公害資料館連携フォーラムin富山 Vol.5 ~フォーラム全体を振り返って~

こんにちは!

これまで4回に渡って「公害資料館連携フォーラムin富山」の報告を行ってまいりましたが、フォーラム全体を踏まえての個人的な気づきをまとめ代わりに書きたいと思います。

1.その地域らしさの可視化

ここでいう地域「らしさ」には、公害の歴史そのものに直接関わるものと、景観や文化といったより雰囲気に近いものの2種類があると思います。富山のフォーラムでは、前者として、全国の公害発生地域においても特筆すべき「企業との関係性」がフォーカスされました。後者では、エクスカーションで見た田んぼが象徴的であり、お話を聞く前はどこにでもある田んぼの風景だったのが、背景となるお話を聞くことでそれらが全く違って見えました。理解して見直してみることで、その地域でいかに稲作が身近で日常的においしいお米が食べられたかということが無言のうちに伝わります。

このネットワークが公害教育を全国規模で普遍化させていく取り組みである一方で、その公害がなぜその地域で起きたのか、なぜそこまで被害が拡大したのか、ということについては地域性が当然あると思います。公害問題を考える際に、やはり地域特有の文脈が見える「らしさ」があると、学びが増幅されると感じました。次にフォーラムが開催される地域でも、何かしらその地域らしさを出していくことが大切だと思います。

 

2.情報の相互蓄積

とある公害資料館に行けば、基本的にその公害についての資料のみしか置いていなかったのがこれまででした。しかし実際に何かを学んでいくプロセスでは、一つの事例を学びながら他の事例に関心を持ったり、相対的にいくつかを見ることでかえって理解が深まったりということがあると思います。例えば公害教育ひとくくりの中にも、行政責任の問われ方の違いや原因が大気か水(化学物質)かという違いなど無数の違いがあります。そのような他の公害の特徴や現状を見える化していきながら、ある程度共通するであろう社会の仕組みなどに対する普遍的な問題提起をしていくことが全国でつながる強みだと思います。

今回、ネットワークに参加する全国各地の資料館のパンフレット等が富山県立イ病資料館に集まり、その一部をGEOCでも配架しています。今後も公害資料館同士、もっと広がって社会教育施設同士が出している情報を相互に蓄積・発信していくことが重要だと思いました。お互いの関連性を提供し合うことで、利用者も次なる関心につながりやすく、資料館の中の方々にとっても他を知る良い機会になると思いました。

 

3.資料館を活用する機会の創出

私自身もこの業務に関わるまでは、公害に対する知識は小学5年の社会の授業で4大公害について習ったっきりであり、それまで公害資料館の存在を知ってはいても、行く機会がなかったのが正直なところです。それが、例えば今回のように広く「公害教育」という枠組みの中で、CSR、環境教育、展示やフィールドワークのあり方など派生する様々なテーマがあることで、そのテーマに関心のある多くの人も同じ資料館に集まりました。

資料館の活用が一通り「公害について学ぶ」の一回限りで終わってしまうとそれはもったいないと思うので、例えば地域の環境NPOなども一緒になって資料館を活用する機会を考えて生み出し行くことが継続されることで、地域に根付いていくのだと思います。潜在的に資料館の周辺で活動している方はたくさんいらっしゃると思いますので、そういった方たちが資料館を利用する機会を作れないか、そんなことを思いました。

最終日全体会の様子

最終日全体会の様子

 

長くなってしまいましたが、以上で「公害資料館連携フォーラムin富山」の報告を終わりたいと思います。お付き合いいただきましてありがとうございました。

kensuke eguchi