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わたしのまちのSDGs×協働×ESD EPOカフェ①グリーンインフラからはじまる未来の都市づくり 報告 2020年3月31日

わたしのまちのSDGs×協働×ESD EPOカフェについて

EPOカフェとは、持続可能な社会とは何かを考えるため、ひとつのテーマに対して様々な切り口で話題提供をし、参加者も一緒に掘り下げていく、対話の場です。

今回は、国交省が中心に取り組み始めている「グリーンインフラ」について取り上げました。

開催概要

 

〇日時:令和元年7月30日(火)17:00~20:40(受付16:30)

〇場所:地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
   (東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F)

〇定員:30名

〇参加費:500円(お茶代) 

〇主催:関東地方環境パートナーシップオフィス(関東EPO)

〇協力:地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)

【モデレーター】

一言 太郎氏/国土交通省 都市局 都市計画課

【ゲスト】

・鈴木 亮平氏/特定非営利活動法人Urban design partners balloon 理事長

・小林 乙哉氏/東京急行電鉄株式会社 都市経営戦略室 戦略企画グループ

・新井 聖司氏/ 大日本コンサルタント株式会社 新エネルギー推進部・事業室

【今回のテーマ】

□わたしの課題意識は「みどりは、守りの時代から攻めの時代へ!」

□今日みなさんとお話したいことは「どんな都市に住みたいですか?」

話題提供

 

グリーンインフラからはじまる未来の都市づくり/一言氏

・「グリーンインフラ」という言葉が、自治体・企業・金融・経済団体に浸透しつつある。従来の環境分野の中では、経済的な文脈で語りやすいイシュー。
・国土交通省が作成したグリーンインフラ推進戦略では、「これがグリーンインフラだ」と言い切らないようにするように心がけた。その代わりに、「特徴」を以下の3つにまとめた。
 https://www.mlit.go.jp/common/001297374.pdf

 ―機能の多様性
 ―多様な主体の参画
 ―時間の経過とともにその機能を発揮する(「成⻑する」⼜は「育てる」インフラ) 

・成長戦略等の政府の政策にも、グリーンインフラに関する記述を入れた。グリーンインフラを「新たな投資と人材を呼び込む」とし、経済政策の1つに位置付けたことは大きい。
・今日の会場への投げかけ「どんな都市に住みたいか」について、これから大きく変化していくはず。
 -どこに住むか → 終の棲家から、流動的な住まい方へと変化が起きる。一生で数回、住む町が変わる可能性。
 -どう働くか → 通勤をしないライフスタイルが一般化していくとき、居住環境の周りで幸福を満たせる街とは
・公共は、人や組織に信用を付与するような黒子的な役割が求められるようになる

 

カシニワについて/鈴木氏

・千葉県の柏市のカシニワ制度についての紹介
 http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/110600/p042713.html 
・管理ができない空き地×緑の活動をしたい市民を行政がマッチングして、新たなパブリックスペースを生む取り組み。
・活動の形としては、空き地を活用して、祭りやマルシェ、花壇、畑などを、住民の手で行う。子どもから大人まで、緑に触れて、自分たちで作っていく空間になる。地域が地域の課題に合わせてカスタマイズして作っていく緑の空間。
・まちに緑を増やそうという取り組みだが、その視点だけだと広がり・持続性が厳しいので、空き地を自分の活動の延長としてしっかり活用して、地域に還元できる人に開いたことが一つの特徴。園芸療法、マルシェなど、それぞれの「やってみたい」をかなえる場所として。
・縮小時代のまちづくりにおいて、住民の「住み続けたい」想いをかなえる場としての、空き地、グリーンインフラ。それを活かした豊かな暮らし、楽しみ方をしっかり自分達で作っていくこと、文化を育てていきながら、グリーンインフラを作っていけたらと思っている。

 

東急の都市経営戦略/小林氏

・都市計画の原点として、エベネザー・ハワード氏の「都市を選ぶ選択肢と、田舎を選ぶ選択肢と、もう一つの選択肢が必要だ」という考え方がある。都会に人が集まって、環境が悪化し、緑が重要だという振り返りから生まれている考え方。
・現状はどうか。「住む」と「働く」が分離されていて、ハワードが提唱した「もう一つの選択肢」=職住近接都市にはなっていない。
・二子玉川ライズ:従来のイメージで「働く」場所ではないところに、「働く」ための施設を作って、グリーンインフラの考え方をベースに開発した事例。  
 https://www.rise.sc/
・人々の住まいの選択の動向をみると、利便性を捨てても、それ以外の価値を求める傾向にあるのではないかと考えている。

 

ABINC認証制度について/新井氏

・生物多様性や環境分野について、多くの民間企業が様々取り組んでいるが、それをきちんと評価をして緑を増やすための取組を促進する必要がある。そこを目指す認証制度がABINC認証制度。http://www.abinc.or.jp/
・取り組む企業の規模やエリア、目的が違うため、認証にもシリーズがある。今は集合住宅が非常に多い。入居者獲得の材料に使われている。
・シリーズの多くが、環境づくり・維持管理・コミュニケーション活動などの項目ごとに加点されていく加算方式をとっているが、それに加えABINC ADVANCEを作った。従来の加算方式に加えて、SDGsに関する対応を問う、論述方式を追加した。資源の循環が持続可能であることが前提でなければならない。
・課題として、まず社会にもっと「みどりの価値」が認知されることが必要。そのうえで、広域での展開が必要で、自治体の協力が不可欠。今まではBtoBが主であったが今後はBtoCの展開を検討したい。

質疑応答・トークセッション

Q.ABINC認証について

 

鈴木;ABINCの話に対して。柏市には、里山活動している高齢者が元気に活動をしている。そういった活用が、例えばABINCの中でもうまく評価されるといいと思う。BtoCの文脈で、例えば企業が里山の保全のサポートをすることが評価されるとか、そういう広がりがあれば良いと思った。

新井;ABINCが評価している緑地は一般に公開空地が多い。公開空地というのは、だれでも入れる場所として開放することで、建築における容積率が上がっている場所。今は、そういった開発に伴う事業者の取り組みを評価することにとどまっている。その中で、地域の人との連携を維持管理計画に盛り込んだり、マンションであれば専門家を呼んでコミュニティに関わったりしている事例はあるが、現状ではそこを掬い上げられてないのが問題なので、もう少し生物多様性として全体を見ていくことを考えていきたい。

Q.カシニワについて

小林
;カシニワについて、土地所有者との貸借契約のハードルはないのか、また、自分の家の隣で公園的利用をされるのは嫌だと思う人もいるかもしれないと思ったが、実態はどのような感じなのか。


鈴木
;土地を貸す話は、なかなか出てきにくいのは事実。今は、大地主が地域のために一つくらいいいな、というところを借りており、私たちが団体として借りているところは、自分達で税も払っている。貸し手としては、管理のためにどこかの企業に払うよりコストがかからずメリットがある。柏市の税条例、地縁団体は減免されるということもあるので、地域のために使ってほしいということもある。
周辺の人の反応は、場所によってまちまち。印象として、奥まった場所の空き地の方が抵抗感が出やすい気がする。一方、子供たちが関わっているところは比較的開けて通行人からも見える場所なので、理解は得られている。こういうところでは、地域の人が勝手にアレンジしだすようなことが起こる。一番大事なのは、そこがただの空き地じゃなく、みんなで使える場所になるよ、ということ。そして、そのプロセスが性急でないことが重要。

小林;すごく興味がある。自治体が管理する公園には限界があると思う。ルールが厳格。それを無理やり変える話でもなく、民間の土地が持つ場の力を活かして伸ばしていきたい。

鈴木;カシニワ制度は市の職員が作ったが、やろうとしたきっかけは、「市民が手入れした方が、絶対にクオリティが高くなる」という信念があったと聞いている。公園の問題は、公共の土地だとどうしても平等性が優先されてしまうことにあると思う。

Q.カシニワ制度のように、住民が主体的・自立的に継続するための推進力は何か?

 

新井;鈴木さんに質問。BtoBで認証したときに、例えばマンションであれば、相手方がディベロッパーから管理会社、管理組合へと変わってしまうことや、あとから入ってきた入居者が認証のことを知らないことなど、認証の対象となった最初の計画がきちんと引き継がれていかないという課題がある。始まった取り組みが、地域の中で自立的に動いていくための推進力とは何だと思うか?

鈴木;すぐうまくいく取り組みは少ない。時間がかかる。カシニワも最初は、小さい活動をやっている団体がいっぱいあった。それを市の担当が拾い上げて、つなげていった。「カシニワ的活動」をしている人たちに「カシニワ」という名前を付けた感じ。小さい芽を行政が拾っていく過程が大事だった。緑に関心がある人はどこにでもいる。それをちゃんとした活動にしていくかどうかは、やりたい人の個人的なタイミングに依存するが、柏市では良いタイミングで行政やカシニワとつながった。民間の会社で管理しているフィールドの場合でも、そうしたことは十分あるのではないかと思う。

Q.経済性の文脈で語られることの多い、“評価”。グリーンインフラにおいては、必ずしも経済性を有しない活動の評価が課題だが、ABINCにおいて、現在のBtoBの仕組み以外にどのようなことが考えられるか。

 

一言;ABINC運営を行うための収益はどうなっているのかと、認証を受けた事業のメリットを教えていただきたい。そのうえで、BtoBの仕組み以外がないのかを聞いてみたい。例えば、CSR活動でお金を出したい企業と、活動のマッチングをするための認証を行う可能性はないだろうか。

新井;ABINCの収益は、ひとつは認証取得の手数料。もうひとつが、認証を申請するための講習会。講習会については、評価の方法がやや複雑なので、受講した人のみが申請できることとなっている。今後どうメリットをあげていくかということだが、一つは、オリンピック・パラリンピックの選手村などにおいて、「持続可能性」をどうするかという話が上がっていて、緑を増やして防災機能やコミュニティの形成を、緑の評価としてしていこうとしている。あと、アメリカでは、生物多様性のオフセットがある。ABINCで認証した緑地は生物にとっても人にとってもいいものになっているので、CSRのオフセットのフィールドとして使ってもらい、投資を呼び込むという可能性もある。その仲介をABINCでやることも考えている。

一言;投資という論点が出たが、金融の知識は重要だと思う。

 

Q.二子玉川ライズの入居者の感想、動向について

 

一言;小林さんへの質問。ニコタマに楽天が入ったという話があったが、どういう理由でそこに入り、どのように評価しているか。

小林;聞き及んでいる範囲では、トップが二子玉川の環境を非常に気に入っていたと聞いている。入居後も良い評価。メンタルを病む人が減ったということを聞いている。
しかし、楽天だけではなく、10人単位で働く方々が街に増えて、子育てをしつつ、都心に行く必要がない生活をしている。その動きが、すごく面白いと思っている。

一言;地方と都心では家賃が全く違うので、地方では同じ資本ではるかに長くチャレンジができる。地方の産業育成の観点からも、二子玉川で起きていることは重要だと思う。

Q.継続のためには、グリーンインフラのフィールドに経済性を持たせることがキモ。カシニワではどうやっている?

 

一言;鈴木さんに質問。人口減少を踏まえて、土地に宅地以外の経済性をどうやって持たせるかを考えなければならないが、今のところ食料かエネルギーしかないと思っている。八百屋をやって、土地利用としての農業の経済性を知っている鈴木さんに、その経緯や考え方を聞いてみたい。

鈴木;副業で八百屋をやっている(笑) マルシェを始めたのは、空き地の利活用から。花好き、緑好きだけでは継続的に運用できないと思い、空き地でマーケットをやりたいと思っていた。柏は農業も盛んで、野菜を売る場所を生み出せないか、ということになり、農家にヒアリングしたら、駅前ならやりたいという。また、個人経営の飲食店も多く、彼らは地元産の農産物がほしい。ニーズも見えたので、マルシェを始めた。やっているうちに、週一では足りなくなり、農家も飲食店もニーズが高まり、駅前の空き店舗で八百屋を始めた。空き地から空き店舗にレベルアップした。農家と飲食店が経営に入っていて、代表は地元産の食プロデュースをする人。こんな風に、ステップアップしたい人、チャレンジしたい人が空き地を活用して育っていく流れができると、面白く続くのではないかと思っている。
柏市の農業にポテンシャルを感じた。車で10分で農地に行ける地域。地域の人は気づいていないけど、それはすごく豊かなこと。食と住環境が近いこと。柏市の強みになると思う。グリーンインフラという視点で見ても、ポテンシャルが高い。地産地消はこれから強いブランディングだと思う。

一言;国分寺や横浜、練馬も都市農業によるブランディングを行っている。最近では、練馬で駐車場を農地に戻すケースもある。コミュニティの中には農業がやりたいという若者もいるので、そういう人の活動の受け皿としても農地は重要。柏市は合併した地域に農地が多く、そこの住民たちには、柏だけど柏じゃないみたいな心の距離があった。マルシェを通じて、鈴木さんがその距離を縮めている。駅前の小さな土地が、地場の産業に対してシビックプライドを与えているというのは、すごく夢のある話。

Q.過去、初めから緑を介在させない都市計画をしてきたのは、緑地は採算性が合わないから?

 

参加者;ニコタマライズの成功の理由の一つに緑地と多摩川の付加価値があったと思う。一方、港北ニュータウンのように大規模な緑地をはじめから整備するのは、民間企業には厳しいということだが、緑地が増えると採算性がなくなるということか?

小林;当時の社会状況があるが、行政のほうが、大胆な緑地計画ができたという背景があった。結果論として、その当時は宅地が必要で、緑地を削らざるを得なかった。民間としてやろうと思えばできたと思うが、短期的な収益を目指すと、そうなってしまうのだと思う。長期的に見たら、緑地を残す場合と残さない場合で、どちらが資産価値があるかはしっかりと考えるべき。

参加者;どういうやりようがあったのか?

小林;とてもいい質問。これからの話として、今、仮に売却して儲かる土地を、緑地化するメリットはない。売れる土地は売る、あるいは、貸すということになってしまう。それをやってしまうと緑地がなくなる。海外では、公共の空間を制度的に保全している事例はある。「持続する都市とは何か」という強烈な指針があったら、それに従って指標ができるはず。これは簡単ではないが、欧州の文脈ではできている。現状では、経済合理性に勝る方針がないと、無理。難しいと思うけど、できると思う。

一言;企業が単体でやるということではない。その時その時の公共が、一緒にどこまで頑張れるか。それによって、将来その町がどう残るかが決まると思う。企業には企業の、役所は役所の役割がある。その作り込みが、民間も行政も、仕事の作り方の腕の見せ所。

 

課題の整理

①持続可能なまちとは何か

人が豊かに暮らし続けるために、緑は欠かせないとわかっていても、その時の経済状況、人の動きによって、緑地、生物多様性は後回しにされてきた。それを乗り越える、経済合理性に勝る指標としても必要な指針、方針について。

②生物多様性オフセット、金融の仕組み

緑は大切ということについて評価して経済性を持たせることも、また必須事項であり、過去に苦戦してきている分野である。サスティナビリティという視点も踏まえて、どうしたらこの分野が金融の仕組みとつながることができるのか。

③グリーンインフラがまちにもたらす価値

暮らし方、働き方が変わっていく社会の中で、グリーンインフラは人々にどのような新しい価値をもたらすのか。その可能性を探る。

④グリーンインフラと市民の役割

グリーンインフラの担い手は、行政ではなく、民間である。行政はその活動に信用を付与する役割があるとして、いかに市民はグリーンインフラと関わっていくのかについて。

⑤「グリーンインフラ」で何がしたい?

これからもっと身近になっていくであろう「グリーンインフラ」について、どんな可能性があるのか、どんなことがやりたいかについて。

問いと対話の記録

質疑応答、トークセッションを踏まえて、以下5つの「問い」を立てて、各テーブルで対話する時間を作った。


  1. 持続可能なまちとは何か
  2. 生物多様性オフセット、金融の仕組み
  3. グリーンインフラがまちにもたらす価値
  4. グリーンインフラと市民の役割
  5. 「グリーンインフラ」で何がしたい?

 

①持続可能なまちとは何か


持続可能とは、住民のまちに対するアイデンティティを持続させること

・まず、誰にとっての持続可能性なのか?→“住民”(生活者、企業も含む)
そのために、どうするか?を考えた。

地域の宝をてこにする
・今後の社会では人口減少、都市が消滅する可能性がある。
 → 人と人とのコミュニケーション + 人口 + 経済性 が必要。
・地域には埋もれている財産がある。地域がそれぞれ独自の魅力を伸ばす必要があって、住民が、昔から蓄えてきた魅力を強める必要がある。そこから住民が主体となって考えていったら、いいと思う。

よそ者がもたらす、地域の宝の再発見の視点
・そうした気付きのきっかけをよそ者が作っていることに気が付いた。住民と外部の接点が必要不可欠。
 → 住民×よそ者=刺激・地域の資源再発見 → 価値創造 → 持続可能なまち

 

②生物多様性オフセット・金融の仕組み


お金の回り方を考える

・仕組みを支える人、コストを払う人と、受益者がバラバラになっている構造が多い中で、グリーンインフラは、住民が参加してその効果、利益を享受するという意味ではいいと思う。さらにそこに、生物多様性の価値に投資をする存在が加わることで、お金が回る仕組みができるかもしれない。

金融とはリスク計算と価値換算=認証制度の可能性
・金融とは、突き詰めると世の中のリスクを計測し、価値換算していくこと。グリーンインフラ、生物多様性を価値換算するのは難しい。
・価値を数値化することについて、認証制度がより重要になっていくと改めて感じた。外部からの投資家も集めやすく、整備に対して外からの投資も集められるのでは。

 

③グリーンインフラがまちにもたらす価値


結論;グリーンインフラは生活そのものである。

・グリーンインフラは、
 ―コミュニケーションの創出のツールとしてのグリーンインフラ
 ―地域と関わりたい若者が地域とつながる場としてのグリーンインフラ
 ―地域をデザインする思考におけるアートとしてのグリーンインフラ
 ―緑地の価値を食や防災を通じて消費者に伝える、公共としてのグリーンインフラ

などなど、精神的なものも含めて、多様な価値を創出している。

 

④グリーンインフラと市民の役割


・グリーンインフラを進めるためには、継続的にその場にいて関わってくれる人(≒市民)が必要。さらに、その後取り組みが持続するには、経済性を意識しながら関わってくれる「市民」が必要。グリーンインフラから価値を生み出し、享受し、また還元するサイクルを作る必要がある。
・行政や企業が、市民をいかに掘り起こして、サポートするかが重要。市民が主役。

 

⑤「グリーンインフラ」で何がしたい?

・ヒートアイランド緩和、家庭菜園、ツリーハウス、生物多様性への寄与・・・夢はたくさんあるが、どうやってすすめていけばいいか?

・緑地を作ればそれでOK!ではなく、どう使うか、というサイクルを考えることが重要。
緑地を作る→つかう→メリットを生み出す
・家庭菜園からヒートアイランド対策まで、スケールの違いを考えないといけない。

どうやったらグリーンインフラが定着するのか?
 ―「楽しそう」にやっている人がいること!子どもが楽しそうにしていることはポイント
 ―EPOカフェのような、対話の場も大切

 

登壇者コメント

「グリーン」はマジックワード

鈴木;グリーンということばはマジックワード。グリーンだとみんな平等に語れる。緑に触れる権利は平等。楽しむ権利も平等。個性を活かしながら、議論できるし、楽しいことを考えられる。行政と仕事をする中で、緑というととっつきやすい。それは市民も一緒。いい言葉。グリーンを使いこなせるように考えていければ。

圧倒的に足りない「グリーン」

小林;グリーンインフラということを、初めにどういう分野の人が言い出したかわからないが、(緑のことを)「グリーンインフラ」と言わざるを得ない世の中なのか、と改めて思った。共感できるのは、圧倒的にグリーンが足りないからであって、それを共通言語に喋れているのは、人間本質的に求めているからだと実感した。

「グリーン」はコミュニティのベース

新井;生きものが身近にあるまちづくりに携わりたいと思って現職を選んだ。昔から、生きものの価値とか評価手法はいろんな研究者がやっていたが表に出てこなかった。今、SDGsなどもあって、表に出てきたのはうれしい。グリーンがコミュニティのベースになっていく。これから高齢者が増えたり、インフラにお金が回らなくなったりするときに、社会的受け皿になっていくのではと思った。

「グリーン」がつなぐヨコとタテ、過去と未来

一言;国交省でこういう議論が省で行われていることに、内部の人間としても隔世の感がある。ある時は、いかに国際的な競争力を持つかというのが政策のトレンドだった。今日の議論が、皆さんそれぞれにとってのグリーンインフラ。その視点と気持ちを忘れず、皆さんの取り組みもレベルアップしてほしい。その間に、私たちも、協力して社会を盛り上げていこうと思っている。

総括

 

 小林氏が触れたように、都市部には圧倒的に「グリーン」が足りない。しかし、それは、そういう開発をした企業だけが悪いのではない。その時その時の市民、わたしたち一人ひとりが選択してきたまちづくりの結果が、現在であることは間違いがない。経済性を求め、生産性を求め、「住む」と「働く」を分断した結果であるともいえる。「グリーンインフラ」という定義が今注目され、これだけの切り口で対話ができるようになったのは、人間の本質がやはり違和感を覚え、「グリーン」を求めているからではないか。

 「グリーンインフラ」は、誰のためのものか。それは、そこに住む人々、住民、市民のためである。今回の対話でも「市民」「住民」というキーワードが至る所で出ていた。「グリーンインフラ」がもたらす価値について、ヒートアイランド現象の緩和から、食料生産、防災、園芸、マルシェなど、実に多様な内容が確認されたが、こうした価値を享受するのは、企業だけでも行政だけでもなく、その地域に住むあらゆる人々である。

 グリーンインフラを考えることは、「どういうまちに住み続けたいか?」という問いから始まる。多くの人が、そこに「グリーン」があってほしいと感じるのではないだろうか。環境保全という視点からだけではなく、持続可能なまちづくりという視点から「グリーン」を捉えることで、人と自然が共存する未来のまちが見えてくる。

 心地よく暮らし続けるためのツールとしてのグリーンインフラという捉え方をすることで、その可能性がさらに広がる。やがてそのツールはコミュニティを生み、地域で循環する経済を作り出す可能性を秘めている。小さい循環かもしれないが、関わる人々の地域への愛着、シビックプライドに裏打ちされた循環は、経済だけではなく精神的にも豊かなまちを作っていく。

 そうした文化が定着することで、価値換算しにくいとされている「グリーン」の価値の指標作りが進むかもしれない。かつて、社会のニーズに合わせて緑地を減らした企業が、次は社会のニーズに合わせて、緑地を創るために動き出すかもしれない。国の政策は、グリーンインフラで横串を指し、変わる準備ができている。小さな流れと大きな流れを、一緒に変えていくために、やはりパートナーシップ、連携は重要である。

(文責・関東EPO高橋)