[国内事例117] 里山保全のワンストップサービス~ちば里山センター~


概要

昭和30年代以降、生活様式の変化や農業の機械化、農林業者の減少や高齢化などにより、手入れがされず放置される里山が増加していたことから、千葉県では平成15年に「千葉県里山の保全、整備及び活用の促進に関する条例(千葉県里山条例)」を制定した。この条例の実施にあたり、千葉県里山基本計画を策定し、里山活動団体が中心となって設立された団体「NPO法人ちば里山センター」及び市町村と連携して各種施策を実施している。今回は、ちば里山センターにスポットをあて、土地所有者、県民、企業、自治体など多様な人・組織が関わる里山保全のための協働について紹介する。

経緯

千葉県では、平成13(2001)年に就任した堂本知事が環境保全について熱心だったこともあり、里山条例をはじめとした、生物多様性保全などの施策が、他県に先駆けて取り組まれていた。(地方公共団体の制定例としては、埼玉県とともに全国2番目:【参考】生物多様性地域戦略の策定状況について(環境省)

背景として、「里山」は古くから人々の生活に深く関わる房総の原風景であったが、昭和30年代以降、千葉県内でも首都近郊を中心に都市開発が進み、農地や森林の住宅地や工業用地への転換が進んだ結果、里山が大きく減少したことにある。エネルギーが薪炭から化石燃料に変わったり、人と里山との関わりが薄れてきた結果、里山が放置されて荒廃し、廃棄物の不法投棄なども発生するようになった。

こうした状況を打開するために、長い間土地所有者のみに委ねられてきた里山の保全を、県民全体で役割分担しよう、という事で平成15年に里山条例が施行された。里山条例では、各ステークホルダーの役割を次のように定義している。

県民の役割

  • 里山の保全、整備および活用に係る活動について、関心を持ち、理解を深めるよう努めるとともに、その活動に協力するよう努めましょう。
  • 県が実施する里山に係る施策に協力するよう努めましょう。

土地所有者等の役割

  • 里山の保全、整備および活用が図られるよう努めましょう。

里山活動団体の役割

  • 里山への理解を深め、里山の保全、整備および活用に係る活動を積極的に行うよう努めましょう。
  • 県が実施する里山に係る施策に協力するよう努めましょう。

県の責務等

  • 「里山基本計画」を策定し、里山の保全、整備および活用についての施策を総合的・計画的に実施する。
  • 市町村と連携し、県民、里山活動団体及び土地所有者等が行う里山の保全に関わる活動の推進に必要な措置を講ずる。
  • 市町村が地域の実情に応じて実施する里山についての施策に協力する。
  • 施策についてインターネット等により、広く県民の意見を聴取する。
  • 県が行う公共事業の実施にあたっては、里山の保全に配慮する。
  • 県民への広報活動の充実、学習機会の提供その他必要な措置を行う。
  • 里山の保全、整備および活用方法についての調査研究を行う。
  • 施策を推進するため、必要な財政上の措置を行う。

これらの適正な役割分担の下に、県民全てがこれに関わるとともに、余暇や教育に係る活動の場等として里山の活用を進めることにより、人と里山との新たな関係を構築し、豊かな里山を次の世代に引き継ぐことを目的としている。

この千葉県里山条例の具体化を目指し、平成16年9月に18の団体が協力をして、NPO法人ちば里山センターが設立され、運営の中核を担っている。

 

運営方法

ちば里山センターちば里山センターでは、千葉県森林課と協働しながら、里山条例のコンセプトを具現化するために、「里山ワンストップサービス」の拠点として様々な取組を行っている。

■里山情報バンク

山林所有者は、かつては薪などを生産し、経済林としての価値を有していたことから山の手入れがなされていたが、薪利用の減少などにより経済的価値が減少し、手入れを行わなくなり、里山が荒れてしまった。「自分だけでは里山の手入れに手が回らないけれども、昔のようなきれいな山にしたい。」というニーズはある。

一方で、一般の市民が「里山活動を行いたいけれども、フィールドが見つからない」などの、声もある。そこで「里山を活用して欲しい土地所有者」と「里山活動をしたい人」とをマッチングする里山情報バンク制度を設けた。

ちば里山センターでは、これらのマッチングを行っている。また県の事業として、土地所有者と活動団体の契約とも言える「里山活動協定」を認定し、活動の安定化を図っている。

■里山サポートシッププログラム

CSR活動などで、地域貢献活動を実施する企業も少なくない。こうしたニーズを踏まえ、企業が里山の活動に参加しやすくなるようにコーディネートを行っている。企業から活動地に関する問い合わせがあれば、ニーズにあった場所の活動団体と調整を行い、三者による合意書を締結し、活動が円滑に進むように支援している。

■ちば里山カレッジ

里山保全の活動に関心のある未経験者を対象に、活動者の養成を目的とした「ちば里山カレッジ」を実施している。これまでに115名が参加し、70%以上が各地域の里山活動に参画している。年齢制限や資格の有無はなく、全8回の講座に参加して、里山保全活動の基礎的な技術や安全な作業方法などを学ぶ。当初は「ボランティア養成コース」のみであったが、平成26年度から「次世代リーダー養成コース」も開設し、後進の育成を行っている。

実施状況

グラフで見るちば里山センターの10年平成15年よりちば里山センターの活動が進められ、里山に関するワンストップサービス、里山人の育成、活動団体運営支援などを通じて、里山への理解を深め定着させるさまざまな活動を進めてきた。平成26年までの10年の活動をまとめたものが右図である。
1.正会員数の推移:3年目に50名を超え、現在では100名近くに増加。
2.里山協定締結件数の推移(累計):累計124件。
3.里山相談対応件数の推移:NPO法人化から急激に増加し、200件/年を越えている。
4.HPアクセス数の推移:年間1万数千件のコンスタントなアクセスが維持されている。
活動全般として、里山の総合的なワンストップサービスとして、極めて順調に活動が維持されており、県レベルの中間支援組織としての役割を果たしている。

 

「里山サポートシッププログラム」活動例
企業の社員研修の一環で、自然環境の整備・保全活動への取り組みを行う目的で、社員10名が参加し、地域の保全団体が受入を行っている。ノコギリで草や灌木を刈り取って運び出す作業などを行い、里山保全に貢献している。企業としては、CSRとしての地域貢献や社員の環境意識の向上などが図れ、地域の団体としても、保全作業を実施する上で、強力な助っ人となり、双方にとってメリットがある。

 

 

ポイント

クリックして拡大一口に里山の保全といっても、自治体の地理的特性により担当部署は多岐に渡る。例えば都市部に近い場所の緑は公園として扱われ、自治体の都市整備系の部署が担当となる(国で言えば国土交通省)。

また生物多様性の保全という観点に立脚すると、環境部署(国で言えば環境省)が主管となり、鶴など天然記念物に指定されているものの保護などになると教育委員会(国でいうと文部科学省)、水田や畑が核になる場合は農政部署(国で言うと農林水産省)など、何の施策により事業掌握するのかにより、地方自治体では担当部署が異なる。ちば里山センターの場合は、林業の部署が担当になっており、林業の振興という意味合いにおいて施策が行われている。

全国で里山の荒廃が進む中、こうした県民参加型の地域活動団体と連携した事業というのは、そう多くはない。林業推進であれ、生物多様性の維持促進であれ、市民参加のコーディネート組織の必要性は高く、行政が直接実施するなり、本事例のように行政が中間支援組織を支援する必要性が高いと思われ、今後の他地域への同様の展開が望まれる。

 

カテゴリ

■事業協力・事業協定

テーマ

■生物多様性・自然保護 ■ソーシャルビジネス・CSR

関係者(主体とパートナー)

■参考資料

 

取材:伊藤博隆(関東地方環境パートナーシップオフィス)
2016年2月