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【開催報告】まちと私のサスティナビリティ研究会 プロローグ回「都市の脆弱性を知る」

2026年2月24日、関東EPOは、都市生活の持続可能性を足元から問い直す対話の場
「まちと私のサスティナビリティ研究会」のプロローグ回を開催しました。


参考:【東京開催・オンライン併用】まちと私のサスティナビリティ研究会 - 環境パートナーシップを「知りたい/調べたい/実践したい」人を応援します。

概要

  日 時:令和8年2月24日(火) 15:00~17:00
  方 法:対面&Zoom
     会 場:GEOCセミナースペース(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学1F)
     参加費:無料
     主 催:関東地方環境パートナーシップオフィス(関東EPO)/環境省関東地方環境事務所
     参加者:対面9名/オンライン22名

開催の背景と目的

 現代の都市生活は、高度に最適化された物流やインフラによって支えられ、蛇口をひねれば水が出て、スイッチを押せば明かりがつくことが「当たり前」になっています。 しかし、この便利さの裏側で、私たちは自分の暮らしがどのような自然資本や社会システムに依存しているのかを実感しにくくなっています。本研究会は、気候変動や災害といったリスクが顕在化する中で、都市の「脆弱性」を直視し、自分たちの暮らしを支える「目に見えないシステム」とのつながりを取り戻すことを目的として企画しました。

当日の様子

当日は、3名の登壇者に、それぞれの視点から都市が抱える「システムエラー」についてお話いただきました。滝口氏からは、導入として、「そもそも、都市の暮らしは何によって支えられているのか?」という、全体像を捉える視点の共有をいただき、鈴木氏・澤氏には、それぞれが経験した災害時の体験をお話いただき、「平常時のシステムが止まった時に何が起こるのか」ということをお話いただき、全体を通じて、都市部の脆弱性を追体験する機会となりました。

導入|「都市の持続可能性?」:滝口 直樹 氏(立教大学)

まず、人口が集中する都市は、外部からのエネルギーや水、食料の供給なしには成立しない「依存」の構造にあることを、データを用いて解説。 都市のサスティナビリティは、単一の解決策ではなく、複雑なつながりの中で捉える必要があると提起されました。

滝口さんの発表資料はこちら[PDF 1.96MB]

  • 事例①|「3.11仙台における都市のシステムエラー」:鈴木 美紀子 氏(EPO東北)

東日本大震災時の仙台市での経験を、発災からの個人のタイムラインに沿って共有。
「情報の不在」「交通の麻痺」「現金決済への逆戻り」など、普段の「当たり前」が通用しない場面における、「予測する能力」「土地に関する知識」の重要性に関わる体験談が特徴的でした。

鈴木さんの発表資料こちら[PDF 1.67MB]

  • 事例②|「平時のパートナーシップ 有事のチカラ」:澤 克彦 氏(EPO九州)

熊本地震等の事例から、インフラ復旧までのプロセスや、地域コミュニティ、行政、企業間の連携の重要性を報告。 「都市には都市の助け合い」が必要であり、平時からの顔の見える関係性が有事のレジリエンス(回復力)に直結することが示されました。 

澤さんの発表資料こちら[PDF 1.69MB]

参加者の声(アンケートより)

参加者からは、自身の暮らしを見つめ直す多くの声が寄せられました。

  • 「水やエネルギーのシステムが、これほどまでに目に見えないところで繋がっていると再認識し、意識が大きく変わった。」
  • 「震災時の具体的な『システムエラー』の話を聞き、自分の住む地域での備えや働きかけの重要性を感じた。」
  • 「『まち』のサステナビリティと並行して『わたし』のサステナビリティを考えるという趣旨に深く共感した。」


    (当日の参加者の様子)
      

まとめ

 プロローグを通じて、「まちと私のサスティナビリティ」を研究する上で大切にしたいことがいくつか浮かび上がってきました。

 ①都市は自立していないという前提

「都市は、孤立した存在ではない、また、自立もしていない。」|滝口氏

導入の冒頭にあった通り、都市の暮らしを支えるシステムは、モノ、食糧、エネルギー、水、交通・・・どれをとっても、他の地域とつながっています。この事実は、現代において、都市部であろうと地方部であろうと変わらないかもしれませんが、人口密集地の方が外部に依存している率が高く、脆弱性が高いと言えます。

例えば、東北、熊本、どちらの事例でも、「公園」は一時的な避難場所として機能していましたが、首都圏の公園の面積で、それは可能でしょうか。あるいは、3.11の後に、東北ではエネルギーの自給を考えるために「みちのく薪びと祭り」が立ち上がりましたが、首都圏で同じテーマで人々が取り組むとしたら、それは可能でしょうか。

情報や経済の集積地としての都市の価値は、それ以前に、人間の暮らしを快適にする様々なシステムによって支えられているということを忘れてはいけないと思いました。

 

②「私」を起点に考える

「サスティナビリティ」という単語は、SDGsの浸透と共に、多くの企業で使われるようになりました。しかし、それは「何が」続くことを指しているのでしょうか。

今回のアンケートでは、鈴木氏・澤氏の「個人のタイムライン」を追体験することで、リアリティが増したという意見が多数ありました。この研究会では、「サスティナビリティ」について、企業や国や企業、経済が続くかという大きな主語の話ではなく、人間の暮らし、すなわち「私」の暮らしが続けられるかどうかということを起点に考えて行きたいと思っています。

 

③「生きる」知恵を蓄える

鈴木氏・澤氏の事例から、土地の成り立ちや地形についての知識や、エネルギーや水を調達・確保することなどのサバイバルに関する技術や知識が、被災生活の中で活きたエピソードが語られました。鈴木氏による、発災直後の天候や季節、地形を読んだ迅速な避難行動や、澤氏による、キャンプ道具を駆使した避難生活の設計などから、参加者も「自分には気候や地形を読む力がないことに気が付いた」、「避難生活をキャンプとして楽しむ知恵は学びになった」など、多くの気付きがあったようです。

このことから、どれだけ暮らしが便利になったとしても、自分が暮らす土地のことや、それを支える自然環境のシステムを知ることや、火を確保することや衛生面について、最低限生きるための知識や技術を身に着ける必要があると言えます。

 

④「個人」の力の最大化

「あてにできる人も被災している」|澤氏

有事には、暮らしを支えるシステムのどこにどのようなエラーが起きるかは分かりません。例えば、「地域の課題解決は行政の仕事である」と普段は思っていても、行政の人も、同じ地域の一人の人間で、被災者です。

その時に役に立つのは、澤氏の事例にあるように、地域内外における普段からの多様な人とのつながりです。この「つながり」とは、「日常のゆるやかなつながり=ネットワーク」があるだけではだめで、「個人の信頼関係の中から結び目(knot)ができる=ノットワーク」であると、澤氏は表現しています。この点は興味深く、例えば発災直後の混乱の中、いつも通りの行政サービスを求める消費者マインドで待つのか、自分の家族や地域の人にとって必要なもののために動くオーナーシップを発揮するのか、一人ひとりのマインドによって、生存確率が変わってくるという話でもあると思います。後者のマインドに立って、その「まち」に生きる一人の人間として、できること/やるべきことを考え行動しようとした時に、普段の自分のネットワークが、ノットワークとして機能するのだと思いました。

今後の展望

本研究会では、今後、参加者とともに「サステナビリティ曼荼羅(仮)」の作成を目指します。 自身の活動や暮らしが社会・自然のどの要素とつながり、どのような影響を与え合っているのかを可視化することで、都市生活者が納得感を持って持続可能な選択をしていけるような場を継続してつくっていきます。

 ★本研究会の様子はYoutubeのアーカイブご覧いただけます★

 

(関東EPO 高橋)