持続可能な開発セミナー第1回「全体にかかる基本的勉強会」議事録1

「持続可能な開発」セミナー
第1回「全体にかかる基本的勉強会」議事録:要旨

index ・ 要旨 ・ 講演「ヨハネスブルク・サミットからの出発」 ・ 質疑応答・ディスカッション 


GEOC・関東事務所「持続可能な開発」セミナー要旨

○要旨

地球環境問題を考える場合は歴史的に見る必要がある。ヨハネスブルクサミットの目的は何だったのか。環境、人道といった問題は、軍事、経済、政治の問題の中ではどうしても端に置かれざるを得ない。90年以降国連において、さまざまな国際会議が開かれている。そのさきがけがリオであり、それから10年がヨハネスブルクサミットである。ヨハネスブルクについては、21世紀に向けての世界像を提示することが期待されたが、結論から言えば不十分であった面は否めない。
ストックホルム当時は、産業公害が深刻化している中にあって、環境問題は先進国の問題と捉えられていた。途上国からすると開発が遅れていること自体が最大の環境問題ともいわれていた。その成果として国連で環境問題を取りまとめる機関として、UNEPがおかれることとなった。また、人間環境宣言、行動計画が採択された。会議後、日本でも環境庁ができ、先進国ではだいたい環境担当部門を持つようになった。 一方、80年代に入ると地球規模の環境問題が起こってきた。ただ当時は環境と開発を対立概念として捉えられていた。それを統合する会議としてブルントラント委員会が「持続可能な開発」を提唱し、これがその後のキーワードとなった。将来のニーズを損なうことなく現在の世代の必要性を満たすという考え方であり、先進国、途上国両方が受け入れられる概念であった。
 この考え方が、地球サミットの基本的考え方となった。当時は、冷戦構造が崩壊する過程であり、将来に対する期待感があった。一方で、地球環境悪化を心配させる出来事が頻発し、オゾンホールの発見、アメリカ旱魃、チェルノブイリ原発事故等が起こっていた。こうしたなか政治リーダーたちも国際的課題として地球環境問題を取り上げる雰囲気になっていた。もちろんこの時も先進国、途上国間の議論があり、特に先進国、途上国間の責任の分担をめぐって激しい議論があった。具体的には途上国は技術、資金の移転を求め、先進国側は途上国の人口増加、経済発展(生産、消費パターン)に鑑みて、一定の負担を求めた。
 こうした議論の中で環境と開発に関するリオ宣言が採択され、また、最大の成果としてはアジェンダ21が合意されたのが特色である。ストックホルムと比較すると、ストックホルムの場合、フォローアップが弱かったという反省点があり、これを踏まえて、CSDが作られ、毎年アジェンダ21を点検する仕組みが整備された。また、リオ会議においては、準備プロセスがオープンであったことが評価されると考えられる。ただし、最大の問題点としては、資金の移転に関しては、地球環境ファシリティーができたものの、額が小さく、不十分に終わってしまったことを挙げるべきであろう。
 サミットを機に日本でも環境基本法等ができ、条約も様々なものができたが、それにもかかわらず、実際に地球環境問題(砂漠化、森林減少、衛生的な水の不足、気候変動)は、悪化の一途をたどっている。気候変動に関して言えば、京都議定書ができて6年になるがまだ発効していない。ODAをGNPの0.7%まで引き上げるというコミットメントもサミット当時から比べるとかえってODAの割合が下がってしまっている。特に、アフリカ、南アジアの絶対的貧困層の数はむしろ増えている。また新しい問題としてグローバリゼーション(世界経済の一体化)がある。これによって恩恵を受ける人がいる一方で、市場経済の振興により却って格差が広がってしまうという問題が生じている。
 こうした中において、リオから10年を期してヨハネスブルクサミットが行われた。しかし、結果としてみるとインパクトはリオほどではなかったといわれている。ただし、このサミットは新しい考え方を打ち出すというよりは、行動指向型(既に採択されているアジェンダ21をどう肉付けするか)のものであった。最終成果としては、ヨハネスブルク実施計画、ヨハネスブルク宣言、約束文書(自ら意欲のある国等が国連のクライテリアに従って、宣言し、登録するもの。300近くのイニシャティッブが出された)にまとめられた。また、京都議定書と再生可能エネルギーに関し、進展があった。個々に見ると従来の取り組みをさらに進める枠組みができた。ただ国際的に見ると米国の消極的態度もあり、陰が薄くなったきらいはある。また、NGOのどこまでの意思決定にかかわれたかもこれから評価に委ねられるであろう。
 全体としては、将来世代に対して、メッセージということで言えば、強いコミットという意味では不十分であった。環境保全と経済発展と社会的公平を具体化して各論に落としたとき、実施計画レベルでは妥協が生じざるを得なかったということだろうか。パートナーシップ・イニシャティブについては、新しい取り組みとしてどこまで進展するか注目される。また、今後CSDで二年ごとのサイクル(レビュー会合と政策会合)で点検を行っている。CSDがどれだけ政治的サポートがあるか、また、その勧告が各国で実施されるかは、ウォッチが必要である。また、各テーマについては、世界水フォーラム、京都議定書発効問題(ロシアの動向、EUの排出権取引市場の実施)、自然エネルギー2004(自然エネルギーの大幅拡大)、持続可能な開発のための教育の10年USDESD等の動きが注目される。
 最後に、環境問題に取り組む、根本的な単位はローカルな取り組みである。補完性原理が働くことが重要であり、地域の自主的決定権が大事である。グローバリゼーションの問題は自分たちに関わり無いところで政策が決まってしまうことにあり、この弊害を解消するには、資源でも可能な限り地域で廻す地域循環、地域から政策実験する過程が必要である。この際に、情報公開透明性確保が重要である。これらを通しての環境民主主義がこれから重要となっていくことであろう。

  →次(講演「ヨハネスブルク・サミットからの出発」)


index(もくじ) ・ #1:要旨 ・ #2:講演「ヨハネスブルク・サミットからの出発」 ・ #3:質疑応答・ディスカッション