[海外事例21] ESDを進める多重層のパートナーシップ – Regional Centres of Expertise on Education for Sustainable Development (RCE) 2013年10月4日

来年最終年を迎える国連「持続可能な開発のための教育(ESD)のための10年」。振り返ってみると、2005年の10年のスタートからこれまで大きな進展がありました。教育現場、行政、NPOなどによる個々の取り組みが実を結んだ結果ではありますが、それぞれが連携する仕組みが土台となりそれを支えていました。
RCE (Regional Centres of Expertise on Education for Sustainable Development, ESDに関する地域拠点)は、持続可能な社会を構築するための学びや人づくりを推進するネットワークを地域レベルで形成する取組みです。その役割をパートナーシップの観点からご紹介します。

RCEとは

ESDの10年の目標である「持続可能な開発に向けたグローバルな学習の場の構築」を地域レベルで実現するための手段として、国連大学が2005年にRCEの創設を提唱し、日本政府のサポートのもと始まりました。RCEは持続可能な開発というグローバルアジェンダをローカルなアクション(地域レベルでの実践・行動)に具体化する方策の一つとして位置付けることができます。当初7拠点からスタートしたこの取り組みは、年々増加し2013年8月現在117拠点となりました。日本では、仙台広域圏、横浜、中部、兵庫・神戸、岡山、北九州の6地域が認定されています。

地域に根ざしたマルチステイクホルダーからなる個々のRCEは、大陸別およびグローバルなネットーワークを形成する一方、生物多様性、気候変動、持続可能な消費と生産、ユースとESDといったテーマ別のネットワークを通じて、地理的境界を超えた研究開発と能力開発の場を提供しています。

地域のマルチステイクホルダー・ネットワーク

地域拠点では、教育機関でも初等教育から高等教育まで、また教育機関や研究者以外にも自治体、政府、企業、文化施設(博物館、美術館)、NGO、若者、先住民などと多様なセクターが連携しています。地域の知識ベースの構築、ESDの質の向上、ESDの推進、取組を担う人材の育成などを目指しています。ESD推進のためには、マルチステイクホルダーの連携はあたりまえだと思われるかもしれませんが、RCEの仕組みができるまでは現場ではマルチステイクホルダーどころか学校間など同じセクター内でも連携が少なく、課題や取組の共有がままならないというところも多かったようです。ネットワークをつくり、対等な関係で話し合う場があることで、目標に向けて一緒に取り組めるのです。

大陸別ネットワーク

個々のRCEは、地理的・社会的特徴やかかえる課題を共有する近隣の国々や地域と連携して、北米・中南米、ヨーロッパ、中東・アフリカ、アジア太平洋地域といった大陸ごとのネットワークを形成しています。大陸別の地域会合を開催し情報交換を行ったり、共同での資金調達を行う地域もあります。そうすることで、地域によって似たような課題や制度に対して、アプローチの仕方やヒントを得ることができるのです。例えばアフリカ諸国では、政府の担当者同士で環境教育を促進するための法整備に関しても情報交換が行われ、後に法整備につながった国もあるとのことです。

グローバルなネットワーク

117の地域拠点を擁するグローバルネットワーク。年に1回グローバル会議を開催するほか、日常的にもポータルなどで事例共有が行われています。グローバル会議では、大陸別、テーマ別に重要課題を議論するほか、RCEのガバナンスやRCE間の連携、研究開発など戦略面に関する議論や資金調達やコミュニケーションに関するRCEの運営に関する議論が行われます。

テーマ別ネットワーク

RCEネットワークの強みは、社会のなかで普段は協力しあうことのない様々な地域グループが、サステナビリティ(持続可能性)という共通の課題によってひとつになり、よりよい状況に向かって創造的に活動することにあります。テーマ別課題としては気候変動、伝統知と生物多様性、持続可能な消費と生産、災害リスク削減と防災教育、ユースとESDなど多岐にわたります。地域で活躍するRCE は、テーマ別ネットワークとしてグローバルにつながり、ESD推進に向け国連機関の連携や国際協力にも貢献しています。

ここまで多重層からなるネットワークをご紹介しました。
さらに、運営方針の中にも、パートナーシップ形成のヒントがありそうですので、2点ご紹介いたします。

多様性を重視する

今でこそ社会や職場の中で「多様性(ダイバーシティー)」の必要性が認識されてきましたが、RCEはその設立当初から多様性を重視していました。多様な主体の参加の参加はもちろん、国や地域のニーズに合った形で具体化できるよう、国や地域によって異なるプログラムや、進捗度合などを受け入れ、それをも糧に発展してきました。

それぞれのリソースを活用

グローバルに広がるプログラムではありますが、事務局を担うグローバルRCEサービスセンターの職員はたった10名。それでも運営を可能にしている要因の一つが能力開発とリソースを活用させていくという方針です。何か新しいことを生み出していくことも大切ですが、限られたリソースの中でもESDを推進するためにメンバーの中にあるモチベーション、ノウハウ、ネットワークなどを十分に活用していくことを重視し、活動を行っているのです。

どちらも簡単そうに聞こえますが、パートナーシップが確立し、関係者同士の信頼関係ができているからこそ実現できる方針です

 

取材:北橋みどり(地球環境パートナーシッププラザ)
2013年