【報告】7/3(木) 第3回 とちぎの環境と子どもの未来を考える会 ―「自然体験×子ども福祉」連携の可能性を探る― 2025年8月7日
第3回 とちぎの環境と子どもの未来を考える会
―「自然体験×子ども福祉」連携の可能性を探る―を実施しました。

参考:7/3(木)【栃木県】第3回 とちぎの環境と子どもの未来を考える会 ~「自然体験×子ども福祉」連携の可能性を探る~ - 環境パートナーシップを「知りたい/調べたい/実践したい」人を応援します。
概要
- 日 時:令和7年7月3日(木) 13:00~16:00
方 法:対面
会 場:とちぎボランティアNPOセンター ぽ・ぽ・ら(〒320-0032栃木県宇都宮市昭和2-2-7)
参加費:無料 - 主 催:環境省関東地方環境事務所
共 催:関東地方環境パートナーシップオフィス(関東EPO)/とちぎ子ども自然体験活動ネットワーク - 参加者:14名
プログラム
・参加者自己紹介
・キーノートスピーチ
① 幼少期の自然体験の重要性:遠藤 隼さん
②「自然体験×子ども福祉」の実践事例共有①:荻野 友香里さん/塚本 竜也さん
③「自然体験×子ども福祉」の実践事例共有②:土橋 優平さん/真山 高士さん
・キーノートスピーチの感想共有
・意見交換(ワークショップ形式)
活動報告
2025年7月3日(木)、とちぎ子ども自然体験活動ネットワークのご協力のもと、「第3回とちぎの環境と子どもの未来を考える会 ―「自然体験×子ども福祉」連携の可能性を探る―」と題し、意見交換会を開催しました。
「子ども」がターゲットという意味で共通しているものの、領域が少し異なる「自然体験関係者」と「子ども福祉関係者」は、普段なかなか接点を持つことがありません。今回は、栃木県内で活動する「自然体験関係者」と「子ども福祉関係者」が集う場を企画し、お互いの視点を共有しあうことで、「自然体験×子ども福祉」の連携強化・協働取組の可能性を探りました。
当日は、このような構成で進行しました。
趣旨説明では、昨年度実施した意見交換会のまとめと、本企画の背景を、関東EPOより説明。
昨年度の意見交換会では、自然体験関係者を中心に意見交換を実施し、特に第2回では、とちぎ子ども自然体験活動ネットワークの目指す「全ての子どもたちに自然体験の機会を届ける」という目標のために何ができるかを検討し、その中で、相対的貧困家庭や、就学困難な児童等、公教育ではカバーしきれない対象に対する自然体験活動の機会の提供が必要であり、自分たちが貢献できるのではないかという結論に至りました。
そのためには、「自然体験関係者」だけではなく、そういった子どもたちを対象に活動をしている「子ども福祉関係者」と一緒に、課題や可能性を対話したいと考え、今回の企画が生まれました。
過去の報告はコチラ。
第1回:https://www.geoc.jp/activity/epo/210830.html
第2回:https://www.geoc.jp/activity/epo/210834.html
参加者自己紹介の後は、キーノートスピーチを行いました。
「自然体験×子ども福祉」の効果を考えるための情報共有と、協働がよりイメージできるように、実際にそのような企画を実施している2つの事例の共有を行いました。
⑴ 「幼少期の自然体験の重要性」:サシバの里自然学校 遠藤 隼さん
サシバの里自然学校で活動されている遠藤さんからは、学術的な調査・研究を踏まえ、幼少期における自然体験や外遊びの教育的な効果についてお話しいただきました。
子どもが自然の中での遊びに熱中することで「へこたれない力」を得ることができるなど、幼少期の⾃然体験や外遊びが、子どもにとってしなやかな心と体、感性を育む糧となることが印象的だったという声が、子ども福祉関係者からあがっていました。
⑵ 「自然体験×子ども福祉」の実践事例①:キッズハウスいろどり 荻野友香里さん/トチギ環境未来基地 塚本さん
お二人が連携して行った「自然体験×子ども福祉」の実践事例についてご紹介いただきました。
荻野さんは、経済的状況・人とのつながり等、様々な悩みを抱える子どもたちの居場所を提供されています。
キッズハウスいろどりでは、そもそも参加してもらうために、子どもが参加したいと思えるように個別に丁寧な声掛けをしていることや、複数回開催することで1回目は参加できなかった子も、2回目、3回目と開催して次第に関心を持ってもらえるようにするなど、きめ細やかな対応に、感心する声が多くありました。
また、居場所づくりをされている荻野さんならではの視点として、年齢の高い、主に中学生の子どもたちのための居場所が少ないというお話がありました。参加者から「家でも学校でもないサードプレイスが大切だと感じた。」というコメントもあり、子どもの居場所づくりの大切さに気付かされるお話しでもありました。
塚本さんからは、「子どもたちが来る」ことが、何もなければ荒れ果ててしまう里山・農地に価値を生み出し、新たな利用につながるという、里山・農地の利用という観点での子どもたちの持つ力についてのお話しがあり、参加者の共感を集めていました。
また、子どもを受け入れる側として、一人ひとりの子どもの特性を事前に共有してもらったうえで、全体プログラムを進めながら個別の対応ができる体制を整えたり、その日の子どものそれぞれの状況に合わせて楽しめるように、プログラムも1つに絞らず、色々な遊び方ができるように用意したりと、自然体験提供側としての現場での実践的なお話もしていただきました。
⑶ 「自然体験×子ども福祉」の実践事例②:キーデザイン 土橋優平さん/那須高原自然学校 真山高士さん
土橋さんと真山さんのお二人の連携事例についてお話しいただきました。
不登校の子どもたち向けにフリースクールの運営をされている土橋さんからは、かまくらをつくるということや、厳しい寒さなどの自然体験を通して、「できる」「つくれる」という自然体験での成功体験をきっかけに、フリースクールの庭にピザ窯を作って皆でピザを焼くようになったという、子どもたちの変化のお話がありました。また、外遊びには参加せず、ストーブの周りで談笑している子どもの姿を見て、「せっかく自然の中に来たのに」と思うのではなく、彼らは彼らなりに非日常を楽しんでいると見守るなど、大人側の対応を考えさせられるエピソードもありました。
土橋さんは、子どもと関わる上で「無言の安全管理」「全力であそぶ大人の存在」「不要なアドバイスをしない」という3つの視点を大事にしているそうです。
一緒に体験を提供した真山さんからも、子どもと接する上で、「見守る・干渉しない」、「禁止語を言わない」、「やるなと言ったことは大人もやらない」ことを大切にしているとお話しいただき、体験を提供する上で、子どもの自由な発想と感性を大切にするお二人の共通の視点をお聞きできました。
キーノートスピーチの後は、参加者同士で、印象に残ったことや気になったことなどの感想共有を行いました。3つのスピーチの中身が非常に濃かったこともあり、活発に感想共有が行われていました。
参考に、各テーブルの模造紙を掲載します。
後半は意見交換です。
「様々な困難を抱える子どもたちに対して「自然体験」を提供する際に、自分の立場で大切にしたいこと・気を付けたいこと/パートナー団体に大切にしてほしいこと・気を付けてほしいこと」というテーマで、自然体験関係者と子ども福祉関係者の両者の視点を比較するワークを実施しました。
ワーク①では、自然体験関係者と子ども福祉関係者が別々のグループに分かれ、まずは自身と同じ立場の団体同士で、体験を提供する上で大切にしたいこと・気をつけたいこと、パートナー団体に大切にしてほしいこと・気をつけてほしいことを書き出しました。
また、自然体験・子ども福祉のいずれにも属さない団体を中心に、「その他」の項目に、「今後、プログラムを実践することを考えた場合に欲しい機会や情報などのニーズ」を書き出していただきました。
ワーク②では、テーブルを移動し、自然体験関係者はワーク①で子ども福祉関係者が書いた付箋、子ども福祉関係者はワーク①で自然体験関係者が書いた付箋を眺め、気になった付箋にコメントしていただきました。
意見交換を通して、双方の視点の比較から、お互いに気づきを得ることができ、例えば子ども福祉関係者から「外部の人であれば、その子どもの個性を理解しているからこそ躊躇してしまうような、ちょっとした後押しをしてくれる」という意見が出ており、それに対して「そういう点が喜ばれることを知らなかった」という驚きの声が上がっていました。
また、自然体験関係者から、安全管理に関する意見が多数上がる中で、子ども福祉関係者側からも、「子ども団体と安全管理・現場の様子を事前にすり合わせたい」という意見が出ており、両者がともに検討すべき事項のヒントが見えたように思います。
(ワークの様子)
(模造紙写真)
今回の企画を通して、自然体験関係者と子ども福祉関係者の双方の視点の違いが共有でき、また企画後に実施したアンケート結果からも、具体的な連携を希望する声が多数上がっていました。
企画はこれで終わりではなく、今後、自然体験関係者と子ども福祉関係者の両者が集い、「自然体験×子ども福祉」の具体的なプログラムの検討を実施できればと考えています。このテーマにご関心がある方は是非ご参加を検討ください!
(関東EPO 山本)