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わたしのまちのSDGs×協働×ESD EPOカフェ②SDGs時代の森づくり~里山との新しい関係~ 報告 2020年3月31日

記事目次

1.EPOカフェについて
2.開催概要
3.事例発表について
4.トークセッションで出た話題
5.出てきた問いの整理・まとめ
6.登壇者コメント
7.総括


 

わたしのまちのSDGs×協働×ESD EPOカフェについて

 EPOカフェとは、持続可能な社会とは何かを考えるため、ひとつのテーマに対して様々な切り口で話題提供をし、参加者も一緒に掘り下げていきます。
答えを求めたり、反対意見が出たりする「議論」ではなく、いろんな考えを持つ人がいることを受け入れ、あらゆる意見に耳を傾けながら理解を深めていける場を目指しています。 

 これまでの里地里山と人との関わりは、里山で暮らしている人たちが、生業として里山を活用することで環境を維持してきました。しかし今は、高齢化・人口減少の影響で、里山での生活を維持することが難しくなり、管理の担い手も不足しています。
里山に人が手を入れられなくなると、生態系バランスが崩れ、豊かな生態系の損失、種の絶滅、さらには、がけ崩れや、水源涵養機能の低下による洪水被害の拡大が懸念されております。
 現代における里山との関係は、どんな関係を持てばいいのでしょうか。「里山との新しい関係」について取り上げました。

開催概要

 

〇日時:令和元年11月13日(水)17:30~20:30
〇場所:地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
   (東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F)
※GEOCについては、コチラ/facilities/library/
〇定員:30名
〇参加費:500円(お茶代)
〇主催:関東地方環境パートナーシップオフィス(関東EPO)
〇協力:地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)

【ゲスト】

・塚本竜也氏/NPO法人トチギ環境未来基地理事長

・村山史世氏/麻布大学 生命・環境科学部 環境科学科 講師・あざおね社中 会長

【コーディネーター】

・山田和彦/関東地方環境パートナーシップオフィス(関東EPO)

【今回のテーマ】

□わたしの課題意識は「今まで無かった里山とのつながりが森を救う」

□今日みなさんとお話したいことは「里山とどんな関わりを持ちたいですか?」

※この企画の指す「里山(里地里山)」とは、「原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域(出典:環境省 自然環境局 自然環境計画課)」のことを指します。

 

事例発表

まずは、ゲストお二人の取組について発表していただきました。

トチギ環境未来基地の取り組み/塚本氏

主な活動内容

・主に若者を対象に、約3か月の住み込みプログラム(※)をメインに展開している。
他にも、若者が様々な形で森に来てもらい、地域の人達から教わりながら、共に森林整備をしている。

里山の新しい価値づくり

・分野の違う団体と一緒に、森の新しい役割や人が来る仕掛けづくりを連携して整備することで、里山の新しい価値が生まれる。
・関わっている里山を良い状態に保つためには、整備する森に、何かしらの役割や、
人が来る仕掛けづくりを分野の違う団体と一緒に作りだし、連携して整備することが大切。

~連携事例~
―福祉施設との連携…老若男女誰でも里山を歩き回れるようなバリアフリーの森づくり
 ―子ども食堂運営団体との連携…整備した里山を子供たちの自然体験活動の場として活用
―ひきこもりの若者を支援する団体との連携…里山での作業を通じて、社会参加のステップとして

※「コンサベーション・コア」とは、アメリカでの取組で、経済的な理由で大学に行けない若者等が、
環境保全活動に1年間参加することで給付型の奨学金を受けることができるプログラム https://bit.ly/3aB6E90

 

 

 

 

 

 

 

山・よそ者・ガバナンス 多様性と関係人口/村山氏

活動内容

・ゼミとして、中山間地にある「自然観察会ができる田んぼ」を探していたところ、
神奈川県にある青根という集落の休耕田と、その持ち主を紹介してもらった。
その休耕田を復活させるために、学生・教員・市民で「あざおね社中」を結成した(2011年)。

「気づき」から変化する目的

自分たちの目的(自然観察、環境学習)のためだけの活動

活動していると、地域にある資源や課題に気づき始める。

里山の環境が成立するのは、そこに生業や生活があるからだと気づく。

青根の歴史や文化、人々の暮らしを知り、共にこれからを考えるようになった。 

当初の目的から、地域の困りごとに対して一緒に取り組み、関わり続けていくといった、
「共に生きていく」こと自体が、活動の目的になっていった。活動を通して自分たちが変わっていった。

 

 

 

 

トークセッションで出た話題―活動のコツ、地域との関わり方 他

 
トークセッションでは、お二人の対話を聞いたり、会場からでた質問に答えたりする時間を設けました。
活動での苦労から見えたコツや、感じている課題を聞くことができました。

赤字:ポイントとなる部分 青字:課題点

 

里山で活動を続けていくコツ

村山:
 続けられるところまで続けるだけ。できなかった時はできないでいいと思っている。
活動を続けていると、個人のつながりからエリアとのつながりに変わっていく。
 地域へ知らない人達が入ってくることで、地域に別の価値を生み出すと思う。ヘビが好きな人、土木が好きな人、刃物が好きな人、いろんな人が活動に参加している。価値が人によって違う。多様な人が関わると、地域の引き出しはまだまだあると感じる。楽しいと感じた人間が価値を作っていけばよい。

 塚本:
 最近よく思うのは、他の分野の人達と一緒に里山で何ができるか考えたとき、緑のことばかり考えていると行き詰ってしまうかもしれないということ。
ある方にアドバイスを求めたとき、「課題の渦に巻き込まれることだ」と答えてもらった。
つまり、里山の抱える環境課題以外にも、どうしたらいいか分からない世の中の問題は沢山あって、その課題に徐々に巻き込まれながら活動をすること。
里山以外のパートナーと考えていくと、知らなかったことを知れて、ほかの課題と里山とをつなげることができ、新しい考えが生まれる。

 村山:
 共感する部分がある。人間は一つの目的で生きているわけではなく、複数の目的があって生きている。
人が集まることでより複雑になるのに、現実に起こっている課題に対して一つのことだけやっても解決できるものではないと感じた。

 

地域の人との関わり方

村山:
里山保全の技術は誰から教わっているのか。

 塚本:
基本的には最初に地元の人が教えてくれる。研修の時の先生は、地元の人にやってもらう。そういう部分から地元の人に活動に入ってもらうことで、昔の話を聞けたり、今の里山との違いを教えてもらえたりしながら作業ができる。人の関わりがあったり、歴史があったりすることを聞いた若者は、地域に対して尊敬の念を抱く。

 村山:
地元の人は同じ話をしていても、相手が変われば他所の人に話すことに喜びを感じていくのでは。

 塚本:
そうです。だが、そこにも難しさはある。10年やっていると地域の人は「もういいかな」と、疲れてしまう。
人が変わっていくことで関わり続けることはできるが、過度に負担をかけてはいけないと思う。

 

活動での悩み・トラブル

村山:
 私は「自治会へのあいさつが無かった。」と責められたことがある。地域の人というのは、いわば「普通の人」。そういう人達と付き合っていくとき、自分たちの目的が強く出てしまうと、地域の人たちは私たちとの付き合いをやめてしまうと思う。


塚本:
 どこの活動であっても最初は重要。誰かの紹介で行くこともあるが、一時的に笑顔で迎えられても、相手には受け入れる不安がある。それを突破する時、おしゃべりが上手いとダメ。それよりも最初は、「教えてください」の姿勢で入る。地域からは、現場で取り組む姿勢しか見られていないので、行動に示さないといけない。最初の3回くらいは全力で頑張る。何をやっているかよく分からないけど無害だな、と思ってもらい始めると、教えてくれるようになる。

 

若者の武器は「未熟さ」

村山:
学生には「未熟さをアピールしろ」と言っている。技術・知識の高さがあることより、素直に受け入れる学生の方が、なんとなく活動が続いていると思う。

塚本:
どんな言葉よりも、学生の「教えて下さい」という魔法の言葉。

村山:
地元の人のやる気を引き出す力だと思う。

 

 以下は、会場から出た質問に対してのコメントです。

Q.地域の新しい担い手は加わったように感じるか。

村山:
 新しい人が入ってくるというより、いる人が別の側面を出してくるような感覚がある。
地域の人たちにも様々な側面があって、それは、色んな方が助けに来てくれたり、差し入れをもらったりする過程の中で変わっていくのだと思う。
活動当初、文句を言ってきた人が今は一番のサポーター。(学生のために自分の土地に炊事場を作ってくれるようになった。)

 塚本:
 最近、中山間地への移住はハードルが高くなっていると思う。だが、少なからず移住してくる人達はいる。
そういう人達は、有機農業をしながらカフェを経営するような、おしゃれなカルチャーを持って田舎に入ってくる。
 地域側が、そういったカルチャーを受け入れられるのは、私たちとの今までの関わりがあったことも大きい。
次のステージは、受け入れた若い新しい移住者達と、いかに付き合っていくか、そして、地域の世代交代をどうやって実現していくかが課題。

 

Q.移住者や、関係人口の裾野を作っているという意識は?

村山:
 あざおね社中では、関係人口として関わっており、移住はしていない。
それに比べて栃木で定住者が増えていることはすごいこと。
塚本さんの取り組みは、定住することのハードルを越えていくような人の裾野を作っていると感じるが、塚本さんは意識しているのか。
(塚本さんの発表の中で、活動を通して移住した人がいることを発表していただきました。)

 

塚本:
定住促進の活動だと思ったことはないが、応援はする。自分たちの活動を通して地域に入れたからから移住を決められた。そんな機会を提供できたのではと思う。
少しでも生活を成り立たせながらチャレンジできる環境が大事なのでは。
例えば自分は、1年間は半分NPOで最低限生活できる収入を得ながら他の仕事を行うWワークをしていた。そのようなことができる環境づくりをしてきた。

会場で出た問い・話題のまとめ

登壇者を交え、会場にいる参加者で語りたい話題、話してみたいことを出し合った結果、以下のような話題が出てきました。

①里山の「遊び仕事」を語ろう&家畜の話

「遊び仕事」とは、かつての里の生業。今の経済状態だとパッとしない。養蜂・蜂追い・魚とり・山菜採りといった、里山で生きるための技術を、都市部の人間が知ることの意味について。

②里山×〇〇で何が解決できる?

里山と何を掛け合わせると、何が解決できるのかについて。

③「主体的な受け身」を取るには?

巻き込まれ方について。相手を手伝うだけでなく、自分のやりたいこともできるような、「主体的な受け身」・「積極的な受容体」となるためにはどうすればいいか。地域に入っていく作法について。

④ココが変だよ日本のSDGs!fromベルギー

海外の方から見た、日本の現状・取組で感じた違和感について。

※当日、トチギ環境未来基地のプログラム参加者で、ベルギー出身の方がご参加くださいました。

問いと対話の記録

自分が語ってみたい問いが共通している人で5名程度のグループを作り、自分が「いいね!」と思ったこと、初めて聞いたことなどのメモをで取りながら、自由に「対話」を行っていただきました。その際に出た話を以下にまとめました。

 ①    里山の「遊び仕事」を語ろう&家畜の話

・現代で買っているもののルーツを考えてみると、里地里山で自給していたものが多い。
例;服→絹→蚕→エサとしての桑の葉
そこから経済のリンクを考えることができる。
・「遊び仕事」は面白い。テーマにしたら交流が生まれるのでは。

 ②里山×〇〇で何が解決できる?

・前提として、「里山」のイメージは「生業の場所」として思う人と、「公園のような場所」と思う人がいる。人によってイメージは違う。
・言葉のとらえ方自体でそのあと何をどう考えていくか、そういったベースの部分から話し合うことが大事。
・私たちの暮らしが、海外の森林にダメージを与えている。先進国から、発展途上国への貢献も考えるべきなのでは。
・IT×里山、健康×里山…違う角度から物事を捉える。

③「主体的な受け身」を取るには?(地域の人とのコミュニケーション)

里山でできることに気付いている人が少ないと思うので、里山でできることをどう発信していくかが今後の課題。
・「受け身の価値」とは、巻き込まれることで、自分の目的や関心にも変化が生まれ、間口が広がること。

 ④ココが変だよ日本のSDGs!fromベルギー
・日本では個別包装されたお菓子をビニール袋で包み、さらにレジ袋に入れて持ち運ぶことが変だと感じた。
・24時間営業のコンビニが多く、電気を無駄遣いしている。なのに、海外からエネルギーを買ったり、持続可能ではない発電方法で電気を作っていることが矛盾している。

ゲストコメント

今までとは違う視点で里山を視る

塚本:

 これからの里山をどう考えていくためには、これまでの伝統や歴史に学びつつ、ジャンプをしていかないといけない。
そのためには、今までとは違う視点で里山を視ていかないといけない。
 日本の里山での異業種交流や、こちらから他分野に飛び込んでいかないといけないと感じた。

 

里山を通じて、「生きること」を捉えなおす

村山:

 里山に暮らす人達が、里山で働いていたり、生産に関わっていたり、生きるために必要なものを自給しているのが里山だと感じた。
生業で生きていくことを見ていない人間からすると、一緒にご飯を食べたり、倹約することを見たりするだけで面白い。
機械を使わずに、道具を使う働き方や、家畜を通しての働き方。
都市生活だと気づかないような、生きることを捉えなおせるようなものが里山にはあるような気がする。
 益子焼(トチギ環境未来基地活動地の益子町の特産品)の話を聞いていて、里山は、陶器を作る材料やエネルギーを供給していて、消費地はどこで、といった経済のリンクに役割があった。
エネルギーが変わった今も、里山の別の活かし方があるのではと感じた。

総括

 本企画では、里山との新しい関係を持つ方法が二つ挙げられました。

一つは、塚本さんが発表したように、これまでの伝統や歴史を尊重しつつも、今まであまり関わりの無かった分野と手を組み、里地里山をフィールドとして活用すること。
もう一つは、村山さんの取組のように、目的を常にアップデートしながら、
里地里山と関わりを持ち続けることで、「離れていても共に生きる」関係人口として関わる方法です。

  里山で活躍しているのは「よそ者」であるという事例は多く見受けられますが、
活躍しているのは、「よそ者」だけではないと感じました。受け入れる側の里地里山で暮らす地域の人たちが、変容し、活躍しています。

そんな変容のきっかけが、「よそ者」や、つながりの薄かった他分野の活動なのではないでしょうか。
そして、「よそ者」側も、地域の人たちの様々な側面に触れ、お互いに変容しているのだと思います。
村山さんの事例で、活動の目的が変化していることからも、「よそ者」の考えが変容していることが伺えます。

  また、よそ者にとって、地域の人との出会いは、「課題の渦(※)」に巻き込まれていくことではないかと感じました。

自分とは違う分野の課題をメインに取り組んでいる人と手を組み、共に考えていくと、知らなかったことを知ることができ、
課題と課題をつなげて考えることで、新しいアイデアや行動を思いつくことができます。
そこで生まれた新たなアイデアを、里地里山というフィールドで活かすことが、里地里山との新しい関係づくり、新しい価値の創造につながるのでしょう。

※「課題の渦に巻き込まれる」:
塚本氏の発言の中にあった言葉。例えば、環境課題をメインに取り組もうと里地里山で活動していくと、
里山には環境課題以外の社会・経済的な課題も存在することに直面する。
さらにそれらは複雑に絡み合っているので、複数の課題に対して取り組んでいこうとすることを指す。

(文責・関東EPO山田)

参加者コメント(アンケートより)

 

・参加者同士が深く語り合えるイベントが初めてで、とても楽しかった。普段考えている里山や温暖化について皆と話し、同じ課題意識を持った人たちと話せて自信になった。

・色々な活動、年代、バックグラウンドの違う人たちと交流できて刺激になった。

リンク集

・特定非営利活動法人トチギ環境未来基地

公式サイト https://www.tochigi-cc.org/

Facebook  https://www.facebook.com/TochigiCC/

・あざおね社中

公式サイト https://sites.google.com/a/azaone.com/azaonecamp/

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