【開催報告】まちと私のサスティナビリティ研究会 テーマ回①「モノの循環を知る」
2026年3月12日、「まちと私のサスティナビリティ研究会」の第一回テーマ回をハイブリッド形式で開催しました。

参考:【東京開催・オンライン併用】まちと私のサスティナビリティ研究会 - 環境パートナーシップを「知りたい/調べたい/実践したい」人を応援します。
概要
日 時:令和8年3月12日(木) 10:00~12:00
方 法:対面&Zoom
会 場:GEOCセミナースペース(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学1F)
参加費:無料
主 催:関東地方環境パートナーシップオフィス(関東EPO)/環境省関東地方環境事務所
参加者:対面8名/オンライン19名
開催の背景と目的
本研究会は、都市生活の脆弱性を問い直し、自分の暮らしを起点に「まち」の持続可能性を探究するシリーズ企画です。
「サスティナビリティ」という言葉は、ずいぶん社会に浸透してきています。しかし、「サスティナビリティ」とは何か?と聞かれた時に、私たちは正しく答えられるのでしょうか。
都市部では、蛇口をひねれば水が出て、スイッチを押せば明かりがつき、コンビニに行けば食べ物があります。しかし、これら「魔法のように機能する表層の世界」は、実は都市の外への依存構造と、脆弱なインフラの上に成り立っていることを、前回のプロローグ回では、「災害時」の暮らしの追体験を通じて実感することができました。
https://www.geoc.jp/activity/epo/210842.html
このような前提に立って、この便利な暮らしを可能にしている様々なシステムを、個別のイシューとして掘り下げて発展させるための議論ではなく、その個別のイシューを「アプリ」として捉えた場合、社会全体の価値観や仕組みである「OS」そのものを更新する必要性を共有しました。
今回のテーマは「モノの循環を知る」。私たちが日々当たり前に行っている「買う」「捨てる」という行為の背後にある巨大なシステムを、自分自身の暮らし(=「私」)を起点に紐解きました。
考える視点の共有|「都市のモノの循環」を問い直す
モデレーター:滝口 直樹 氏(立教大学大学院特任教授)
冒頭、滝口氏より、まず、都市部における「モノ」について、「都市は自ら必要なモノを作り出せず、外からお金の力でかき集める貨幣経済に依存している」という構造が提示されました。
- ミニワーク:「ここ1週間で、お金を払って手に入れたものは何か?」「それは、どこの誰(何)が、どうやって作ったものでしょう?」
- 「モノ」と経済・法律の密接な関わり:モノを手放す(捨てる)ときに、モノは「ごみ」になるのだろうか?実際、それが「廃棄物(ごみ)」か「有価物」かは、実際は個人の主観ではなく「お金を払って処理するか、売れるか」という経済原理で決まっている。そして、大量の「廃棄物(ごみ)」が発生する都市部では、衛生の観点などから、厳しく法律で規制されている。
- 「もったいない」では超えられない壁:普段意識することのない木材自給率の推移や23区のごみ排出量の歴史(1989年がピーク)を紐解き、大量のモノが外から流入し、大量のごみが発生する都市のマテリアル循環を考えるには、個別技術や個人の倫理観だけで解決するのは難しく、「経済・法律・社会」の統合的な視点が不可欠であることが示されました 。
ゲストトーク:私たちの社会でモノは本当に循環しているのか?
ゲスト:森 朋子 氏(立教大学 准教授)
廃棄物学を専門とする森氏からは、中世ヨーロッパの劣悪な衛生環境から現代に至る「ごみ処理の歴史」と、現在の循環型社会が抱える矛盾が語られました。
- 高度経済成長期の「ごみ」問題の変質: ごみ問題の原点は、「公衆衛生の保持」にあるが、戦後の日本の高度成長期のライフスタイルの変化に応じて、ごみ問題にも大きな変化があり、処理原則が「収集システムの確立」、「焼却処理の推進(ごみの減量化)」、「有害物質対策の追加」と移行していった。
1. ゴミの質の変化: 量だけでなく、ゴミの中身も変化した。土に還る素材や陶磁器→紙ごみ、プラスチックごみ。
2. 住まい方の変化: 人々が都市部に集中して住むようになった。→ごみとし尿の増加による公衆衛生の悪化
3. 価値観の変化: 消費に対する考え方が変わった。→自由な消費、所有することが「美徳」や「ステータス」/「大量生産・大量消費・大量廃棄」が豊かさの象徴という価値観
- 個人行動(3R)への偏重への警鐘: 1990年代以降、リサイクル法が整備され、「循環型社会」の枠組みが形成されたが、大量のモノの流入(根本原因、元栓)に対処せず、末端のリサイクルに注力しているだけでは、問題は解決しない。3Rには本来優先順位があり、最も優先されるべきは、「Reduce(発生抑制)」である。しかし、現実は「リサイクル」(優先順位は実は3番目)に偏りがちである現状。
- 社会のシステム=レジームを変えるという発想: 個人の意識だけでは変えられない、社会のルールや仕組みそのものを転換していくためには、主語を「私」から「私たち」に変えて考え、ルールを変える・つくる行動をとること、「サスティナビリティ・トランジション」の重要性が提言されました。

ワークショップ・参加者の声
グループディスカッションでは、「手元にあるモノがいつ『ごみ』になるか」という境界線の曖昧さや、分業化が進みすぎた社会への危機感について対話が行われました 。
参加者からの主な気づき
-
OSの比喩への共感: 「持続可能性に向かうマインド」≒社会のOSを転換するニーズと、「個人の充足」≒個別のイシュー(OS)の充実の間の距離をどう埋めるか、という議論が活発に交わされました 。
- 実践への渇望: 「知る・理解する」の先にある「実践(できる)」へのステップや、具体的な行動変容に向けた仕掛けの必要性が強調されました 。
- 分業化への危機感: 「モノ作りにおける分業化が進みすぎ、自分がいかに多くのことに依存しているか(自立力の欠如)に気づいた」
- 大人の学び直し: 「大人こそ、ごみ処理工場を見学する必要がある」「義務教育で豊かな生活が当たり前でないことを実感させるべき」との意見も目立ちました 。
- 「元栓を締める」とは:モノの源流は、突き詰めると化石燃料であると滝口氏が言及。化石燃料への依存から、例えばバイオマスなど再生可能エネルギーに転換する場合、資源量の制約下でどのように経済を回せるかを考えることと、モノの価値を再考することに行きつくとの見解を示しました。

(当日の参加者の様子)
今後の展開
「地域の持続可能性の向上」という、EPOの根源的なミッションを考えるとき、社会的には、どうしても、人が「疎」になることによって表出している社会課題や環境課題、つまり地方部の地域課題に目が向きがちです。しかし、これらの問題は、実際は、人が「過密」になっている地域、つまり都市部とつながっています。
ではなぜ、過疎になる地域と過密になる地域が生まれ、その格差が激しくなっているのか、ということが、本当は社会において問い直さなければならない課題なのだと、改めて、この2回の企画を実施して感じました。
以下の図は、冒頭の趣旨説明で使用した図です。

この問題意識は、この企画の出発点でもあります。
私たちは、どうしたらこれまでの持続不可能性を高める社会から、移行できるのか。「べき論」や、様々な活動、科学的に正しいとされる事実は溢れています。でも、正しさを伝え、個々人の努力でどうにかするという従来の普及啓発や、いわゆる教育の考え方では変えられないのが現状だと思います。
そんなことを思って、本企画は、「まずは自分自身と地域(まち)との関係性を捉え直す」というところに着眼しました。その意味で、多くの人に、まず、「自分と地域(まち)の関係性」の濃淡や有無について思いを巡らせてもらえたことは一つの成果でした。自分自身を地域における人や自然との関係性のハブとして捉えた上で、今回森先生から教えていただいたように、主語を「私たち」として考え、やるべきことややりたいことが思い浮かべば、その地域では何らかの変化が現れるのではないかと目論んでいます。
つまり、この回に参加してくださった一人一人が、それぞれの地域における、新しい地域づくりの主体になっていくことを狙っています。なので、参加してくださった方、アーカイブを視聴してくださった方、この企画から何かひらめいたことや、やってみたいと思ったことがあれば、ぜひ、EPOにご連絡ください。EPOは、地域で新しい地域づくりに取り組む皆さんの企みを応援します。
本研究会は今後も、水、エネルギー、食料自給などのテーマを深掘りしていきます。最終的には、参加者自身の暮らしとまちの繋がりを可視化する「一枚の絵」、まちのサスティナビリティまんだらを創り上げることを目指します。
次回の予告
次回は、本日のアンケートでも関心の高かった「エネルギー」や「水の循環システム」等のテーマを軸に開催予定です。
詳細は随時Webサイトでお知らせいたします。
★本研究会の様子はYoutubeのアーカイブでご覧いただけます★
(関東EPO 高橋)
◎本件に関するお問い合わせ先
担当:山本、高橋
TEL:03-3406-5180
メール:kanto-epo@geoc.jp