[国内事例100] 「公・民・学」の協働でゼロからスマートシティを創出する(柏の葉キャンパス)


概要

2006年11月20日、千葉県柏市北部「柏の葉地域」における公民学が連携したまちづくりの拠点となる、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK:Urban Design Center Kashiwa-no-ha)が、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅前に開設された。
これは、鉄道開業に伴って出来る新しい街を、公(柏市)、民(地域団体、企業など)、学(東京大学、千葉大学)が連携して作るという、日本で最初のアーバンデザインセンターだ。まちづくりの核となるのがUCDKで、プランの段階から、多様なステークホルダーが資源を持ち寄り、様々な取り組みを実践している。
大規模なスマートグリッドなど、ハード面で注目される事が多い柏の葉だが、コミュニティ形成という点でも先進的であり、今回はこの点に着目してレポートする。

経緯

そもそもこの場所は、第二次大戦中には飛行場が設けられ、戦後はアメリカ空軍通信基地(昭和54年に接収解除。後に東京大学、千葉大学)とゴルフ場(平成13年まで)となった。その後、常磐新線として「つくばエクスプレス」が通る事となり、区画整理を行い2005(平成17)年に「柏の葉キャンパス」駅(終点の秋葉原まで約30分)が開業した。そうした経緯から、近代以降この土地周辺に一般市民が住んでいたことはなく、鉄道開通を機に新たな街が出来ることになった。
多くの街は、その歴史の積み上げの上に、様々な機能や人のネットワークが蓄積されるものだが、この新しい街にはそれがない。街を有機的に発展させるには、核になるものが必要だった。その契機になったのは、2006年4月に柏市が主催した「大学と地域の連携交流会」で、やはり核が必要だと考えていた、故・北沢猛東京大学教授(当時)がアーバンデザインセンターを提唱した。北沢氏は、横浜市役所都市デザイン室で20年にわたって第一線で都市づくりに関わった経験を持つ。こうして、公・民・学の協働による、体制の基礎が出来上がった。一般的な都市開発では、行政主導でマスタープランなどを作る場合が多いが、開発主体である三井不動産が明治期の頃よりこの地に関わりを持っており、かつて存在したゴルフ場も、三井不動産が経営していた。こうした経緯から、公共を行政主体で実施するのではなく、むしろ民間企業が公共の要を担いながら様々なセクターを巻き込む、新しい形の地域づくりが行われることとなった。

組織構成

UDCKは「公・民・学」が連携して、まちづくりを進めていくための「場所」「環境」をつくることが目的であり、以下のセクターにより構成されている。

  • 公 : 柏市
  • 民 : 柏商工会議所、田中地域ふるさと協議会、三井不動産、首都圏新都市鉄道
  • 学 : 東京大学、千葉大学

これら7つの「構成団体」により、法人格を取得しない任意の団体を形成し、各構成団体から1名または2名が参加して「運営委員会」を設置し、基本的な事項の決議を行っている。センター長は、初代の故・北澤猛氏から東京大学大学院新領域創成科学研究科の教授が引き継いでいる。

構成団体のほか、千葉県などの自治体と、NPOやコンサルタント会社が専門家集団として「協力団体」に位置付けられている。UDCKの現場は、構成団体と協力団体からなる「運営機構」が担っており、関係主体間の連携・調整を図っている。運営機構のスタッフのうち、副センター長1名とディレクター5名は常勤で、UDCKの運営に係わる実務を中心的に担っている。

実施状況

UCDKでは、まちづくりのための様々な取り組みを実施している。

学習プログラム
├UDCKまちづくりスクール
├千葉大学 柏の葉カレッジリンク・プログラム
├都市環境デザインスタジオ
├五感の学校
├パンゲア
└柏の葉エコ・デザインツアー
研究活動
├都市構造とモビリティデザイン研究
├人口分析・高齢社会まちづくり研究
├コミュニティグリッド研究
├アーバンデザインセンター研究
└環境都市研究
社会実験・事業創出
├小さな公共空間 PLS
├公衆電源サービス
├いろんな乗り物”街乗り!”シェアリング
├かしわスマートサイクル
├柏ITS推進協議会
├かしわ街エコ推進協議会
├アジア・アントレプレナーシップ・アワード
├TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)
└フューチャーデザインセンター(FDC)
デザインマネジメント
├デザインマネジメント方策の研究
├公共空間のデザイン協議
├景観まちづくりイベント
└農あるまちづくり
コミュニティ・市民活動
├柏の葉キャンパス駅前まちづくり協議会
├柏の葉コミュニティホウソウ局
├かし*はなプロジェクト
まちのクラブ活動
 ●クラブ活動
  ├KFVはじめての、土いじり
  ├セグウェイクラブ
  ├キッズ英会話クラブ「えいごカフェ柏の葉」
  ├柏の葉はちみつクラブ
  ├柏葉メンズクラブ
   ・・・全24クラブ
 ●プロジェクト
  ├LEAF
  ├まちのモニタープログラム
  ├アーティストカフェ
  ├ベビママ応援プロジェクト
  ├マチノ先生プロジェクト
  ├マチビト・オン・ステージ
  ├事務局主催イベント
  ├季節のお楽しみイベント
  └柏の葉赤ちょうちんプロジェクト
└マルシェコロール
学生プロジェクト
└柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)

上記のように、膨大な数のプロジェクトが実施されているが、ハード系の専門家対象のものから、新たに街に暮らしはじめた住民のための活動まで、対象・目的がそれぞれ異なる。全ては紹介しきれないので、市民向けの環境活動に絞って紹介する。

かし*はなプロジェクト かし*はなプロジェクト

柏の葉キャンパス駅西口ロータリーに花や緑をたくさん植えて、みんなで街を美しく彩るプロジェクト。水やりや、植え替えなどの作業を、住民参加で実施している。車いすの方でも園芸を楽しむことができる「レイズドベット」(協力:千葉大学)や、食べられる野菜を育てるガーデンなどで、ユニークな景観づくりが展開されているコミュニティ・ガーデンだ。毎週水・土の朝に活動しており、水やりに参加した人は、ハーブや野菜、イチゴなどを自由に持ち帰ることができる。
新たに引っ越ししてきた街で仲間をつくるには、「きっかけ」が必要だ。植物は定期的な手入れが欠かせないことから、こうした活動への参加をきっかけに、自然と顔見知りができる。かし*はなプロジェクトの事務局を担当する藤崎氏(UDCK協力団体:藤崎事務所)は、「活動を始めてから5年が経過しました。ボランティアで公共の場の景観美化に努めるというのではなく、街のコモンスペースを自分の庭としてガーデニングを楽しむ、という視点でスタートしました。とはいえ、夏場は毎日水やりが必要で、楽しいことばかりではありません。やはりメンバーの街に対する想いがあるから成り立っているのだと思います。こうした活動を継続するためには、資金的な面も課題で、公助・共助の視点から地域事業者や公共からの支援を、いかに得るかということも大切なポイントだと思います」と話す。

ポイント

協力団体の一員である、(特活)NPO支援センターちば事務局長の永田悦子さんにお話しを伺った。NPO支援センターちばは、UDCK立ち上げ当初から地域のコミュニティづくりを現場で支えるために参画している。「柏の葉キャンパスシティでは、住民の殆どが他から引っ越して出来た街。既存の都市にはあるような、小学校、交番、郵便局、民生委員、保健師など、様々な機能や人材が皆無だった。だからこそ、UDCKのようなもので、無から有を形作っていく意義があった。」
古い街では、元からの住民と新規住民の間で、何らかの“しがらみ”があるものだが、この街ではほぼ全員が新規住民であるため、基礎となる地盤がない代わりに阻害要因となるしがらみも無い。スマートグリッドというハード、UDCKというソフトがセットとなり「スマートシティ」という未来を先取りした暮らしの壮大な社会実験とも言える。この場所の特筆される点としては、“年度限りのモデル事業”となりがちなスマートシティに、実際に不動産を購入した住民が住み、リアルな生活の中で未来の暮らしを実現している点だ。
街に人が住み始めて5年以上が経過し、これまでの様々な取り組みが新たな活動の種になってきている。例えば街のクラブ活動でも、UDCKが仕掛けるのではなく、住民から新たなクラブ活動の発起提案があるなど、地域の自立的な動きも出てきた。そうした意味では、「立ち上げ期」から「自律成長期」の段階に移ってきていると言える。駅前のショッピングモールや、マンションの開発主体である、三井不動産をはじめとした三井グループも、これまでUDCKの活動を様々な形で推進してきたが、今後は住民の輪がどれだけ自律的に広がっていくのか、展開を見守っていきたい。

 

環境分野

■エネルギー ■まちづくり ■ライフスタイル

協働方法

■事業協力・事業協定

関係者(主体とパートナー)

柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK:Urban Design Center Kashiwa-no-ha)

構成団体

協力団体

英語サイト

http://www.geoc.jp/english/what/case-studies/1226.html

取材:伊藤博隆(関東地方環境パートナーシップオフィス)

2014年2月