[海外事例22] アマゾンを守る 異色のコラボレーション 2013年10月8日

日本からはちょうど地球の反対側にあたるアマゾン。その森や動物、そこに住む人びとの暮らしを守る活動を行うために、ジャンルも年齢も違う2つの団体がコラボレーションをしています。地域で地道な自然環境保護を行っているNPO法人 野生生物を調査研究する会と、ミュージシャンを志す若者の団体のNPO法人Session with Earth。活動ジャンル、世代の異なる2つの団体がどのような連携を行っているのでしょうか。両NPOの代表者、野生生物を調査研究する会代表理事の黒田明彦さん、Session with Earth 都谷亨さんにお話しを伺いました。

アマゾンの森に関する両者の認識と課題

野生生物を調査研究する会は、20年ほど前から兵庫県川西市付近を中心に自然保護、生態系調査、教員養成などを行っている団体です。メンバーは団塊世代の男性を中心に約20人。10年ほど前、たまたまアマゾン川流域、日本人入植者の町としても知られるトメアスを視察に行き、そこの人びとの生活やアマゾンの森林破壊の現状を目にしたことがきっかけで、2003年にこれまで経験のなかった国際協力事業を行うようになりました。JICAの協力のもと、現地で自然学校を開設し、そのインストラクターを養成する活動を行い、その後現地のアグロフォレストリーの支援を行い始めました。 一方のSession with Earth。ミュージシャンや楽器制作などを目指してる、大半が平成生まれの若者たちは、アマゾンの森とミュージシャンの関係を知りました。ギターなど楽器の素材として欠かせない木材であるマホガニーは、原産地であるアマゾン川流域等で乱伐が進み、絶滅が危惧されています。2002年には、ワシントン条約に指定され取引が禁止されましたが、それでも安い価格で出回っており、多くが違法伐採とみられます。環境活動はこれまで行ったことはありませんでしたが、ミュージシャンとしてアマゾンの森林保護に貢献できないか、模索を行っていました。

 

きっかけは…

野生生物を調査研究する会は、現地で活動を始めて数年が経ち、課題にぶつかっていました。バナナは1年目から収穫でき食糧となり、コショウやカカオは3年目後から収穫でき現金収入になるので現地では普及が進みました。しかし、もともとの生態系を維持するためには食糧となる樹木以外も必要です。住民がそれらを植樹・保全したいと思う仕組みや動機づけが必要でした。さらにマホガニーとなると4-50年もかかってやっと楽器として販売できると言われており、打開策を考えていたところでした。 一方、Session with Earth は2010年には団体を設立し、ミュージックイベントで寄付を集めアマゾンの森林保護を行う団体に寄付をする仕組みを整えました。さあ、出発という段階になって寄付先として予定していた団体がアマゾンでの活動を中止したという事態に直面。そこで知り合いの環境カウンセラーに相談し、紹介してもらったのが、野生生物を調査研究する会でした。  こうして、野生生物を調査研究する会が行うアグロフォレストリーと一緒に、Session with Earthがミュージック活動などで得た寄附をマホガニーの植樹に充てるという仕組みが出来上がりました。両者は、日本での共同展示などの意識啓発の活動も行っています。 野生生物を調査研究する会が現地で開催する「アグロフォレストリーのセミナー」は、年々参加者が増え、現在は200名を超える参加者があります。最初に開催された村の人が成功体験として語る立場になるなど、広がりも見せています。マホガニーの植樹も年々増加しています。現地の人々の食生活が改善し、生態系も少しずつではありますが改善しつつあります。

連携のポイント

団塊世代と若者の連携は難しそうに思いましたが、意外にも「課題は全然ない」とのこと。野生生物を調査研究する会の黒田さんは、若者の団体との連携で、「むしろ、気づかされる、見習わないといけないと思うことが多かった」と語っています。
ポイントはこんなところにあるようです。・自団体の得意・不得意をしっかり認識。 現地での人材育成や生態系・農業に関しては専門家を擁する野生生物を調査研究する会。意識啓発、チャリティーなどに関してはSession with Earth。と、しっかり専門性を認識して活動をしていて、それを侵さないようにしているとのこと。Session with Earthの都谷さんは、「調査研究する会のみなさんが頭(知識・現場での事業)、僕たち若者が足(広報、啓発活動)となり、一体となっているイメージを持っている」と話しています。一般的に、似通った活動をしている団体をパートナーとして選びがちですが、強み・弱みをしっかり認識し、活動を補ってくれる違う分野・ジャンルの団体との連携というのも良いかもしれません。
・謙虚さ インタビューの中で、両者から共通して感じられたのが「謙虚さ」です。野生生物を調査研究する会は「森林やそこに住む人々が守られれば、自分たちの団体自体は目立たなくていい」というスタンス。Session with Earthでは、あくまでも現場での活動主体は野生生物を調査研究する会にあるということを認識し、例えば新人スタッフはそのような立場が分かってから、合同のミーティングに参加するようにしているとのことでした。

Session with Earthは野生生物を調査研究する会の支援地域のアグロフォレストリー栽培されたコーヒー豆やアマゾンフルーツを使った音楽ライブカフェを開催し、チャリティーからビジネスとしての活動に切りかえて、アマゾンを守り続けたいと夢を語ってくれました。
両者の素敵な連携が更に進み、志ある若者たちの素敵なミュージックを聞きながら、現地の人や生きものに優しいアグロフォレストリーでできたドリンクを飲む日が来るのを心待ちにしたいと思います。

 

 

 

 

取材:北橋みどり(地球環境パートナーシッププラザ)
2013年