「関東ESD学びあいフォーラム」開催報告 2015年3月20日

★全体
関東ESD学びあいフォーラム
これからのESD~地域を活かす、地域と生きる人づくりとは~

「持続可能な社会」の担い手を育てるための教育が「持続可能な開発のための教育(ESD)」です。社会の様々な問題を解決するためには、自ら考え、客観的に判断し、他者と協力しながら課題解決に向けて行動する力が必要となります。2014年「国連ESDの10年」の総括として、岡山・名古屋で「ESD世界会議」が開催されました。フォーラムでは、国際会議の成果を受け、これからのESDや、ESD実践のためのポイントや具体的なプログラムについて学びあいました。

開催概要

ESD_manabiai_2014

〇日 時:2014年2月11日(水・祝)13:00~16:30

〇会 場:東京ウィメンズプラザ ホール(全体会)&視聴覚室(分科会)

東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B1F

→ 当日次第 (PDF:112k)

プログラム:基調講演

○基調講演1―――――
「これまでのESDとこれからのESD~GAPを踏まえて~」★基調講演1

柴尾 智子(しばおともこ)氏
公益財団法人 ユネスコ・アジア文化センター シニアアドバイザー
公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)で途上国における国際理解教育、識字、教材制作などのプロジェクトの運営や研修の実施、ESD実践支援、国内のユネスコスクール振興と海外とのネットワークづくりなどの事業を統括した。現在ACCUシニアアドバイザーとして、連携促進、新規事業開拓担当。

 

◇10年間継続的にESDに携わってきた体験の中で感じたことを、岡山での各種ステークホルダー会議、名古屋での世界会議の様子、そのアウトプットとしての「あいち・なごや宣言」、「グローバルアクションプログラム(GAP)」の要点を解説していただきました。
学習者自身の変容と、学習者が地域社会を変えていく力を持つことが重要とされるESDにおいて、その潜在力が十分活用されていないことを踏まえて、学習者だけではなく地域全体が「持続可能な社会」への責任と学ぶ姿勢を持つこと、教育の革新の必要性をお話しいただきました。特にGAPについては、5つの優先行動分野をそれぞれバラバラに考えず、すべてを重要視していかなければならないことを強調されました。
ESD の今後の展開については、子どもも含め、学校や先生、保護者や地域の人を含めたすべての人が、現時点ですでに課題解決に係るステークホルダーであり、担い手であること、そして、学びを継続した将来もまたそうであるという視点の重要性に言及されました。
ESDとは今の地球環境や社会について、「これでいいのか」を問う生存への根源的な問いであること、そしてその担い手は子どもだけではなく大人も含めた私たち全員であるということの再確認をし、一人ひとりが変容し続け、考え続ける重要性を説かれました。

 

○基調講演2―――――

「地域に根ざした人材育成~土地への愛着を育む“トコロジスト”の紹介~」★基調講演2

箱田 敦只(はこだあつし)氏
公益財団法人 日本野鳥の会 普及室 室長代理
1990年に大学卒業と同時に日本野鳥の会に就職し、姫路市自然観察の森に赴任する。1992年横浜自然観察の森レンジャー、1996年東京港野鳥公園レンジャーを経て、1997年に東京の本部事務所で自然保護活動に関わる人材育成担当としてレンジャー養成講座等の事業を立ち上げる他、自然観察施設の職員やボランティアを対象とした研修やコンサルタントを担当。

 

◇具体的な地域でのESD人材育成の展開の一つとして、「トコロジスト」を紹介していただきました。トコロジストとは、①場所性、②学際性、③市民性というキーワードで整理される、「場のスペシャリスト」のことで、自分のフィールド(場)を持ち、その場について多分野にわたって興味を持ち、その知識を活かして地域づくりに貢献する人の総称です。箱田さんには、自身がトコロジストを目指したきっかけから、地域に展開していくプロセスを分かりやすくお話しいただき、「自分がやっている活動もESDにつながるのかも!」「自分もトコロジストを目指したい!」など、参加者の中でも共感された方が多かったようです。

 

実践のポイントを学びあうための分科会

・話題提供者からの事例紹介
・ディスカッション:そのテーマにおいて、重要なキーワードを各分科会で3つに絞りました。

①里山に学ぶ地域の人づくり 地域拠点のトリセツ
★分科会1話題提供者:富永一夫氏(NPOフュージョン長池 代表理事)

地域拠点を活かすためには、そこに根付く人づくりが必要不可欠です。継続性とそのコツについて、フュージョン長池の組織づくりの事例を中心に議論しました。
[キーワード]
※活動団体の世代交代について
・若者を組織に入れる
・組織内に若者のグループを区分けする
・全然別の組織を立ち上げる

 

②NEXTステージの突破口! “ヨソモノ”の力活用術
★分科会2話題提供者:村山史世氏(あざおね社中 /麻布大学 生命・環境科学部 環境科学科講師)

活動を次のステージに上げるため、マンネリ化した地域に新しい風を吹かすのに欠かせないのはヨソモノの力。あざおね社中の“ヨソモノ”の皆さんから発表いただき、活発な議論となりました。
[キーワード]
・地元の主体性
・若者の責任
・オープンマインド

 

③見よ、地域市民の底力 “つながり”の見える化入門
★分科会3話題提供者:大野覚氏(NPO法人茨城NPOセンター・コモンズ理事・事務局長)

地域に点在するキーマンを結びつけ、つながりを作るために必要なこととは何かを、NPOセンターコモンズさんのたくさんの事例を紹介いただきながら考えました。工夫だけでなく、課題も共有できた、良い会になりました。
[キーワード]
・スーパーコーディネーターの存在と育成 信頼・人望
・2歩目に進めるための人材と資金
・参加者の気持ち 達成感・メリット感・ワクワク感

 

④教材に命を吹き込め ESDツールとしての教材
★分科会4話題提供者:加藤正幸氏(チャウス自然体験学校代表)

ESDを展開するための教材が持つ力にフォーカス。チャウス自然学校さんの事例をお聞きし、教材・プログラムへの命の吹き込みに必要なこととは何かを議論。プログラムを作る段階も含め、ESDであることが分かりました。
[キーワード]
・学力をつける楽力
・引きよせあう力
・ESDの理解が次のステップをつくる。

 

全体会・交流会

4つの分科会終了後、再び皆さんで集合し、★全体最後
それぞれで話し合った成果を共有しました。

各分科会のファシリテーター、話題提供者の方より、3つに絞ったキーワードの紹介、そこに至る議論の経緯などを発表していただきました。 全体会後、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)に会場を移して交流会も開催しました。他の分科会の方、講師の方など、会議の中だけでは時間も足りなかった議論の続きが行われました。