[海外事例23] 気候変動に立ち向かう 世界の若者のネットワーク UNFCCC YOUNGO 2013年10月31日

気候変動に立ち向かう若者たちのネットワークが急拡大しています。2009年のUNFCCC COP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議、コペンハーゲン、デンマーク)に参加した若者は約100ヶ国から1,000人以上に上りました。世界各国から集まった若者たちの多くは連携し、将来世代の声を伝えるキャンペーンを行っています。会合でも若者の発言時間も設けられています。
2009年にUNFCCCに新設された若者の参加枠「YOUNGO(YOUTH NGO)」。若者たちが数年をかけて自発的にネットワークを作り上げ、実現したものなのです。

ネットワークの発展

彼らはどのようにネットワークを作ったのでしょうか。
1980年代後半から先進国を中心に学生や若者の環境グループや環境問題を研究する学生のグループができ始めましたが、国を超えたネットワークはほとんどありませんでした。1997年の京都議定書が採択されたCOP3(京都)を機に、日本や欧米のグループを中心にFAXや国際電話などで連絡を取り合い、キャンペーンを行いました。しかしCOPが終わってからネットワークが継続・拡大するには至りませんでした。きっかけとなったのは2005年、COP11(モントリオール、カナダ)が開催されるのに合わせて、北米の若者たちを中心にE-mailやメッセンジャーなどで連絡を取り合いCOY(Conference of Youth、ユース会議)を開催しました。以降、毎年、若者たちが自発的にCOYを開催しています。それに加え、気候変動に関する国際会合に参加している若者、各国の学生環境グループ、若手研究者、若手活動家などが、関心のある若者であればだれでも参加できるプラットフォームを形成しました。アフリカ、アジア、ヨーロッパ、南米など、COPが開催された地域を中心に参加者が増え続け、ネットワークが拡大していきました。

 

UNFCCC 条約事務局との取り決め

若者たちは組織運営のルールやコーディネーター(focal point)の選出の手順などを定めるなど自治の仕組みを整え、UNFCCCの事務局に対し、公式に若者参加枠を設けるように要請しました。UNFCCC側も、気候変動が将来世代に与える影響の深刻さが増す中、若者たちの効果的な参加方法や声を反映する仕組みを検討していたところでした。協議の末、UNFCCC事務局と若者のネットワークの間で取り決めが交わされ、COP15からは「YOUNGO」として正式にスタートしたのです。
注)YOUNGO発足までも、会議の場で若者が発言することはありましたが、「NGO」の参加枠の中で、若い人に発言の機会が割り当てられたという位置づけでした。 

活動内容

若者ならではのユニークな活動
彼らのキャンペーンはとてもユニークです。
少しご紹介すると…
『2050年あなたは何歳ですか?(How old are you in 2050)?』と書いたT-shirtsを多くの若者が着てCOPの準備会合に参加しました。各国の交渉官に短期的国益だけでなく、子ども・若者たちの未来を背負っているという自覚のもと交渉を行ってほしいというメッセージを会場で伝えたのでした。
また、『生き残り作戦(Project Survival)』というユニークなキャンペーンでは、特に島嶼国の政府代表と共に活動を行いました。島嶼国では異常気象、海水面の上昇による移住・移民を余儀なくされるかもしれず、気候変動交渉に将来がかかっているという若者の立場と一致します。そんな島嶼国の交渉を応援したいと、島嶼国の政府代表団(交渉担当者)を手伝うため、世界中の若者たちがコピー取り、資料作成を準備などに汗を流しました。

 

パートナーシップのポイント

ITを駆使
彼らは、最新のITシステムを駆使して、活動を行っています。Wiki、スカイプなどで会合や情報共有を行い、情報や意思決定に偏りがないように努めています。キャンペーンは、online署名、Facebook、Youtube、Twitter、などで、最新のソーシャルメディアを巧みに利用し、実際にCOPなどの会合に行っていない若者も多く巻き込みながら活動をしています。

団結力
気候変動の国際交渉は、各国の国益・利害が入り込む国連で一番難航している交渉といっても過言ではないでしょう。国際交渉が決裂する一方で、若者グループには非常につよい団結力があります。将来本当に影響を受ける世代であり、気候変動を止めたいという思いで一致しているからです。援助資金などしがらみもなく、どの国の若者であれ対等であることも団結力の秘訣でしょう。

 

若いころから、国の垣根を越えてネットワークし、社会を変えようとする若者たち。
若者グループを卒業しても、その経験はきっと糧になることでしょう。
さらに広がり、活発に活動をしていくことを、期待したいと思います。

カテゴリ

ネットワーク

テーマ

気候変動
若者

主体

YOUNGO

パートナー

UNFCCC事務局
各国の若者の環境グループ

参照サイト

http://unfccc.int/cc_inet/cc_inet/youth_portal/items/6795.php

http://youthclimate.org/about_youth_climate/youngo-unfccc/

執筆:北橋みどり(地球環境パートナーシッププラザ)
2013年