国内事業

EPO中部 協働取組加速化事業のキックオフに参加してきました

7月24日、EPO中部が開催する協働取組加速化事業の連絡会に参加してきました。中部からは、若狭高浜のブルーフラッグ認証取得と、中部リサイクル運動市民の会の「めぐるプロジェクト」が採択され、担当者のみなさんやEPO中部が招いたキーパーソンとの意見交換を行いました。

連絡会で議論の中心になったのが「政策協働」。
例えば、リユースびんの話で言うと、特定の飲み物が循環していくために誰と誰が組んで、資金的に回りつつ、リユースができるかというビジネスでの協働に対し、リユースという考えが地域で共感を得て、かつ社会の仕組みとして回るためには、誰と組み、どんな役割分担をすべきなのかを考え、特に行政との役割分担をどう提案していくかが、今回の事業のポイントになります。

この事業でやるべきことが明確になった一方で、その難しさも改めて認識しましたが、これから1年いっしょに知恵を絞って汗をかいて事業を進めたいと思います。

hirata

ソーシャルセクターの事業を振り返る、7つの評価視点

事業のPDCAサイクルを回して行く時、きちんと振り返りをして、
次の計画にフィードバックしていくことが大切です。

国際協力の中では、DAC5という事業評価の視点が用いられています。
これは、支援事業の効率性や計画妥当性などを検証するためのものです。

この評価視点は、非営利(ソーシャル)セクターの事業においても有効です。
ただ、その視点に、市民参画、協働の視点も加味すると、より、深く検証することが可能になります。

以下、私たちが協働取組推進事業で振り返りに利用した、
非営利セクターの協働事業を振り返る7つの評価視点のご紹介です。


■効率性
「事業へ資源投入(人的・財政的資源等)がどれだけ効率的に活かされたか。」

スタッフ配置や、協働主体の役割分担が適切だったか、経費支出の適切性を判断します。

■効果―目標達成度
「事業の目標はどれだけ達成されたか。」

ここでの目標には、地域、社会の問題(ニーズ)の解決にどの程度貢献したのか、
また協働事業としてのPDCAを回せたのか、人材育成の機会を設計し、
スタッフの成長は見られたのか、というところまで含みます。

■関係主体の巻き込み度合い
「地域における挑戦者、企業、大学、自治体、地域住民等をどれだけ巻き込むことができたか。」

これには、各協働主体のニーズを把握し、共通ビジョンを構築できたのか、
信頼関係を構築することができたのか、といった点を評価します。

■受益者の満足度
「地域における挑戦者、企業、大学、自治体、地域住民等のニーズや期待に応えることができたか。」

応えることができたかは、把握する取り組みをしたのかという点と、本音を語り合う機会を設けたのか、
という点で評価します。

■社会的インパクト
「事業が社会に対し、どのような正負の影響を直接・間接的にもたらしたか。」

知名度が上がったのか、政策提案に繋がったのか、実際に問題解決に繋がったのか、
横断的課題へ影響を与えられたのか、といった点を見ていきます。

■計画妥当性
「年度当初の事業との計画事態は妥当であったか。」

常に計画との比較を行い、計画と結果のずれをどのように判断し、機会を活かすようにしたのか。

■自立発展性
「事業自体が自立発展的なものかどうか。」

協働実施のための基盤(責任と役割の明確化、偏りがないか)が構築できたか、
資金調達計画はどうなっているか、実施するためのノウハウは蓄積されているか、
といった点から評価します。


これらの評価視点で事業を振り返る時に大切なのは、批判的にだけ見ないようにすることです。
具体的には、良かったこと、悪かったこと、改善することの3つの要素でバランスよく評価することです。

そういう点では、KPTというフレームワークと組み合わせることが好ましいのではないか、
と今の段階では考えています。

Keep(続けたいこと、良かったこと)、Problem(問題点、悪かったこと)、Try(改善すること、工夫すること)
を省略したフレームワークです。


こういうことをいつも念頭に置きつつ、伴走支援をしています。
皆様の事業の参考になれば幸いです。


Takayuki Ishimoto

協働ギャザリング2014に参加してみたら

こんにちは☆

先週土曜は、H25年度協働取り組み事業の報告会~協働ギャザリング2014協働×環境=どんな未来?に、イチ地方支援事務局の立場で参加してきました!
日本各地の協働取り組み事業のトップランナーが東京に大集結。会議室に納まりきらないパワーと熱気に、いつもは静かな都心も、日本一のパワースポットと化していました。 ここに集まった人はご利益があったハズ?

実は身内で言うのも何ですが、このタイトル、ちょっと心配していました。”ギャザリング”って言葉はユースの活動ではよく使いますが、行政の方、横文字に慣れていない方は分かるかなぁ・・・と。

案の定、ギャザリングって何ですか?とコソコソ聞いている方を発見。耳をダンボにしながら、やっぱり、ユニバーサルな言葉にするとかサブタイトルを付けるとか、もう少し配慮があってもよかったかな、と反省。 

さて、当のギャザリングは、事業のプレゼンタイム、各ブースに分かれてのコミュニケーションタイム。3年後にどうありたいかを未来新聞という形でまとめるワークショップタイムの三部構成。

アドバイザーの先生の視点で振り返ってみました。

“記憶に残るプレゼンができたか?”

協働取り組み事業そのものに直接、関係ないですが、10数団体もの発表がある中で、記憶に残るプレゼンができるかは、メディアへの掲載やスポンサーの獲得への道につながる重要なこと。より多くの人を巻き込むにも、まずは、”あ、面白い!” ”話を聞いてみたい!”と思わせないとですよね。

もちろん、興味ある分野、テーマはより聞こうという意識が働きますが、そういうベースの知識がない上で、記憶に残るポイントは、やっぱり、“キャッチーなキーワード。写真動画などのビジュアルプレゼンターの印象と話し方。

この点から、記憶に残った言葉はというと・・・、

①“新鮮なヘドロを持ってきました! どんだけ汚いかお分かりいただけますー” (o^∇^o)ノニコ

②“小浜温泉にオバマ大統領が来て、ココの温泉の再生可能エネルギーのポテンシャルについて問われれば、“Yes、湯 can!”と答えるはず!”←注:現時点で想像の話

・・・とか。すみません。しょうもないワードにしか反応できず。ヾ(_ _。)
要はですね、笑ったり、気持ち悪っと感じたり、何か、感情が働くと記憶されるのですよ!人の心を動かすには100文字の文章より、4文字熟語だったり、キーワードの方が、突き刺さりやすく、一度刺されば、シメたものΨ( ̄∀ ̄)Ψケケ

プレゼンターの印象で言えば、ピカイチで注目を集めたのはとある公害関係の団体の女性。タレントの柳原加奈子ちゃんのよう明るく元気な声(風貌ではなく声のトーンね。)と絶妙な関西弁トークに会場を釘付け。他のプレゼンが耳に入らないほどの存在感で、公害教育=負の遺産の学びという既存の考え方から、ワクワク感すら覚えてしまう・・・、そんな新たなイメージを想像させる、どの方に聞いても注目度No.1の方でした。

ビジュアル的には、自然歩道を説明するのに、トレイルの格好で出てプレゼンしたり、環境教育教材に使う動物の剥製などの実物が現れると、記憶に残りますよね。

▲”未来新聞”作りワークショップの最中。時間なく、結構、焦りました(~_~;)

さて、次の問い。
“やっていることはあなたたちがやりたいことですか?
地域が求めていることですか?地域で解決しなければならない課題ですか?
課題を解決する上で、パブリックを担う覚悟はありますか?”

これは、次期、協働取り組み事業に応募している方にも必要な問いだと思います。

今回のような短いプレゼンでは、残念ながら地域の事情までは見えないので、何とも判断しようがないのですが、 独り(団体)よがりになっていないか、地域が求めているものに応えようとしているか、の問いは、協働を進めようとする時に常に立ち戻って考えたいポイントかもしれません。
この問いに関係することですが、受益者の声がもう少し見えてほしかったな、という思いがあります。

”重要なことだとは思っていたけど、今まで動けなかった、一緒にできてよかった、もっと進めていきましょう!”なのか、”何か知らねぇけど、変わりモンが頑張ってらぁ”と、冷ややかに見られているのか・・・。

今回、全国各地の様々な団体の皆様に出会い、先進的な様々な取り組みを知ることができ、気づけば楽しく発表会を終えることができましたが、この“協働フェス”とは別に、本事業で本来、評価すべき協働プロセスについて、事業の様々な成果と課題とともに、振り返り、次年度事業に活かしていく必要があるのだと思いました。
 
今年度初めての事業。試行錯誤の連続でしたが、関係者のみなさま、お疲れ様でした!

s.shirai

あなたもできる!地域円卓会議のヒケツ

マルチテークホルダーで対話と協働を進めていくための方法論として、「地域円卓会議」があります。
沖縄、秋田、島根、茨城、その他全国各地で徐々に広がりつつあります。

昨日、「地域円卓会議フォーラム2014~地域の課題に、対話と協働で挑む~」が開催されました。
私も参加していたので、「地域円卓会議」について、私が興味を持った点を少しだけお伝えします。

地域円卓会議フォーラムの様子


■テーマは曖昧にしない。困ったことは参加しやすい。

円卓会議を開く際に、大切なのは、テーマの設定になります。
これは、フューチャーセッションでも同様に、「問いの設定」と言われるものです。

要は、いったい、何を話し合うのかを予め決めていなければ、何も話せないと言うことです。
さらに、話し合うことを決めていても、上手く進められないケースがあります。
それが、「曖昧なテーマ設定」です。

例えば、どんなものが曖昧になるのかというと「地域活性化」という言葉です。
「地域活性化」という言葉は、よく使われますが、それぞれの立場によって、如何様にも解釈できます。
つまり、地域活性化を如何に具体的に説明できるかがカギになります。

具体的にする際に、参考となるのは、「誰かの困りごと」であることです。
「困りごとには、参加しやすい」という講師の言葉が印象的でした。

ただ、「地域の安全・安心」というだけではなく、
「大雪の際に、高齢者が雪かきをできないからなんとかできないか」、
といった切実な困りごとをテーマとした方が、参加の方法も解決策も話やすいということです。


■ペチャクチャタイムで対話を深める。

円卓会議で、参加者全体で話をする設計はなかなか難しいです。
けれど、部分的にでも参加者全体で話をして、対話の展開に活かすための方法論として、
沖縄式の地域円卓会議では、「サブセッション」と呼ばれる時間を設けています。

円卓にいる人たちが話をする時間(メイン)を2回取っており、その間にサブセッションを挟みます。
サブでは、円卓の外にいる人たちも含めて、隣り合う参加者で話し合ってもらい、
1回目メインで話し合われていたことを踏まえて、2回目で話していく内容を深めるものです。

このことをペチャクチャタイムと呼ぶ方もいますが、話を聞いているだけでなく、
話をしたくてうずうずしている人たち同士で5分でも、10分でも話してもらうことで、
聞いていた中での気づきや感想が共有されます。

そうすると、その円卓会議の場の中で、大切にしたいテーマが浮き彫りになってきて、
次にメインで話し合うことにつなげていくことができるということです。

円卓になってみんなで対話


■”VS”から”&”の関係に!

円卓会議形式にすることで、一方通行の形になりにくくなり、
また前向きな意見が出てきて、意見を交わすことでお互いの理解が促進される、
という報告がありました。

ここで肝となるのは、誰が音頭を取ってもいいですが、
音頭を取った人ではなく、参加者に当事者性、主体性を持ってもらえるかです。

例えば、行政とNPOであれば、「VS」のような対立構造では、円卓会議は成立しません。
地域の課題を解決するからこそ、行政もNPOも企業も総動員で、お互いに「&」の関係性に切り替わらないといけません。

島根県雲南市では、地域円卓会議を導入して、小規模多機能自治の取り組みが進んだことで、
行政が「やってくれない」というマインドから、「やらせてくれない」という嬉しい不満が市民側から
あがってくるようになりました。

このマインドの転換こそ、まさに「VS」の対立ではなく、「&」の協働と言えます。


ここには書き切れないほど、様々なヒントがたくさん詰まったフォーラムでした。
勘違いしてはいけないのは、必ずしも円卓会議をすれば成功するわけではないということです。

テーマの設定が顕著ですが、場所によって、何が大切であり、どのような進め方が適切なのか、
全てが生ものなので、正解はありません。

もし、この記事を読んで、興味を持たれた方、まずは「地域円卓会議のススメ」を読んでみて、さらに詳しく知りたい方は、沖縄式円卓会議をお取り寄せください。


Takayuki Ishimoto

協働取組においていかに人を巻き込むか~EPO中部のMSHダイアログに参加してきました~

こんにちは!

先日、EPO中部が主催した「MSHダイアログ 協働とESD~サステイナブルな社会を「本気」でつくる~」に参加してきました。こちらは中部7県で“環境と経済の調和に基づくビジネス創出”“持続可能な社会を可能にする人づくり”をテーマにした活動に関わる様々な立場にある人が今後の相互発展の為に意見交換をする場です。(ちなみに”MSH”ダイアログとはマルチステークホルダーダイアログのこと。)

今年のダイアログのテーマは3つ。

(1)「協働取組~組織を強くする、地域を巻き込む」

(2)「協働取組~資金をどう調達するか」

(3)「ESD~学校と地域の連携による人材育成」

(1)と(2)については、今年度の環境省の「地域活性化を担う環境保全の協働取組推進事業」、また(3)については同じく環境省の「持続可能な地域づくりを担う人材育成事業」と今年開催されるESD世界会議に関連してテーマ設定されたようです。

私が参加した(1)では、事例紹介をもとにコメンテーター、参加者による意見交換を通じて、具体的に協働取組における「組織基盤強化」や「多様な主体の参画」についてディスカッションしました。挙がった論点としては、

[目的や目標の共有]・[事務局の確立]・[マスメディアの活用]……などなど、普段実践されている方が当日集まっていらっしゃったので、濃い意見交換がなされました。中でも特に話に上がったのが地域の中で協働取組に取り組む際に、いかにして「人を巻き込むか」という点。

世の中にたくさんの市民活動がありますが、関わる人のその全てが最初から問題意識を強く持っているわけではなく、「むしろ楽しいから関わる」ということも多いのではないかという指摘や、またついこのような議論で「ビジョン」という言葉を使いがちだが、人によって用法やスパンなどが異なることもあるため、あえて使わないことも重要ではないか、という議論もありました。うーん、この問いは奥が深そう…。

この場として何か具体的な解決策を確認したわけではないですが、普段あまり接点のない活動をされている方々との意見交換は新鮮でもあり大変勉強になりました!

 

Kensuke eguchi

年の瀬に協働について考える ~あるコーディネーターの独り言~ 

こんにちは☆
年末も押し迫った週末。仕事を早めに切り上げ、協働に関する勉強会に参加してきました~。
本日の勉強会で取り上げられる事例がGEOCのある地域の協働取り組み事業だったため、本事業に関わる関係者、GEOC、各地方EPOの皆さんも参加されていました。環境社会学の権威や研究者、沿うそうたるメンバーがずらり・・・。まさにまな板の鯉状態。

私事ながら、会場が母校だったこともあり、見慣れた部屋で、話を聞いているうちに、修論を書いていた時のことがオーバーラップ。

研究で環境保全に係るプロジェクトの事業評価をしていた時、一団体でがんばりすぎる、同じような地域で同じような取り組みがある・・・といった.非効率さに気づき、戦略的に協働・連携するべし!と、考察したことを思い出しましたが、ハッと気づけば我が身。まさか自分がEPOという立場で“協働・連携”の当事者として関わるとは当時は思ってもみませんでした。

EPOがどのように地域の協働協働に関わるか。
今日の会合では、”環境保全はなぜうまくいかないか”(新泉社刊)の著者で、10月の協働取り組み作業部会@札幌(協働取組事業の連絡会in北海道に参加してみたら)の時にコメンテーターとしてご出席いただいた、北海道大学の宮内泰介先生が主宰する勉強会でしたが、札幌の時と同じく、「EPOが関わってよかったですか?」と直球、ド真ん中な質問をここでも投げかけていました。

一同、ドッと笑いがおきながらも、こちらは内心ドッキリ。
そうなんです。事業に応募した団体は環境省というネームバリューとお金以外に、EPOが関わることで何らかのメリットを期待して応募した団体が果たしてどれ位、あったでしょうか。

EPOは世話好きなコーディネーター以上の役割を果たせたのか、環境省のトランスレーション(橋渡し)機能以外にどんなことが提供できたのか・・・思わず頭を回らせてしまいます。
もちろん、各地域、協働のスタイル、段階、事業規模などそれぞれ違うので、こちらから提供するもの、団体が必要とするものは必ずしも同じでなく、どれがいいということはないのですが。

ただ、勉強会の中でも出てきた、”事業を伴奏する中で、半歩でも先を走りつつ、地域全体の動きを俯瞰した中で当該事業を支援する”、ことはどの事業にも共通するだろうなと。
ご意見に納得しつつ、でもそれって、地域の課題や事情、ステークホルダー相関図などが頭に入っていないとできないこと。それをEPOが全てを知っている必要があるか?といったら、短期間だけ突然外からやってきて、地域の人以上に地域のことを知っているわけはないのでムリな話というのに加えて、環境省やEPOの手を離れた後のロードマップを考えると、将来的に地域の主要アクターになるであろう人(団体)や地域のコアメンバー(中間支援組織、NPO)をいずれにしても巻き込んで支援する、つまり、EPO自身こそ、EPO単独の伴奏や支援ではなく、地域のステークホルダーと連携した上で、チームによる支援ができた方がいいのかなと、実際に事業を回しながら実感してきたことです。

EPOスタッフは総じて、
  この人たちとあの人たちをつなげたら、こんな地域ができる・・・
  この動きとあの動きをリンクさせたら、世の中がこう動く・・・
  この課題とあの課題は一緒に議論したら同時に解決できるかもしれない・・・

頭の中でこんなデザインを思い描きながら働いていると思いますが、自分としては、国費を投じた事業へのアカウンタビリティにも似た、最低限の基準をクリアすることに精一杯で、ビジョナリーに事業を捉えて地域を支援していくことに未熟だなと痛感。

この数ヶ月あまり、地域の協働事業を微力ながら伴奏してきた身としては、私たちは団体さんを通じて地域に入り込みことができ、様々な意味で”地域を知る“ことができた一方で、EPOとしてどんなことを提供できたのかを振り返ると、色々と反省も多く、歯がゆさも感じます。

3年後、5年後・・・。地域に”あの時、EPOが関わったことがターニングポイントになったなと、少しでも価値を見いだしてもらえるように、今年度も残りわずかですが、ガンバっていきたいと思います。

s.shirai

ワクワク生まれた!公害資料館連携フォーラム

日本の公害問題と言えば、皆さんは何を思いつきますか?
「水俣病」、「新潟水俣病」、「イタイイタイ病」、「四日市ぜんそく」を思い浮かべることが多いかもしれませんが、
これらは4大公害病と呼ばれるもので、日本にはこれ以外にも様々な公害問題があります。

倉敷市水島地域、兵庫県・大阪府の西淀川地域、川崎市での大気汚染など、
社会科の教科書に掲載されている4大公害病だけに限らず、日本各地では様々な公害が起こってきた歴史があります。
そして、数十年たった今もまだ、終結を迎えていない地域が多いのです。

ところで、公害が起こった各地域の一部には、後世に公害問題を伝えたり、
環境教育を行うための資料館や学習施設があります。

これら資料館は、行政が運営しているもの、民間が運営しているものなど形態は各地で異なっており、
また収集している資料の種類も、閲覧の可否なども含めて違っています。
そのため、地域内でも、地域外でも、ひいては海外に対しての情報発信が不十分で、
公害経験の共有が次世代になされていない現状があります。

そこで、西淀川地域の公害問題に取り組んでいるあおぞら財団が中心となり、
公害資料館のネットワークを作り、各地の公害経験を共有するための協議会を結成することを目指して、
公害資料館連携フォーラムを新潟県で開催しました。(本年度、協働取組推進事業の採択案件

公害資料館連携フォーラムのオープニング


同フォーラムは、初めて、日本各地の公害問題に取り組む関係者が一堂に集まり、
お互いが抱える課題・地域で蓄積されてきた知見を共有し、交流を深める機会となりました。

あおぞら財団では、このフォーラムを開催するにあたって、各地を訪問、ヒアリングしてまわり、
フォーラムを通じて、どのような関係性を構築していくかを模索してきました。

その結果として、フォーラムでは、公害資料館だけでなく、
地域再生や公害・環境教育に取り組むNPO等も当事者となるテーマを掲げ、分科会を用意していました。

「資料館の参加型展示」、「資料の収集・保存・整理/公害・環境教育」、「資料館の運営マネジメント」、
「地域再生」「CSRと公害教育」と多様な分科会の中から参加者は選び、
それぞれの学びを深めていきました。

「CSRと公害教育」分科会の一コマ


「CSRと公害教育」の分科会では、(財)CSOネットワークの黒田さんを迎えて、
ISO26000に基づくSRの点から、企業は公害問題においてコミュニティ(地域)とどのように向き合っていくべきなのか、
ということについて話し合いました。

話題提供として、清流会館の高木さんからイタイイタイ病をめぐる、
三井金属鉱業神岡事業所(神岡鉱山)との関係性について報告があり、他の公害地域と違い、
どうして神岡鉱山は地域と良好な関係が築けているのか参加者からも意見が出てきました。

また、「資料館の運営マネジメント」の分科会では、IIHOEの川北さんを迎えて、
NPO支援施設の運営と人材育成のノウハウから、資料館が学べることをお聞きしました。

現在と3年後の資料館の組織体制を書き出して、その体制を築くために、「理事会がどうなっているか」
「ルールはどうする必要があるか」「人材開発担当は?」「会議の在り方は?」「どのようなところと連携しているか」など、
いくつかの問いに答える形のワークショップを行い、想い・思考を深堀する時間となりました。

公害資料館の連携に向けて宣言!


2日間開催された同フォーラムには、80名を超える人が全国各地から参加し、
休憩の合間も、熱い話し合いが行われていました。

鉄は熱いうちに打て、ではないですが、フォーラムの最後には、
あおぞら財団の林さんから、公害資料館連携ネットワークの立ち上げ宣言がされました。
満場一致、拍手でこの宣言が迎えられ、今後の取り組みが期待されます。

今後、今回のフォーラムをきっかけとして、
経験交流するという点から、ネットワークとして繋がる線へ、そして交流が深まり共通アクションが生まれる面となり、
「日本/JAPANの公害問題」についての旗を立てることを、私も期待しています。


takayuki Ishimoto

公害から学ぶこと~九州に行ってきましたその3~

こんにちは!

九州に行ってきましたの第3回目になります。
最終回は一般社団法人水俣病センター相思社の水俣病歴史考証館についてです。

水俣駅からは少し離れた袋という小高い地域にあります。もともとこの辺りが患者の多い地域であったことや、町の中心部にこのような施設が作られることへの反発など、建てられた背景にも様々な理由があるそうです。ちなみに急な登り道や細い道を越えていくので自転車で行くにはかな~りいい運動になりました。

考証館からさらに少し上ると、遠くに天草諸島も。



水俣病歴史考証館には水俣病そのもののことだけではなく、漁業に使われていた道具などいかにして人々が不知火海と暮らしてきたか、またチッソ・行政と患者の方々との闘いの記録が生々しく感じるほどに残されていました。前述のような公設の資料館も公式資料の保存というで重要ですが、同時に民間の視点で、かつ資料館ではなく「考証館」であるということが、過去を過去だけのものとせず水俣病を繰り返してはならない、という強いメッセージそのものだと感じました。

 

3つの施設を回り色々な方からお話を伺うも、なかなか自分の中でも明確なまとめができているわけではなく、悔しく思います。ただ、実際に現地を回ることで感じたことは、
・水俣病の被害に今なお苦しんでいる人がいるということ
・水俣病は単なる病気ではなく人と人との関係性、差別と密接に結びついているということ
・水俣病は人命より経済発展が優先されたことの一つの結果であること
でした。

もちろん以上のことは水俣病に限らず他の公害問題でも当てはまります。なによりも教訓を引き継ぎ悲しみを繰り返さないようにすることがこれからの世代に求められていると思いますが、具体的に何をしていけばよいでしょうか。例えば、一個人として公害資料館に親しい人と行ってみるとか、会社でも話題に挙げる、などあると思います。身近なことから始めていきたいですね。

さらにもう少し大きな枠組みで、各地の公害資料館同士のネットワークをつくる、というのが今年度の協働取組全国事業のあおぞら財団さんの事業になります。GEOCとしてしっかりご支援できるように頑張っていきたいと思います。

 

ローカル線の「肥薩おれんじ鉄道」に乗って帰路へ。道中お世話になった皆さま方、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Kensuke Eguchi

水俣病資料館を訪ねて~九州に行ってきましたその2~

 

こんにちは!

EPO九州に来たのに合わせて熊本市から水俣市まで足を延ばしました。目的地は…日本の4大公害病の一つに数えられる水俣病の資料館です。こちらも先日紹介した協働取組事業に関連するもので、全国事業として採択された「あおぞら財団」が今年行う「公害資料館の連携」事業に参加予定の資料館です。

水俣病の資料館は、汚染された海洋を埋め立てて造られたエコパークにある水俣市立水俣病資料館と市立資料館に併設して国立水俣病総合研究センターが設置する水俣病情報センターと、そこから離れて民間組織である一般社団法人水俣病センター相思社の水俣病歴史考証館の3つが大きいものであります。

 

3つの施設を1日で回るための相棒がこちらです。水俣駅のレンタサイクルを利用いたしました。→

 

 

 

 

まず市立と国立の資料館があるエコパークに向かいました。資料館に入るとすぐに映像で「水俣病のあらまし」を見ることができます。そのあと順路に従って常設展示ということで、水俣市のこと、水俣病のこと、患者の方々のこと、加害企業チッソのこと、裁判のこと、行動した一人ひとりの方々のことなどがパネルや映像で紹介されています。また企画展示のところでは、今年の10月に開かれる「水銀に関する水俣条約」外交会議についてのパネルがありました。さらに、今回は断念いたしましたが予約をすれば水俣病患者である語り部さんから実体験に基づくお話を聞かせていただくことができます。

 

 

続いてつながった建物に国立の水俣病情報センターがあります。ここには、水俣病の情報ももちろんあるのですが、他に水銀そのもの性質や世界各地の水銀汚染についての情報があります。また、ここの展示室の中央には大きなドーム型のスクリーンがあり、今現在の水俣湾の様子などを映しています。

 

 

資料館横にある「水俣メモリアル」

資料館横にある「水俣メモリアル」

 

 

水俣病情報センターの屋上から八代海を一望

 

次回は、相思社の水俣病歴史考証館などについて書きたいと思います!

 

Kensuke Eguchi

協働取組in九州のキックオフ! ~九州に行ってきましたその1~

こんにちは!

先日、協働取組推進事業の九州事業第1回連絡会がEPO九州にて行われ、全国支援事務局として参加させていただきました。

 

今年度の採択団体は全長3000kmにも及ぶ九州自然歩道の情報発信や協働管理・活用を促進する「特定非営利活動法人 グリーンシティ福岡」と、小浜温泉地域における温泉を初めとする地域資源を活かした持続可能な観光地域づくりを推進する「一般社団法人 小浜温泉エネルギー」の2団体になります。

 

 

 

 

第1回連絡会はキックオフということで、大まかな一年間の予定を作成いたします。これまでに関係者間でどれだけ話が進んでいるか、また今後課題になってくるのはどのよう点で、どう対応していくか、、、などなどを見極めた上で来年3月の目標となる状態を参加者で議論いたしました。

九州の案件は小浜温泉という観光地に絞った「点」と九州全体をぐるっと歩く九州自然歩道の「面」の活動とで対照的ですが、小浜温泉地域の近くも自然歩道が通っていたりと親和性もあります。お互いにとっていい刺激になるような取組になってくれると素晴らしいと思います。

 

 

この2団体のモデル事業を本年度実証していくにあたり、地方支援事務局であるEPO九州と全国支援事務局であるGEOCとで本年度サポートをしていきます。詳細についてはこちらをご覧ください。
→ /partnership#kyusyu

Kensuke Eguchi