「関東ESD学びあいフォーラム」2015 開催報告 2016年1月5日

全体

「ESDの10年」が2014年で終了し、新たにESDの取組の推進・拡大を目指す「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」がスタートしました。

ESDの取組は各地域、学校で取組は継続的に行われていますが、その取組をさらに活発にし、NPOと学校や、企業と学校など、地域で連携・協働ができそうなところをつなげていくために、モデルプログラム、関東ESD環境教育プログラム実証等事業の実践例等を題材とし、ESDの視点でさらに深堀りする学びあいの場になりました。

開催概要

ESD_manabiai_2014

〇件 名:関東ESD学びあいフォーラム~ESDで授業が変わる、地域がつながる 広がるみんなの可能性~

〇日 時:2015年11月28日(土)13:00-16:30

〇会 場:東京ウィメンズプラザ ホール(全体会)&視聴覚室(分科会)

〇資 料:当日次第 (PDF:58k)






全体会

◇トークセッション「こうしてESDプログラムは誕生した」

■ESDの視点とは何か (資料PDF:477KB)

岡本先生に、ESDの視点とは何かということについて解説をいただきました。
ESDの視点とは、
・繋がり(システム)
・協働的な問題解決
を考慮することであり、その視点の例として、6つの概念と7つの能力・態度と3つの留意事項を改めて紹介。
さらに、これらの視点を学習の内容・目標・方法に位置付けながら説明してくださいました。

岡本先生岡本 弥彦氏プロフィール
岡山理科大学理学部教授
【経歴】
 岡山県立笠岡工業高等学校 教諭
 岡山県教育センター 指導主事
 岡山県教育庁指導課 指導主事
 麻布大学 生命・環境科学部 教授
 国立教育政策研究所 客員研究員
【専門】
 理科教育,環境教育
【主な著書・論文】
「身近な自然を生かした理科授業」(共著)東洋館出版社、「英国エコ・スクールの展開と日本の学校教育におけるESDの実施・展開への示唆」共生科学、「アースシステム教育の多面的な見方に基づいた授業の設計と紙芝居教材の作成」地学教育

■NPOが学校でプログラムを展開する際の留意事項(資料PDF:565KB)

大塚先生に、小中学校でESDの授業に取り組むために、NPO等が学校と協力する際のポイントについて解説をいただきました。
①子ども理解②教材研究という授業の基本について理解し、さらに発達段階、学習履歴を踏まえることの重要性について言及。
ESDがめざす教育は、答えのない問いに対して自分なりの答えを導く力を身につけることとし、子どもが課題について自分ごととして捉えられるようになる工夫、そして、それが押し付けではなく自発的に起こる工夫が必要であることなど、ポイントを整理して説明してくださいました。

大塚先生

大塚 明氏プロフィール
静岡県田方地区教員研修協議会指導講師
伊豆市教育委員会心の教室相談員
元静岡県伊豆市立天城中学校校長
【経歴】
自校の教育課題を解決する策を模索する中、ESDに出会い、準備期間を経て2009年より学校全体でESDに取り組み始める。今まで行っていた体験活動をESDの視点で見直し、全ての教育活動に「持続可能な社会の担い手を育てる」という背骨を通して取り組んだ。2010年静岡県で初めてユネスコスクールに加盟。同年第1回ESD大賞中学校賞を受賞。

 

◇事例紹介「ESDプログラムに変身!そのとき何が起きた!?」

①太陽エネルギーって何だろう?~太陽の恵みが暮らしを支える・かえる~
加藤正幸氏/チャウス自然体験学校 代表

団体の持つ太陽エネルギーに関係するプログラムを、学校で展開した例を紹介。NPOの立場として学習指導要領を理解することの重要性について言及がありました。ESD化のメリットとしては、参加者や教員へプログラムの目的・効果について明確になったこと、地域の資源・人材等を結びつけられたことなどがあげられた。

 

②「環境人(エコんちゅ)になろう!」浦安市立入船小学校での実践について
広田由紀江氏/ELCoの会

環境教育について、学校のニーズを重視し、地域とのつながり、教科とのつながりを意識したプログラムを26、27年度、4年生に実施した。その中で、得られた気付きや信頼関係、団体と学校をつなぐ苦労や地域と子どもたちの変容などについて紹介。

 

③子どもの探究心を育てる理科・生活科「もののとけ方」
堤 良一氏/千葉県市川市立中山小学校

理科授業にESDの視点を取り入れるために工夫した点を紹介。ESDと学校教育の各教科や単元で目指すものに齟齬はなく、共通性のあるものとした上で、発達段階にあわせて、五感・主体性・ストーリー性を大切にした授業を展開。「なぜ勉強するのか」の問いを子どもたちが自分なりにみつけられた成果についても紹介があった。

実践のポイントを学びあうための分科会

・話題提供者からの事例の補足説明
・ディスカッション:そのテーマにおいて、重要なキーワードを各分科会で3~6個に絞りました。

分科会1

①太陽エネルギーって何だろう?~太陽の恵みが暮らしを支える・かえる~
話題提供者:加藤正幸氏/チャウス自然体験学校 代表

団体の環境教育プログラムにESDの視点を取り入れるポイント

1)お互いの強みを活かすプログラム作り
 団体の強み:体験活動が得意 学校の強み:子どもの発達段階に応じたカリキュラム作りのプロ
2)先生側の経験機会を設ける
 先生がプログラム体験しやすい時期(夏休み等)に、授業のイメージを掴んでもらうための実際のプログラム体験会を。
3)良いモノにちゃんと対価を
学校でNPO等に支払う予算を用意することが難しい現状。企業や研究機関との協働などで何らかの予算を確保し、事業として成り立つことが大切。

コメンテーター:大塚先生
強みを活かすプログラムについて、学校とNPOが実施するプログラムについてすり合わせる時間をきちんと取ることが理想。学習計画を練っている段階でNPOと話し合いを設けられるとよい。

 

分科会2

「環境人(エコんちゅ)になろう!」浦安市立入船小学校での実践について
話題提供者:広田由紀江氏/ELCoの会

学校支援の立場からESDの視点を取り入れるコーディネートのポイント

1)学校文化の理解ある人の存在
2)仕組みをうまく使う
 学校コーディネーター等、行政のもつ仕組みなどを利用することで、人のつながりや講師謝金など、助かる場合がある。
3)「ESDとは何か」の理解を求めすぎない
理解(頭)から入ろうとするより、体験・経験から分かってもらう方が良い。
4)総合的な学習だけにあてはめようとしない
他の教科とのつながりも考慮する。教科だけでなく、学校(地域)文化祭などの行事とつながる。
5)出会いの場が必要
学習やESDを進めるうえで、各主体が互いをよく分かりあうことが必要。

コメンテーター:重政子氏(ESD-J代表理事)
ESDを全面に出しすぎると、今の活動を否定しているかのように感じる人もいる。地域の活動をどうつなぎ、誰と出会うかが重要。そこへの配慮が必要。先生は地域の出身者とは限らない。そこをつなぐ地域の人が重要。運動会やお祭りなどの行事など、ちょっとしたつながりでいい。そういうところから学校の先生とつながっていくポイントになる。

 

分科会3③子どもの探究心を育てる理科・生活科「もののとけ方」
話題提供者:堤 良一氏/千葉県市川市立中山小学校

学校の普段の授業にESDの視点を取り入れるポイント

1)地域とのつながり(PTA含む)
 親参加型の授業参観などの工夫で、保護者が子供から教わることで親も変わり、地域の一員として変化を起こしていける人になるとよい
2)学習指導要領
 これは最低限のラインが提示されているのであって、それを超える部分を規制するものではない。その部分に対する教員の意識を変えなくてはいけない。学習指導要領を超えた先にある生き方等の価値を、子どもたちに伝えることが大切。
3)有識者・専門家の位置づけ
 教科の流れだけでなく取得させたい態度や能力についてもイメージをし、事前に打ち合わせておく。
4)学校の日常での気づき
 学校で気づいたことを家庭にも持ち帰れるような環境を提供。
5)評価基準
 既存の教科の評価基準とESDの評価基準では同じ部分と違う部分がある。評価基準にESDの視点を明文化する必要がある。
6)ESD教員研修

コメンテーター:岡本先生
⑤について、学校教育ではESDに限らず評価は問われている。今後、ESDにも求められる。そのためには目標を明確にしておくことが必要。目標についても、到達目標・期待目標の両方があってもいいのでは。あとは評価の方法をどうするか。評価手法は色々開発されているので、そこも議論が進むとよいと思う。
②について、ESDは現行の学習指導要領ではそれほど規定されてないため、だからこそ動きやすいということもあるのではないか。次の学習指導要領の改定ではESDに関することが重視されると見込まれる。規定されることが、ESDの普及と制限の両面に関係しうることにも留意すべきである。

分科会成果発表・交流会

全体最後3つの分科会終了後、再び皆さんで集合し、それぞれで話し合った成果を共有しました。
各分科会の話題提供者の方より、いくつかに絞ったキーワードの紹介、そこに至る議論の経緯などを発表していただき、コメンテーターからの意見も発表していただきました。 全体会後、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)に会場を移して交流会も開催しました。他の分科会の方、講師の方など、会議の中だけでは時間も足りなかった議論の続きが行われました。