趣旨説明 (14:55~)

3.基調講演 (15:00~)「気候危機とコロナ危機~2つのCCにどう対応、どんな社会像・企業像を描くか~」
      特定非営利活動法人 サステナビリティ日本フォーラム 代表理事 後藤 敏彦氏

4.質疑応答 (15:30~)

5.事例導入 (15:35~)「新しい社会を考える地域循環共生圏づくり―ローカルSDGs―」
      環境省関東地方環境事務所 地域循環共生圏構想推進室 速水香奈室長 

6.事例紹介 (15:45~)
      ①日産自動車株式会社 チーフマーケティングマネージャーオフィスマーケティングマネージャー 島村 盛幸氏
      ②東邦レオ株式会社 Green×Town 事業部 事業部長 吉田 啓助氏

7.トークセッション (16:05~) 
      登壇者 島村 盛幸氏/吉田 啓助氏/速水香奈(関東地方環境事務所)
      進行  髙橋 朝美(関東 EPO)

8.総括(16:45~)

9.閉会 (16:50)

内容

 

【趣旨説明】

気候変動とコロナ危機の中で、企業、そして私たちに求められる行動変容とは 関東EPO

気候危機、新型ウイルスの蔓延など、あらゆる場所のあらゆる人々が同時に命の危機にさらされています。 このことは、私たち人類が行ってきた経済活動、社会活動が、環境への配慮を欠いてきたことに起因していることは、明らかになりつつあります。2030アジェンダに記す人類の決意を理解し、環境・社会・経済の 統合的向上を実現するために、私たち一人ひとりの行動変容が求められています。 

今私たちは、どのような状況に置かれているのでしょうか。そして、求められている行動変容とは何でしょうか。本セミナーでのレクチャーとトークセッションを通じて、一緒に考えていきました。

 

【基調講演】

「気候危機とコロナ危機~2つのCCにどう対応、どんな社会像・企業像を描くか~」

 特定非営利活動法人 サステナビリティ日本フォーラム 代表理事 後藤 敏彦氏

 気候危機とコロナ危機という二つの大きな危機に対して、今の私たちの置かれている現状、そしてコロナ後にどう対応し、どのような社会像・企業像を描いていくことが求められるかについて、お話をしていただきました。

<ポイント>

・2015年のパリ協定とSDGsの採択でパラダイムシフトが起こり、コロナによりこのパラダイムシフトをさらに加速しなければいけない状況になっている。

・これまでの気候変動対策は低炭素社会の実現だったが、パリ協定採択後の世界は脱炭素社会を目指すものである。つまり、化石文明の終焉を意味し、経済・社会システムの大変換になる。 

・気候変動は地球の気温上昇を1.5度に抑えるため、ここ10年が勝負どころである。

・企業はSDGsおよびTCFDへの対応と、中長期の発展戦略を統合させた長期ビジョンが必要である。

・アフターコロナでは、善きグローバリゼーションとローカライゼーションが両立・共存した社会を議論する必要がある。

・ローカライゼーションを進めるキーワードは、「人物」「自然と人との共生」「地域の宝」。

<質疑応答>

Q:世界中で気候非常事態宣言が続いていますが、具体的にどのような取り組みをされていますか。また、その宣言をする意味はあるのでしょうか。
 ーA(後藤氏):宣言するだけで何もやっていないということは、全くありません。気候非常事態宣言を最初に出した長崎県壱岐市を始め、各自治体では2050年にCO2排出量をゼロにしていくための様々な取り組みをしています。また欧州では、自治体だけではなくEU自体が制度的バックアップをしています。この3月には、コロナ禍の中で矢継ぎ早に法律案を出し、どんどん成立させている状況です。

Q:海外において、「脱炭素」に取り組む企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。そしてそのための協力を促すことは、できているのでしょうか。
 ーA(後藤氏):一つは海外では再生可能エネルギーが安くなりつつあるということです。二つ目は、欧州だとCO2排出量をゼロにすることが法律で決められているので、先取りをして脱炭素化を進めていかないと投資が集まらないということです。メリットよりも、脱炭素化に取り組まなければ、企業としての存続が難しい状況になりつつあるということです。

Q:ローカライゼーションを進めるにあたり、都市と地方がうまく結びつかないという現状があると思います。都市と地方はどのようなことに取り組み、共有していくことがポイントになるでしょうか。
 ーA(後藤氏):日本での都市化には、東京一極集中という問題があります。気候危機とコロナ危機という二つのクライシスの中で、東京一極集中ということを、日本の人々がどう考えるかが問われていると思います。東京はこれから増えていく自然災害にどう対策を取るのか、働き方はテレワークを含めてどういう形で進めるのが良いのか。日本人としてどうあるべきかを議論し、善きローカライゼーションのベクトルを議論することが必要だと思っています。

 

【事例導入】「新しい社会を考える地域循環共生圏づくり―ローカルSDGs―」 
環境省関東地方環境事務所 地域循環共生圏構想推進室 室長 速水香奈

 環境問題には、脱炭素や里地里山の問題のように、地域社会や経済と密接に絡み合っているものが多くあります。環境省では、環境、社会、経済の問題を同時に解決するためのアプローチとして、地域循環共生圏を提唱しています。新しい社会をつくる切り口としても注目されている地域循環共生圏について、関東地方環境事務所より事例導入としてお話しました。

<ポイント>

・地域循環共生圏で目指すのは、地域それぞれが持つ自然資源・人的資源を活用して、資源とお金が地域で回る自立した地域づくりをすること。そして地域の豊かな資源を都市に提供し、人とお金を都市と地方で循環させながら、支え合っていくこと。

・地域循環共生圏づくりを支えるものとして、多様なビジネスの創出が重要になってくる。

・地域課題を把握した上で、地域資源と相互連携を掛け合わせて新しい価値を創造し、ローカルビジネスの創出に繋げていきたい。

 

【事例紹介 1】
日産自動車株式会社 チーフマーケティングマネージャーオフィスマーケティングマネージャー 島村 盛幸氏

地域循環共生圏の一つ目の事例として、電気自動車を通した取り組みについて、日産自動車株式会社 島村様よりご紹介をしていただきました。日産リーフが主体となった「ブルースイッチ」の事例などをもとに、どのようにして電気自動車に新しい価値を見出し、地域課題の解決につなげているか、お聞きしました。

<ポイント>

・災害時には、電気自動車の電源を使って電気を供給することができた。電気自動車は気候変動や災害に強い社会をつくっていくためのハブとして、重要な役割を担うことができると思っている。

・地域や自治体と電気自動車を活用した協定を結ぶ中で、パートナーになれる方々といかに結びついていくかが重要なファクターだと思っている。

 

 

【事例紹介2】東邦レオ株式会社 Green×Town 事業部 事業部長 吉田 啓助氏

地域循環共生圏の二つ目の事例では、コミュニティづくりとまちづくりの取り組みについて、東邦レオ株式会社 吉田様よりお話をしていただきました。生活者との関わりを生かしたまちづくりを通して、地域の課題解決のためにどのように取り組んでいるか、お聞きしました。

<ポイント>

・福岡県日の里団地では、仕事場づくりや教育環境、地域モビリティなどを含めた再生事業に取り組んでいる。まさに社会課題に事業を投下し、形にしていくという新しいチャレンジである。

・これからは、ビジネスチャンスがあるからというアプローチだけでなく、社会課題に向き合いながらビジネスをつくるという姿勢が求められる。今が企業として変革するタイミングでもあると思う。

 

トークセッション

登壇者;日産自動車株式会社/島村氏・東邦レオ株式会社/吉田氏・関東地方環境事務所/速水
ファシリテータ―;関東EPO/高橋

コロナ禍における企業の取り組みの価値の見せ方

吉田氏:コロナによる厳しいビジネス環境下で、ブルースイッチの活動を始めとした取り組みの意義をどう伝えていますか。また、地域では文化や環境が異なる方々と一緒に取り組む難しさもあると思いますが、どう活動されていますか。

島村氏:経営戦略として中長期的に取り組んでいるという大方針がありますが、人の役に立てるというこの取り組みは、今の厳しい環境下で社員一人ひとりのモチベーションに繋がっています。電気自動車業界は他のメーカでも簡単に参入できますが、地域課題といったニーズにも踏み込める電気自動車メーカーとして、日産が一日の長を持っていたいという気持ちもあり、そのモチベーションで戦っています。

また、ブルースイッチの活動では私たちは利益を得ないし、利益を供与しないという前提があるので、地域の課題を損得抜きで一緒に解決したいという思いのある方が地域に現れない限り、取り組めないという形になっています。

「本業で価値を出す」という発想の原点

速水:本業に新しい価値を見出す時に、何がスイッチになっていますか。また地域と取り組む中で、どのように関係性を築いていきましたか。

吉田氏:赤字をどう黒字にするかを含め、うまくいかなくても続けることが新しく事業を始める条件なので、これをやりたいんだという社員の気持ちがスイッチになります。また、地域を良くしたいという思いから取り組みを始めて、持続可能にするために知恵を出し合って経済活動を回すという順番の方が、長く続けられて、良い関係性が築けると実感しています。

島村氏:日本国内への投資がある程度絞られることで、追い込まれて、自分達のことを真剣に見つめ直したことが大きな転換のスイッチになったと思っています。私たちは何を社会に提供するか、存在意義を考え抜いた結果、電気自動車で車を超えた価値を提供していくところに戦略を見出したというのが本音です。

またブルースイッチは、地域で暮らすマネージャーが販売会社、地域の方々と行う取り組みです。地域のことを愛して、地域課題を自分ごとだと捉えて解決しようとする人間がいることで、良い関係性が築けると思っています。

 

地域循環共生圏における「自立分散」「相互連携」

高橋:(参加者からの質問として)地域が他の地域や都市と繋がるイメージがわきません。「自立分散」や「相互連携」とは、どのようなイメージでしょうか。

速水:例えば、再生可能エネルギーが豊富にある東北から、再生可能エネルギーの可能性量の低い神奈川県横浜市が連携し、系統上の工夫をして買い取っている状況をつくっています。これは再生可能エネルギーで繋がる都市と地域の連携と言えます。 

吉田氏:取り組む上で、大きなテーマを持ちながら、フラットな関係性を丁寧につくっていくことを大切にしています。今、同じ人口割合であるマンションの管理組合と村を、防災などをテーマに繋げる取り組みをしていますが、お互いがフラットに学び、気づきを得てそれを生かすといった真っ当な関係性ができることで繋がっていくと思います。

島村氏:新潟県の旧西蒲原地域でのブルースイッチの取り組みでは、観光を切り口に電気自動車を活用し、新潟市からにしかん地域の岩室温泉に人を呼び、雇用をつくっていくことがコンセプトにあります。自立・分散により地域の魅力を見出すことで、近隣の都市などから人の動きも生まれると思っています。

 

まとめ

地域循環共生圏づくりでは、お二人のお話にもあった通り、どんなパートナーシップを組むかが鍵になっています。

これからは、地域の課題やニーズを解決するために、会社としてやりたいこととすり合わせ、ビジネスをつくり出す「アウトサイド・イン」のアプローチが求められてきます。

地域にどんな課題があり、誰がいるのかをしっかりと見ること。そして本音で会話をし、会社の大義に立ち返って取り組むことが、これからのパートナーシップとして重要です。

アンケートより

セミナー後の参加者アンケートから、以下のようなご意見をいただきました。

・グローバリズムとローカリズムの両方でSDGsなどの課題解決に取り組むべきだということが分かり良かったです。 

・地域・社会の中で問題や課題、ニーズを見つけて、事業として取り組むというアプローチが良かった。

・地域にどのように入っていき、企業と地域、地域と地域をつないでいくか参考になった。

 (編集:藤野あずさ)

 

所感

本セミナーは、2020年8月に実施しました。この時、世間はコロナ禍の第一波を乗り越え、第二波の入り口にありました。
例年、環境白書を読む会と併催している本セミナーですが、オンライン開催としたこともあってか、例年の倍以上の参加があり、企業セクターの危機感が伺えました。
今回、日産自動車の島村さん、東邦レオの吉田さんに登壇を依頼した理由は2点あります。

 ・顔の見える関係性、「地域」の未来を見据えた地に足の着いた事業を展開していること

 ・数字やパーセンテージなど、目に見える成果だけを追っていないこと

このことは、企業の大小にかかわらず、これからの社会において重要なのではないかと関東EPOでは考え、今回の企画にお呼びしました。
そのご経験をもとに、この危機をどう企業として乗り越えていくのか、たくさんのヒントが伺えた時間となりました。

コロナ禍も、気候危機も、どちらもグローバルな課題として認識されていて、成す術がないように感じておられる方も多くいらっしゃるかもしれませんが、お二人が共通して強調された、「地域の課題と向き合う」、そしてそのことにモチベーションを見出す「人間」がポイントだと思います。
そう考えたら、それぞれの業種、地域でやるべきことが見えてくるのではないでしょうか。

(2021年3月 関東EPO高橋)