【開催報告】「環境パートナーシップ」の国際枠組み勉強会 Vol.3

 開催概要

日  時  2026年3月17日(火)14:00~16:00
場  所  大阪大学豊中キャンパス(※ハイブリッド開催)
講  師  平岡俊一氏(滋賀県立大学環境政策・計画学科准教授、地域循環共生圏の創造に向けた有識者委員)
 大久保規子氏(大阪大学大学院法学研究科教授、EPO等運営委員)
参加者数  26名

 要約

 欧州の地域脱炭素・持続可能な地域づくり分野での重層的な支援体制の構築

 


 欧州における重層的支援体制と補完性原則

 欧州では、EUから国、州、郡、基礎自治体に至るまで、多様な地域階層レベルの政策、ガバナンスの主要な担い手として、中間支援組織が定着しています。地域脱炭素をはじめとした分野特化型の組織から、総合的な地域づくりなどの全般的な分野を扱う組織まで、それぞれの地域に根付く中間支援組織が存在します。

 各地域における枠組み設定や進行管理役として、基礎自治体が重要な役割を果たすわけですが、地域づくりの実働役は自治体公社をはじめ、協同組合やNPOなどが担います。その両者を、政策や事業、実働領域を支援するのが中間支援組織であり、その根本にあるのが、足りないものを補い合う補完性の原則です。中間支援組織は、この原則に沿って、各領域で役割が明確化されています。また、人材や組織等への投資の重要性に関する共通認識も欧州では非常に強く、中間支援組織の人件費等の基盤的経費が、州や自治体などの公的資金で安定的に賄われています。これにより、計画策定から政策実施までの一連のプロセスに専門職員が継続的に伴走支援できるなど、長期的・専門的な地域支援が可能となっています。以上のように、州や自治体と中間支援組織の補完性、また中間支援組織に期待する役割が仕組みとして位置づけられています。

 

 ドイツ・オーストリアのエネルギーエージェンシー

 地域脱炭素(気候エネルギー)政策分野の支援組織としては、中間支援組織「エネルギーエージェンシー」があります。地域でのエネルギー政策・事業の発展を支援する組織であり、EU域内に約420の組織が存在します。組織形態も多様にありますが、一部の会社組織を除き、大半は民間の非営利組織が運営し、組織運営に自治体が深く関わっているのが実態です。

 実施事業としては、EPO/GEOC業務でも実施しているような、住民や企業向けの相談・助言や情報提供をはじめ、地域の関係人材間の交流・ネットワークづくりがあります。また特に力を入れているものとして、自治体への伴走支援があります。エージェンシーの職員が、計画策定から実施、評価、次期計画への反映までの一連のプロセスを継続的に伴走支援しています。

 

 

 

 オーストリアの総合的な地域づくり中間支援組織

 分野横断的に地域課題を統合して解決する、総合的な地域づくり中間支援組織が、地域において重要な役割を担っている地域もあります。例えば、チロル州では、基礎自治体をはじめ、観光協会や産業団体、福祉団体やNPOなど地域内の多様な主体が関わり合って生まれた組織があります。交流やネットワーク、合意形成を促すプラットフォーム役として、また国や州の各種助成金のワンストップ窓口として、助成金の紹介や助成応募の支援、事業の進行管理や専門家の紹介などが主な役割になります。前述のように、ノウハウや人材を地域に蓄積させるべきという考え方が浸透しているから、地域づくりの伴走支援や自治体政策の支援といったシンクタンク事業を内製化しているのです。

 

 

 

 

 オーストリアでのローカルアジェンダ21(LA21)の推進

 オーストリアで1998年から続く「ローカルアジェンダ21(LA21)」は、連邦政府の「持続可能な発展戦略」に基づき、参加・協働型の地域づくりを推進するものです。日本では一時期環境省が主体となりLA21の取組が盛んでしたが、欧州では今も継続して取組が進められています。

 オーストリアにおけるLA21の特徴として、LA21を通じて具体的な成果をあげることよりも、参加型の地域づくりのプロセスや推進体制など「フレームワーク」づくりを重視していることが挙げられます。また、州の担当職員による「LA21は実験工房」だという言葉にもある通り、現場での試行を通じて「フレームワーク」を開発し、活用できるようになるという、地域のキャパシティビルディングが重視されていることも、同じく特徴として挙げられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 EPO/GEOCの今後に向けたヒント

 第1回、第2回に引き続きご協力いただいた大久保氏からは、オーストリアにおけるLA21の取組が、1992年のリオ・サミットで採択されたアジェンダ21に基づく取組であること、また参加・協働型の地域づくりのプロセスや推進体制などを重視していることから、EPO/GEOCのヒントになる可能性が指摘されました。

 さらには、LA21の評価に関してする質問に対しては、これまで4回の改定がなされている、LA21推進のために国が定める質基準(LA 21-Basisqualitäten 4.0)があることが平岡氏から紹介されました。その中身は、構築された推進体制、地域の主体の巻き込み、要した期間など、プロセスにおける細かい基準が示されており、これらの基準はEPO/GEOCのこれからの取組を、成果として示す際のヒントになりうることが確認されました。また、成果を説明するための欧州における評価手法に関しても、自治体をはじめとする中間支援組織にとっての地域のパートナーの中間支援組織に対する評価を、アンケートやインタビューを通じて集めていることが紹介されました。根源的な他者評価の重要性を確認できました。

(以上)

 

 

 (参考)これまでの「環境パートナーシップ」の国際枠組み勉強会

「環境パートナーシップ」の国際枠組み勉強会 Vol.1(2023年9月)

「環境パートナーシップ」の国際枠組み勉強会 Vol.2(2025年1月)