[海外事例24] 持続可能な未来をつくるための、金融機関の賢い選択 – BankWiser 2013年10月31日

多くの人が日々利用する金融機関。みなさんはどのような基準で選んでいますか?
ATMが近くにあるから、高利子だから…?なかには「環境や社会に配慮して、金融機関を選びたいのだけれど、どうやって選んでいいか分らない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。今、ヨーロッパを中心に広がっている『賢く金融機関を選択できるしくみ「BankWiser(バンクワイザー)」』をご紹介します。

金融機関評価サイト「BankWiser」とは?

自分の社会課題に対する関心に合致した投融資基準を有する銀行を見つけ出すことのできるしくみです。
金融機関の利用者は、Bankwiserのウェブサイトから興味のある問題のテーマ(気候変動、人権問題など)と、投資したい産業や企業(林業、農業、製造業など)といった項目を選ぶと、BankWiserの基準から割り出した最適な預金先を見つけることができ、さらにその場で預金をすることもできます。
2009年1月からの3年間でウェブサイトの訪問者は25万人を超えました。そのうち、10パーセント以上の2万人以上が、Bankwiserを使って口座を他の銀行に移し換えました。
一方の、金融機関は利用者数を確保し続けるためには、環境問題や社会課題に配慮した投融資の方針に改善・最適化する努力が必要となってきます。Bankwiserが最初に始まったオランダでは、4年間に15銀行が新たに105以上のCSR方針を採択し、ほぼ全ての銀行がグリーンエネルギーへの投資を向上させ、兵器や武器取引への投資状況も改善しました。また、児童労働や人権、福祉等に関する投資でも成果を上げています。

http://www.eerlijkebankwijzer.nl/ より)

Bankwiserの始まりと、国際的な広がり

Bankwiserは、2009年にオランダ国内のNGOオックスファムオランダ、アムネスティーインターナショナルオランダなどが中心となり取り組みが始まりました。オランダ以外の国々でも取り組みを行う団体を募っており、2012年時点で、ドイツ、スウェーデン、アメリカ等の欧米をはじめ、インドや中国等のアジア、ブラジル等の新興国が参加しています。日本では、「エコ貯金」の取り組みを行ってきた国際青年環境NGO A SEED JAPANなどが連携を模索しています。
これらのNGOは、Bankwiserの仕組みを整えるだけでなく、利用者とNGOが一緒になって金融機関に政策提言を行などして、利用者の声がより反映されやすくなるよう活動を行っています。

なぜ金融機関を選ぶことが重要なのか?

では、なぜ私たちが預ける金融機関を選ぶことが重要なのでしょうか。
私たちが銀行や郵便局などの金融機関に預けたお金は、企業や政府などに貸し出しています。金融機関は独自に投融資基準を有していますが、環境などの社会的な投融資基準が十分でない場合、例えば原生林の違法伐採に加担している企業、兵器を製造する企業、人権侵害を起こしている企業等に融資していることがあります。つまり銀行にお金を預けることで、自分は望んでいなくとも間接的にこれらの企業を支えている可能性があります。
一方でリサイクル、自然エネルギー、福祉、自然保護など環境や社会に配慮した事業を優先して融資をしている金融機関も存在します。より多くの人がこのような投融資を行う金融機関を利用するようになると、金融機関も他機関との競争・差別化のためさらに積極的にその分野での投融資を増加させていきます。一人、一人が、社会のどのような企業や事業を応援したいのかを考え、お金の預け先を選ぶことで、環境・社会にやさしいお金の流れを作ることができるのです。

Bankwiserの優れた特徴

なぜBankwiserが広まったのでしょうか。その優れた特徴を紹介します。
まずBankwiserの利用者が自分の関心に合った金融機関を見つけるまでの仕組みを少し詳しく紹介します。ウェブサイトでは利用者は、例えば環境問題、人権問題など、特に解決したい課題を選択します。次に、投資する産業や企業を選びます。林業、農業、製造業、石油・ガス産業、漁業など、幅広い産業が紹介されています。この2つを選択すると、金融機関の得点を付けて表示されます。BankWiserが設定した評価基準に沿って得点づけされており、得点が高いほど利用者の関心に近い投融資を行なっている銀行であることを示しています。サイトでは、最高得点を得た銀行の口座開設ページへ利用者を誘導し、すぐ預金を開始することができます。
驚くのは、評価基準の更新回数です。BankWiserは問題ごとのテーマと産業分野、評価基準を100回以上更新しており、時事問題に対応し評価基準を多様化することで、市民の目線に立った金融機関の評価を行なっているのです。

パートナーシップのポイント

Bankwiserが広まった理由の一つは、利用者と銀行の双方にとってメリットがあるしくみだからです。利用者にとっては、手軽に持続可能な社会を目指した方針・活動の策定に参加しやすくなります。金融機関にとっては、投融資の基準・方針の策定を改善させる材料になり、またそうすることで利用者の拡大が見込めます。
BankWiserは、利用者と金融機関が連携して、社会・環境問題を解決に導き、持続可能なお金の流れを創ることを促進しているのです。

カテゴリ

多様なアクターによる協働活動

テーマ

持続可能な金融

主体

Bankwiser(さまざまなNGOの連携した取り組み)

パートナー

NGO、金融機関

参考サイト

http://www.eerlijkebankwijzer.nl/english/