○セミナー「地域から地球へ~持続可能な開発と地域に根ざした活動を考える~」
【第1部】「地域からの環境共創をめざして」要旨
講師:亜細亜大学経営学部教授 NPO法人埼玉エコリサイクル連絡会顧問 大江宏氏
- 当日配布資料に沿ってお話しいただきました。こちらをご覧ください。
ダウンロード⇒ 当日配布資料(ooe.pdf)
【第2部】パネルと会場との意見交換
パネリスト
- 大江宏氏
- 川村研治(地球環境パートナーシッププラザ)
- 松本俊男(環境省関東地区環境対策調査官事務所)
司会
- 星野智子(環境パートナーシップオフィス)
(川村)
○地方プラザの立ち上げを手伝っているが、どうしたら良いパートナーシップ、地域の行政機関、市民・活動団体、企業その他が主体的にかかわり、地域の環境、持続可能性を高めていける活動を起こせるか事業計画、運営体制などの計画検討をしている。
○各地域で社会・自然環境、産業構造も全く違い、全国一律に同じようなつくり方はできず、実情に合ったつくり方を、手間はかかるがやっていこうとしている。
○それぞれの地域が主体的、自立的に意志決定して、資源を獲得して、地域の経営を地域の人たちで担える、国から地方へという流れを大事に、実際にどうやってつくっていくのかということも大きな課題と感じている。
○補完性の原則、民、市区町村、都道府県ができることと、国でなければできないこととは何だろうかと悩み考えている。
○地域をどういう広がりをもって考えるか、どのステークホルダーをどうやって探し当てたら良いのか、そういう所を議論してほしい。
○社会的責任というのは、社会的要請の能動的参加であるとの話があったが、社会的要請をどうやって発見し、創り上げていけるのか、企業の悩みの1つは、社会的要請と企業活動をどうマッチできるのか計りかねているところ。企業が社会的要請に答えるということはどういうことなのか悩んでいる。
(会場)
○中小企業がCSRを果たす、ということはどのようなことか、中小企業は中小企業なりに何かあるはずだと考えている。
○例えば、企業と取引する前にISO、障害者雇用、企業収益などの取引要件が細かく条件設定されている。収益や企業マネジメントも評価されている。これが、社会的な一般的な要件だとすると、求められるトリプルボトムライン(環境・経済・社会)の基本の1つとして考えられるのか。環境・顧客・社会満足だけで本当に良いのか。
○物言わないステークホルダー=次世代の人、文化財、自然環境の人たちが、仮に物を言ったとすればこうなんだろう、と取り上げて満足するようなことをやるのが本当に環境満足にあたるような感じもする。
(大江)
○リコーがその部門で世界第1位と評価され、結果として、増収増益で、環境の効率に結びつけた取り組みを行っている。トータルで素晴らしさがある反面、環境効率を上げると人間的、労働者としてどうなのか。
○世界一の社会的、環境的にも評価を受けている企業が、もうひとつグローバルコンパクトに掲げている、人間尊重、労働のところを先進国並みのレベルで考えた時にどうか。
○中小企業では、実際に競争に勝ち生き残るために大変で、社会的責任を求められても、関係ないということになる。
○求められているものに対しての価値観、生き方、自分のやっていることに対する、満足、やりがい、その辺のところをどうビジネスに組み込めるかどうかという話。
(川村)
○環境報告書を作成した部署では、お金や人を投入してきれいな報告書を作るが、ベースとなる現場では、書いてあることと実際のことにギャップがある。
○企業だけでなく、国の施策も同様。地方プラザをつくるということで、地域で話をすると、勝手に予算を付けて、余計なことやらないでいいという話も聞く。
○意志決定、政策決定をする人たちの意識と、現場で活動している所のギャップを感じており、そこをつなぐものが是非必要だと思う。
(会場)
○環境カウンセラーをやっている。いろいろな社会不安が出てきている。例えば、30歳以下の就職にしても3人に1人は辞めてしまう。少子化の問題など、教育関係全体に関係する大きな問題がある。
○一体国はどうなるかということを考えてやるべきだが、そういう場もない。それこそ本当の意味のパートナーシップの場が少なくなっている。
○行政と場のギャップの1つが、町会なり、市なりと若い人たちの場がつながらない。それが環境なら、一般市民があまり関心を持たない。地球温暖化に関心を持っても、自然環境の方ばかりを見ている。
○環境なら環境だけという具合に、環境省の中の自分の担当のところの意見しか言わない。結局、縦割りになっている。文科省と厚労省の幼稚園と保育園、合併して一緒にやろうと始めているが、総論賛成、各論反対。
○省庁ももっと高い所で、横からやることがいろいろあるはずなのに、どうしてできないのか。この辺をパートナーシップでどんどんやるべきだと思う。
(松本)
○関東事務所主催の環境学習会を、埼玉中心に具体的には三郷市、吉川市で行ったが、いずれも募集人員は集まらず、それ以下である。
○プラザ主催の集まりでは、環境派の、NPOで活動している方とか環境カウンセラーの方が集まるが、一般市民の方を対象に学習会を行った時になかなか参加してもらえない。何が原因なのか、答えは出ていない状況。これからどうやるかを考えた時に、自治会など既にある集まりの中でやれば、もっと浸透するかもという気もしているが。
○保育園、幼稚園の話があったが、環境教育推進法というのが実際に動き出し、その主務官庁は、環境省中心に、文科省など5省庁にまたがっている。閣議決定するまでの過程では紆余曲折あったが、実際に回していく時にどういう形になっていくのかはこれからの話で、横の連携が重要だと思う。
○環境の問題は、環境省だけでできないことは、環境省自身も理解しており、他の役所の力も今は環境に向いているのは間違いない。環境省はこれからも先導役でやっていくが、連携が本当の意味でとれているかは正直よくわからない。
(川村)
○地方プラザの話の中で、今は少子高齢化が問題で、村落がなくなっていき、農山村の担い手なくなり、生活圏そのものがなくなってしまう。持続可能なわけない。その中で環境だ何だと言ってもリアリティがない。その辺を把握しろいう話がまずあった。
○国が枠組みをお膳立て、環境省がやっても持続可能な社会・開発なんてアプローチできない。持続可能性、パートナーシップの促進は、国が一番苦手にしていること。補完性の原則からすれば、国は手を出さないほうが良い。国は縦割りが厳しく、これを打ち破るのは難しい。行政機関でも、組織が小さくなればなるほど縦割りにならず、幅広い枠組みは国がやらない方が良いと言われた。
○縦割りを超えてつないでいく、社会、経済、環境という分野を超えてつながっていくためには、もっと小さな単位で意志決定し、つないでいく役割を果たす主体がもっと強くなっていかなくてはならないのだから、パートナーシップの拠点を国がつくるのは言語道断である、とズバリと言われ、とても悩んでいる。
(大江)
○最近のプラスチック問題がなかなか困る。例えば、国がプラスチックの焼却を推進していくとなると、自治体の方はそれに非常に大きく左右される。
○目標的なものが大きく変わる時に、いきなり変わるのは困る。議論を尽くして、現場の議論を吸い上げる機能が非常に欠けているのではないかと思う。何か意志決定する時にコミュニケーション、現場とのやりとりをやって方向付けにつなげていくということがないと困る。
○意志決定の新しいスタイルとは何か、ステークホルダーという時に吸収できる方式を是非開発していかなくてはならないと思う。意志決定の時の重要性を十分に認識していかないとならないし、そのための新しいプロセスを開発していかなくてはならない。
○環境で人が集まらないと話があったが、大学でも環境は人気がない。やはり環境オタク的になっていて、楽しくやれていない、人を引きつけるのは何か、有益性と共に楽しさがあったり、おもしろさがあった時に人が集まるのだろう。
○地域で地道にとなると、どうも高齢化に打ち勝つのがかなり厳しい。そういう所をこんなふうに破ろうとしているとか教えていただければ情報共有になるかと思う。
(会場)
○市の自治会の班長と廃棄物関係の衛生のグループのリーダー役をやってきたが、いかに連絡を取るのが大変か。
○引き受けた以上は仕方がないので、ある程度のことはやっているが、ともかく振り回されている。班長という自治会の第一線の役を引き受けて、本当に大変だなと、自治会の上の方はいかに苦労しているのか身にしみてわかった。
○県の仕事でパートナーシップ、環境学習、地球温暖化の関係を全てやっていて、今日いろいろ伺って参考になった。この仕事をやる前に男女共同参画課や国際課、また、コミュニティー係で、自治会のことも仕事としてやったが、今いろいろ伺って、頭・耳が痛い。
○それぞれの仕事をしていて、かかわってきた地域の方々は全部別で、実感として、気がついた人間が横につないでいくしかないと思う。
○今、エコクラブを担当していて、フェスティバルを来年3月に開催予定をしており、実行委員を公募し、その中で一人子育てアドバイザーをやっている方が応募してくれた。
○子どもを遊ばせようと思っても遊ばせる場所がない。どんなふうに子育てをしていったらいいかという時に募集の話があり、一緒に考えていきたいということで、実行委員に手を上げてくれたが、それが1つのきっかけ、接点になっていくのかなとつくづく思う。
○いろいろイベントとか何をやるにつけてもそういった視点で、さまざまな人への協力をお願いしている状況。1つひとつは小さなことだが、そういうことが積み重なっていくとつながりができて、点が線になり、面になりと、まさに地域の総合力で環境を考え、活動できるようになるのではないかと思っている。
○私も今日の会場に何人ぐらい集まるかなと思って、興行師として人集めの問題でいつも悩む。今日の参加者は、おそらく主催者などの関係者、埼玉県とさいたま市の人間。
○現在の日本の現状を物語っていて、やはり高齢化社会の典型の場所になっている。未来の環境カウンセラーをはじめとして若い方が数名この中にいるので、こういう方に発言していただき、参画意識を持ってもらい、議論を活発にしたい。
○関係者以外の裾野を広げないと、いつも興業主としてヒヤヒヤドキドキで終わってしまう。
(会場)
○地域に根ざした環境活動をしたことがなく、しゃべる資格がないと思い黙っていた。
○自治会で環境に対する取り組みの話で、自治会が高齢化したり、そもそも地域の人が集まらないとか、最近、NPOの存在が増してきている中で、従来の自治会と新しく出てきたNPOが、ぶつかって良い結果になっていないと、新聞報道で読んだ。
○今までの培かわれた自治会組織と新しく生まれたNPOの活力を組み合わせて協働し、地域に根ざした環境づくり、持続可能性な社会を目指す取り組みを産み出せないかと思っている。
(会場)
○大学で人間科学部だが、生態系ではなく、社会学のゼミに入りながら、環境問題に取り組むにはどうしたらよいかと研究している。夏休み期間中にNPOの中で、実際に子どもと一緒に自然の中で環境教育というものを体験し、また、企業の方に話を聞いたりして、目下暗中模索の段階で、あまりに分野が広くて、よく分かっていない状態。
○その中でも感じたのは、パートナーシップを築くのは難しいということ。まず、関心を持ってもらうことが難しい。
○実際NPOの人たちは、子どもや参加するスタッフの人たちに自然の面白さを伝えようと頑張っているが、それを作ったNPOのコアの人たちですら楽しめていない。どうしても責任とかをまず持ってしまって、下につながってないなというのがあった。
○今日の話が若輩ながら面白いと思ったので、もっと沢山の人に伝われば良いなと思うので、大学に戻ってこの話をしたい。
((星野)
○プラザで皆さんが言った問題意識で、どうやって広げるかと考えている。
○両輪というか、政策思考型のNGO、カウンセラーの人、環境省と直接対話の場を作る一方で、裾野を広げていくことが大事だと思う人を育てていく、裾野を広げる、パイを広げる部分の両方をプラザではやっているつもり。
○環境省でも今日、大臣のタウンミーティングがあって、何百人という単位でやってるし、今日、明日では「ライフスタイル見直しフォーラム」という浜松町の方で大きなイベントもやっている。プラザの方でも、随時ライブラリーや展示施設などを設けて一般の方に来場いただけるようなサービスもしている。
○関心さえ持てば、そこからつながっていく人、機会とかあると思うし、私たちも作っていきたいと思う。
(大江)
○いろいろ関連の所で仕事してきながら、出会った人がそれぞれ違っていたという話は興味深かった。
○環境を考えてみたら、全てのこととかかわっていて、いろいろ共通していても良さそうなものなのに、それぞれ違う人と顔を合わせる。この辺が何か日本的な地域のつながり方かなとイメージが沸いた。
○ここを逆手にとって、うまく使って環境はつながるのだから、そこにいろんな所に人が入ってくる仕掛けが必要かなと聞きながら思っていた。私自身もまた学生に対してもそういう形で話していきたいと思う。
(<(川村)
○私も先ほどの話をとても面白く聞いた。行政が縦割りだという以上に市民活動団体、NPOも縦割りで、環境は環境、人権は人権、福祉は福祉というように、1つのことに集中する。場所も、分野もそうだ。
○原因の1つは、今の日本の市民団体などが行政に対する依存の度合いが高くことだろう。資金もそうだし、いろんな形で行政に依存しないと組織そのものが運営できないという問題がある。どうやったら、市民の自立的活動に近づけていけるかと思って聞いた。
○地方調査官事務所や地方プラザは、地域でステークホルダーが集まって議論を起こしていく場を作り、そこで出てきた意見・議論を国の意志決定の方につないでいくという役割があると思う。
○地方調査官事務所がこういう場に来ていただいて、我々はこういうことをやっていただきたい、こういうことを考えている、とぶつけていただく、そういう関係ができたら、もっとよくなっていく。基本は、地域の活動をどう活性化できる拠点が産まれるかということだと思う。
(松本)
○事務所が7月に移転し、私自身も本省から異動してきた。本省では、広報室で、広報と広聴、タウンミーティングなども担当してきて、2年間いたが、あまり工夫もなく、ただやってなという感じで過ごした。
○今日、小池大臣のタウンミーティングがあったが、350名の募集で、小池大臣をもってしても空席があった。内容が環境税のことで、急だったこともあったと思うが。
○事務所の方は、本省の方より機動性はあると思うが、予算もなかなかないので、いろいろご意見を承っても、動けないかもしれないが、少なくとも、今日、いろいろヒントをいただき、また何か呼ばれれば行くし、話をいただければそれに対応するよう工夫していきたい。今日はありがとうございました。