~地域は環境教育の教室だ~
中・四国環境教育ミーティング2003
地域や立場を越えて交流しよう
中国・四国で環境保全や環境教育に関心のある団体や個人、企業、行政機関などが1年に1回集まって出会い、交流する場を作ろうとの趣旨で始まったこの会。今年は四国に渡って徳島県が会場を提供してくれました。山と海に囲まれた鳴門ハイツは渦潮で有名な鳴門海峡の真ん前。ここを舞台に2泊3日の楽しい交歓が行われました。
参加者は約120人。ざっと見たところNPO関係が半数強、行政関係が約4分の1、残り4分の1弱が学校関係や研究者、企業が若干といった感じでしょうか。行政職員が意外と多いのに驚きました。環境の分野でNPOと行政機関の協働が求められている時代を映しているのかもしれません。
市民を創る/地域を変える
オープニングのセレモニーやオリエンテーションの後、最初のプログラムは「吉野川から見る環境教育の未来」というタイトルの対談。出演は世界の川をカヌーで渡り歩くカヌーイストの野田知佑氏と吉野川可動堰計画を住民投票で否決した姫野雅義氏でした。
話題の中心は当然、可動堰計画に対する住民運動の歩みと特徴について。ここで姫野さんが特に強調したのは、吉野川可動堰の住民投票はむしろ旗を掲げた反対運動ではなかった、ということでした。姫野さんたちが行ったのはまず、市民に働きかけて吉野川の自然や自然の中で遊ぶことの楽しさ、自然の恩恵を伝えていくことでした。建設省(当時)など推進側の行政機関に対しては徹底して技術論争、科学論争を挑み、可動堰建設の必要性や便益を一つひとつ検証しました。その議論の内容や様子をマスメディアや広報媒体を使ってオープンにしました。それは、市民を対象とした一種の「環境教育」でもあったのでしょう。市民の目を吉野川に向けさせ、伝統的な工法で作られた第十堰を残すのか、それとも近代技術で作られた可動堰を作るのか、市民が判断できる情報を大量に流すこと、それが運動の本質でした。そして、徳島の市民は自然を残した第十堰の存続を求めたのです。
参加を促す楽しい仕掛け
対談の後に行われた「フィッシュボール」という不思議な名前のプログラムは、全員参加型のパネルディスカッションのようなものでした。普通ならパネリスト3~4人にモデレータ1人で議論を進め、それをフロアで見ている、ときには議論に参加します。ところが、ここでは、中央に5つの座布団が敷かれていて、発言したい参加者が自発的に座布団に座り、マイクを持って発言する。それに対して何か言いたい人が出てきたら、発言者の席に着く、というやり方でした。司会者がいないため、最初はなかなか議論になりません。ようやく話の流れが生まれてきた頃には時間切れとなって少し残念でしたが、おもしろい試みだったと思います。
その後、徳島名物の阿波踊り入門講座を体験。動きは単純なようですが、実際にやって見るとリズムに乗れない、格好がサマにならない、案外難しいものだということを実感しましたが、みなさん大いに楽しみました。このプログラムが参加者同士をうち解けさせる上ですばらしく有効だったことは言うまでもありません。翌日の分科会の軽い打ち合わせの後、参加者が持ち寄った名物やお酒を囲んで自由交流会が始まりました。
市民運動と環境教育
2日目は6つの分科会に分かれての活動でした。「自然農」がやや異色ではありましたが、森、川、海、ネイチャーゲームという自然体験系が多い中、「吉野川の住民運動はなぜ強いのか」が一番徳島の特長を活かしていると思い、それに参加しました。
初日の対談で気づいたのですが、可動堰の是非を問う住民投票に至るプロセスは地域をあげてのおおがかりな環境教育だったのだということを再確認できました。分科会では地元の住民の方が講師として参加され、生々しいお話を聴くことができました。姫野さんたちのグループは、地元の住民の方から過去の災害のことや治水のこと、それに今の暮らしのことを丹念に聞き出しています。そして、その中から可動堰の矛盾を指摘する論拠を導いたのです。このようなプロセスを踏んだからこそ、地元の人が姫野さんを信用し、可動堰反対の立場を貫いたのでしょう。住民運動と環境教育、一見結びつかないように見える両者ですが、吉野川の運動はそれが一体となって成功したのだということが良くわかります。
名残はつきないクロージング
最終日、22日は分科会報告から始まりました。6つの分科会ごとに、その分科会の参加者が振り返るもよし、自分の参加した分科会以外の分科会に行って様子を聞いて回るもよし、自由に分科会を渡り歩くことで全体像をつかむこともできる工夫がされていました。
最後のプログラムは「全員参加型旗揚げ式パネルトーク」。「クジラは食べ物か、そうでないか?」などの質問をいくつか投げかけて、賛成、反対、どちらでもない、わからない、などの選択肢を出し、それぞれごとに意見を述べ合う仕掛けでした。連日深夜まで「交歓会」をしていたはずなのに、白熱した議論が繰り返され、司会者から終了が宣言されたとき、名残り惜しそうな人がたくさんいました。 来年は香川で会いましょう。それを別れの言葉として参加者はそれぞれのフィールドへと帰って行きました。
概要
- と き:
2003年6月20日(金)~22日(日) - ところ:
メイン会場 鳴門ハイツ(徳島県鳴門市)
分科会の一部 吉野川第十堰(徳島県徳島市) - 主 催:
中・四国環境教育ミーティング実行委員会(中・四国環境教育ネットワーク)
社団法人日本環境教育フォーラム - 参加者:
約120人
プログラム 20日(金)
- 14:00~14:30 オープニング
開会の言葉・オリエンテーション等 - 14:30~15:45 対談「吉野川から見る環境教育の未来」
カヌーイスト 野田知佑/吉野川みんなの会 姫野雅義 - 16:00~16:50 フィッシュボール(全員参加型討論会)
- 17:00~17:50 分科会紹介
- 19:30~20:00 アート「阿波踊り入門講座」
- 20:00~21:00 各分科会の打ち合わせ
- 21:00~24:00 自由交流会
プログラム 21日(土)
- 6:30~7:00 自由参加による早朝プログラム
- 9:00~17:00 分科会
- 自然はともだち~自然の恵みを受けて育てる農・自然農!!~
- 森の学校・森と人と未来~循環する森の資源と人の生活を考える~
- 吉野川第十堰自然体験ワークショップ
~遊びが学びとなり、学びが遊びとなる~ - 吉野川の住民運動はなぜ強いのか~市民運動の新しいカタチ~
- 無人島のサンゴ礁で海中スケッチ
~波間に浮かんで、海辺の環境教育プログラムを体験しよう~ - ネイチャーゲームによる環境教育入門講座
~今日から始まるセンス・オブ・ワンダー~
- 19:30~21:00 交歓会
- 参加者による事例発表
- トランプによる廃棄物ゲーム
- 夜のネイチャーゲーム
プログラム 22日(日)
- 9:00~10:00 屋台方式フリー分科会
- 10:00~11:00 全員参加型旗揚げ式パネルトーク
川村 研治(環境パートナーシップオフィス)