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持続可能な開発セミナー第2回「地球環境問題各論勉強会」:地球温暖化と森林問題 議事録3 2012年1月14日

GEOC連続セミナー

「持続可能な開発」セミナー第2回
「地球環境問題各論勉強会」:地球温暖化と森林問題


■地球温暖化編-質疑応答

【質疑応答】

●京都議定書について

【会場】京都議定書のペナルティについて教えてください。

【福島】議定書の排出削減義務は先進国中心。「1990年から比較して何パーセント削減する」という遵守に関して法律的拘束力はありますが、守られなかった場合の罰則義務については詰めきれていません。遵守できなかった場合には、次の約束期間でその部分を上乗せするということも盛り込まれていますが、法的拘束力を持たせた罰則をつくるかどうかは、議定書発行後の議論になります。

●原子力発電について

【会場】国際協力の観点から中国の原発抑止に向けて日本も協力すべきではないでしょうか。

【平田】中国の問題は、一国の問題ではなく世界の問題。中国は温室効果ガスを量として減らすという京都議定書には参加してくれそうもありません。GDPの伸びに対して減らすということには参加するでしょう。経済産業省の審議会で、地球の環境はもたないのでは?という疑問を向けると、技術が解決すると考えているとのことでした。アメリカも似たような考えです。有識者・市民レベルで、排出量を減らさなければいけないという方向に仕向けていく、ありとあらゆる努力が必要です。日本は省エネ大国。GDPあたりの排出量削減でいいじゃないかという議論もありますが、世界全体がそうなると量自体はいつになっても減りません。

【福島】中国は大きい要素。これまでは共産党的対応でしたが、最近は重要な人物が国際会議の場に出てきて意味のあることを言っています。「共通だが差異のある責任」ということで、第一歩としてできることをいろいろなステップで柔軟に考えるべきです。京都議定書のようなスタイルが途上国にとって有効なのかということも含めた議論の必要があるでしょう。

【会場】日本の国際競争力を維持することと原子力問題の関係についてはどうですか。

【平田】原子力については、日本のエネルギーの36%を占め、今すぐ止めることはできないと思います。停止するとエネルギーの安定供給の意味でも温暖化対策でもこけてしまうので、不安定な電力源であると考えています。地域分散型エネルギーに変えていくことが必要です。現実的な対応としては、寿命が来たら停止し、2030年あたりを目処に脱原発を図るというシナリオで考えています。当面は原子力の稼働率を下げる、石炭の使用を減らし天然ガスを増やすということで、議定書レベルのCO2排出削減は対応できます。

【会場】外交政策の中で原発はどのように議論されているのでしょうか。

【福島】原子力はひとつの要素。活用する度合いは各国の国内政策なので、足並みを揃えるということはありません。

【会場】原発は最適と行政も言うが、狭い地域で見れば恩恵を受けている場合もあるだろうが果たしてそれでいいのでしょうか。大気には国境がありません。ウラン鉱石採掘・輸送・生成には大量石油を消費しCO2を出しているはずです。

【平田】原発については政府にぶつけていただきたい。CO2を運転時に出さないことだけに注目しているのは問題という点で同感です。

●炭素税と税制改革について

【会場】日本の国税の種類は何種類あるかご存知ですか? 48種類です。平田さんは炭素税を推進されていますが、なぜ民間でそのようなことをおっしゃるのか。環境税ということを推奨する団体もありますが、今の税金のほかの部分を減らすという発想が必要ではないでしょうか。

【平田】エネルギー税制改革とセットで炭素税導入を提案しています。税収中立の炭素税として言っています。社会保障費の削減を提案しています。詳しくは気候ネットで発行した『地球温暖化対策と排出量取引制度』という政策研究レポートをご覧になってください。

【会場】炭素税について、火力発電を石炭か天然発電にシフトするのは現実的に難しいので、係数の高いフロン税が有効なのでは?

【平田】フロンは少量でも大きな効果があります。フロン税と炭素税を分けずに炭素税と同じ換算にすればすっきりします。フロンを作るメーカー4社だけが困るのであり、ほかの企業はそうではない手段に移っていく。使う用途がはっきりしているし、限られているので、このような経済的な誘導という意味では有効だと思います。重要な着眼点なので炭素税と同様実行できるよう頑張りたいです。

●炭素税導入について

【会場】炭素税・環境税の導入に賛成です。経団連が反対しているが、市民として経団連に対抗するような施策を考えたい。1社ずつ説得する必要があるように思います。米国アースポリシー研究所のレスター・ブラウンも企業の社会的責任(CSR)として、炭素税導入を呼びかけるべきだと言っていました。今企業はCSRという言葉に弱いですから。

【平田】個々の企業と話すと「やらなきゃいけないね」と言うのに、政策の議論になると経団連が立ちはだかってきます。炭素税賛成と言うのは企業にとって勇気のいることで、現在そう言っているのは自然エネルギー関係の一社だけです。ほかに勇気のありそうな企業・担当者があればコンタクトを取りたいので教えていただきたい。

【EPO/GEOC】PRTRは有害化学物質ですから、温室効果ガスは対象にならないのではないでしょうか。

【平田】PRTR法にはモントリオール議定書のフロンは入っていますが、京都議定書の代替フロンとCO2は二重になるということで入っていません。今のところ、それを元に温暖化対策をすることはできません。排出量取引の導入については、今は実験レベル。排出量の情報の把握と公表は必要。PRTR法のように企業の排出量を把握して公開する仕組みは重要です。でないと、体重計のないダイエットみたいですから。これは今年の温暖化大綱の見直しの大きな争点になっています。少なくとも情報の把握と公表は制度として位置付けるべき。温暖化対策推進法・PRTR法と、いろいろな方法があると思います。経済産業省・企業が企業秘密ということで反対していますから、この壁を乗り越えられるかが今年の争点です。


■森林問題-質疑応答

●ブリティッシュ・コロンビアでの取り組みについて

【会場】インターフォー社の具体的な違法の内容を教えてください。

【尾崎】インターフォー社は、州政府の伐採権という意味では合法の下に行っていましたが、先住民族が住み続けられないような大規模な斜面の伐採方法を取りました。社会的に支持できない開発であり、地域の人々が州政府に対してやめてほしいという提言をしていたが無視されていたのが問題です。市場からの声がないと変わらないと判断し、国際的なキャンペーン活動を行ったわけです。

●国内の林業や支援について

【会場】途上国を支援するという国際取り決めが、日本の林業にどういう寄与をするのでしょうか。彼らが何を望んでいるか、持続可能にするにはどういう伐採にすべきかをきちんと調査した上で支援すべきだと思うのですが。もし日本へもいい効果をもたらさない取り組みなら、行うべきではないと思う。林野庁ではどのように考えていますか。

【今泉】なぜ国際協力をやっているのかについては、まず資源を輸入し発展してきた先進国としての責任があります。利益の一部を国際社会に還元するという責務があり、経済的利益だけでなく、国際的に政治的な部分でもリーダーシップを果たす責務があると考えます。2つ目には、日本にとっての直接的な恩恵はすぐには見えにくいかもしれないが、国際的なステータスが上がるという一面はある。もう1つは、何世紀にもわたって培った自分たちの森林技術を熱帯林に応用するためです。将来的には、世界の森林が適切に管理されれば、国際的に取引される木材に管理コストが上乗せされ、環境ダンピング的な木材市場がなくなって、輸入される木材が安いために国内の森林が苦境に立つということはなくなっていくでしょう。まだ先の話ですが、林野庁ではこうしたことを念頭に取り組んでいます。

【会場】日本の国土の7割近くは山林。戦後の林野行政の結果、森林が荒廃したと聞いているが、日本の森林は本当に自給自足できないのでしょうか。森林保全の技術があるなら、気候風土を生かして早く育つ木を考えるなどして、海外からの木材輸入を減らし日本を再生・育成する議論はし尽くされたのでしょうか。

【今泉】戦後復興で建材などの木材需要が伸びたときに、林野庁は抵抗を試みたが輸入を自由化せざるをえなかったという歴史があります。そこで、日本の林業の運命が決まったという人もあります。その後林業では立ち行かなくなり、平成13年にそれまでの林業基本法を改正した森林・林業基本法が制定されました。それまでの経済活動としての林業が発展することで良くなるとされていた考え方から、多面的機能が持続的に発揮されることが重視されるようになりました。森林そのものも、短期間で量を生産するのでなく、伐採期間を長くし、樹木として自然に近い森林の状態において、持続的に活用するという理念になりました。今はそれにのっとって、長期的政策を進めています。

【EPO/GEOC】木材自給率そのものを上げるよう努めているかと聞かれた場合はどうでしょう?

【今泉】指標として自給率を使わないという考え方になっています。森林が理想的な状態になったとき、持続的に使える量をどれくらい有効に使えているかという有効利用率という考え方に変わってきています。

【尾崎】違法に伐採された木材が安価に輸入されていることに対する対策とともに、国産材の多面的な利用を、他省庁と連携して強化してほしい。消費者にもそうした認識を持ってもらいたいと思います。

●森林破壊を止める効果的な方法について

【会場】生態系を破壊している経済システムをどう乗り越えたらいいのでしょうか。例えばブラジルの木材業者は採算が合わないので、植林できないという人がいる。効果のある方法はないのでしょうか。

【今泉】個人的な見解です。循環型社会の構築ということを考えた場合、使い捨ての化石燃料ではなく、太陽や土壌が自然に再生産するバイオマス資源を使うのがいいとは思います。が、バイオマス資源を使う場合でさえ加工の際に石油資源を使うこともあるわけで、消費者が行き過ぎた錯覚をしてはいけない。全体のバランスを考えるべきだと思っています。どういう消費行動を促すべきかを考えるのが我々の仕事かと思っています。

●非木材紙の利用について

【会場】さとうきびやバナナなどの非木材の再生利用で木材の消費量を少なくするのはどうですか。世界第2位のバナナ産出国であるウガンダは関心を持っていると聞きますが。

【尾崎】非木材紙については代替案に関するレポートを出し、企業にもを見せて技術などを紹介している。ただ、日本国内の技術者とはコミュニケーションがまだ不十分なので、今後機会を設け、企業などに提言できるようにしたい。

FSC認証材について

【会場】FSC認証材の需要が日本ではなかなかないと思います。ヨーロッパ諸国ではどういうインセンティブがあって普及しているのか伺いたいのですが。

【尾崎】グリーンピース・ジャパンでは、経済的面・環境面・第3者の立場で審査し、消費者まで追うシステムとして、FSCを支持しています。日本ではここ2~3年知られてきた程度なので、今後消費者に理解して選択してもらうことが重要。ヨーロッパでは政府レベルで取り組んでいます。企業では、例えばスウェーデンの家具メーカーのイケアは、何年までに何パーセント使うと目標を立て、実行していくプログラムをつくり、私たちもその話し合いに参加しています。日本では、企業間レベルの認識はあるが、市場には出回っていません。日本製品がヨーロッパで欲しいといわれて、日本の林業家に問い合わせがあるということもあるそうです。国内でも認識が高まるといいと思います。

【EPO/GEOC】FSC認証を企業に使わせる誘導システムはあるんでしょうか。

【尾崎】(財)世界自然保護基金ジャパンにはありますが、関係者外部への発信は十分でないかもしれません。

●水について

【会場】林野庁では、今までは生物多様性に関するモニタリング評価の手法を取っているが、これからは水だと思います。水の評価法をどれくらい重視していますか。また指標はありますか。

【今泉】基準と指標については、国際的に9つくらいの枠組みがあり、水と土がセットになっています。森林が重要な役割を果たしているという点で、基準と指標が組み込まれている。水は明確に位置づけられていますが、世界的な注目度は必ずしも高くありません。水も森林の重要性を訴えるためのPRポイントとしてやっていきたい。昨年京都で開催された水フォーラムが再来年にはメキシコで開催されます。林野庁でも森林と水をテーマにアピールする計画です。

●途上国の発展や開発について

【会場】森林はどんどんなくなっているが、地域の人は伐採によって経済的に豊かになるのも事実では?単に「守る」というだけではなく、どのようなデータの裏づけのもとに活動しているのですか。

【尾崎】途上国の発展や開発を無視しているわけではありませんが、天然の資源が失われているという現状を強調して話しました。途上国での違法伐採は、地域の人も支持していないケースや、最初に提示されたものとは違う条件で進められ、住民が声を上げても届かないという問題もあります。そういう場合に、私たちが地域に入ってコミュニケーションを取りながら解決に向けて努力しています。一部の企業だけが利益を得るために伐採しているような場合は、輸入国側の需要があるために伐採が進んでいるという事実に焦点を当ててアピールしています。

●過放牧と焼畑による森林破壊について

【会場】途上国での過放牧や焼畑による森林破壊に対してはどういう取り組みをしているのでしょうか。

【平田】私たちの活動の範囲を超えているのでお答えできません。

【尾崎】焼畑については取り組んでいないので直接のコメントはできません。焼畑の前に、企業が森を切り開いている点を問題視した活動を行っています。


■両方にまたがる問題について-質疑応答

●政府が消費者に求めることについて

【会場】政府が一消費者に何を求めているのかが全く見えません。消費者はゴミを買わされて、それを燃やしているという状況。例えば木製の家を壊したときに燃やさないようにして、木材の再循環をするべきだと思います。

【平田】全くその通りです。「電気消しましょう」「マイバッグを持ちましょう」というかけ声だけで、具体的な情報や仕掛けがありません。一方で大量の電力を消費するプラズマテレビのCMが流れるなど、消費者から見るとちぐはぐなメッセージを受け取っていて、国民自身を責められない状況にあると思います。それを踏まえて提言に生かしていきたい。

【尾崎】木材住宅の再利用に関連したことでは、ごみを出さないようにしようという「ゼロ・ウェイスト」という活動もしています。

排出権取引について

【会場】排出権の国際間の取引の現状を教えてください。

【今泉】森林関係は吸収源としてカウントするかどうかがポイント。基本的には途上国で日本の投資による植林・造林をするとカウントできる(CDM)。ただどこでも木を植えればいいという単純なものではなく、通常のプロジェクトではなし得なかった追加的な吸収分をカウントできるという限定的なルールです。

●排出権取引の情報公開について

【会場】これからCO2排出権取引が始まるが、気候変動にかかわる問題については情報公開が非常に重要だと考えています。どの企業がお金で買って排出権を得ているのか、どの企業が実際に削減努力をしているのかなど、企業名の公開は予定されているのでしょうか。PRTR法で公開される情報は排出権取引で削減ということになった場合、その部分も削減したという扱いになるのでしょうか。

●炭素税と森林の吸収

【会場】平田さんの話の中に、京都議定書の温室効果ガス6%削減目標のうち3.9%を森林などの吸収源でまかなうという数字がありました。国産材の消費量は依然として減り続けているようだが、林野庁としては元に戻す努力をしているのでしょうか。炭素税を導入して、温室効果ガスを国内で排出する輸入品に炭素税をかけて、吸収に見合った排出権を上がった収益で日本が買う、という方法で京都議定書の約束を果たせないだろうかと考えるのですが。

【平田】温暖化対策という名の下に行われる森林対策には疑問を持っています。今日本の温暖化対策で考えている森林管理は間伐とか下草刈りなどのマネジメント。森林が健全な状態になるのは大切なことだが、こうしたことで吸収量が増えるという科学的根拠はありません。吸ったと見なして数えてしまおうとしているだけです。
 むしろ、間伐や下草刈りから出た木材の利用そのものを促進する政策こそが、温暖化対策にもつながり森林のためにもいい。日本の林業や国産材の利用を進める政策によって、鉄やセメントを使っていたCO2排出が減らせます。持続可能な範囲でバイオマス利用をすれば、石油や石炭の代わりにもなる。木材の利用法から森林対策を図るべきだと思います。

【今泉】林野庁としては、森林がしっかり管理されている状態が、京都議定書にもある持続可能な森林経営に該当すると考えます。木は生長すればその分多くの炭素を吸収する訳ですから。木材の利用を促すということは根本的な政策としてしっかりやっています。


Seminars on Sustainable Development

グローバルな課題を理解し、各地域・各テーマでより効果的に活動するために

各地・各団体の環境保全活動は他の活動や「持続可能な開発」という概念とどのような連関性を持っているのでしょうか。今回の一連のセミナーは、グローバルな流れと地域活動のつながりを見つけるために企画しました。国連を中心に取り組まれてきた地球規模での動き(歴史やヨハネスブルグサミット、その関連の条約)などについてまず捉え、また各団体の具体的活動とその連関性はどのようになっているか考え、各団体活動の位置や使命を再確認することを目的としています。これによって環境・開発問題に関してのさまざまな視点を養い、また連携やさらなる発展の可能性を見出すことが期待されます。
*用語解説は主にEICネットのホームページにリンクしています。