「なぜ今、ESDが必要か?環境教育においてESDを実践するには?」 /関東ESD学びあいフォーラム 講演録


関東ESD学びあいフォーラム
○基調講演1
「なぜ今、ESDが必要か?
 環境教育においてESDを実践するには?」

 ~実践のポイント~

川嶋直氏
KP(紙芝居プレゼンテーション)記録

※本記録は、講師の川嶋様のご厚意により、当日の基調講演の内容をご紹介するものです。


■イントロダクション



 グーチョキパーアンケートをやります。ESDに関して環境教育を含めて何か行っているESDプレイヤーはグーを、
環境教育以外のESDプレイヤーの人はチョキを、ESDに関して何か行動しているわけではないが観客席にいて
見守っている方はパー。当てはまるものを出して下さい。大体3分の1ずつかな。

 次に、「ESD伝える・手ごたえ調査」。誰かにESDを伝える時に、手応えがある人はグー、
中々難しいという人はパーを出して下さい。パーが少し少ないかな。



■シーン1:「伝える」ということ



 伝えるのは、中々難しい。中国の古い諺で「聞いたことは忘れる」というのがある。老子が言ったと言われている。

「聞いたこと」は忘れる。「見たこと」は覚える。「やったこと」は分かる。
誰かがこれに付け加えて「発見したことはできる」と言った。「分かるとできる」は大違いとも良く言われる。
これは学ぶ側からの視点だが、伝える側の人はひっくり返して考えなければならない。「言ったこと」は忘れられる。

「僕、言ったんですけど」、「いやいや、言ったかもしれないけど、伝わっていないんだよね」、と言っただけではダメ。
「見せたこと」は少し思い出せるかもしれない、「やらせたこと」でようやく分かってもらえるかもしれないが、
結局その人が発見したことが身に付く。ここの「やる」が「体験」。ここが「発見」。伝わるには「体験と発見」が大事。
言っただけで伝わるなら本当に楽。厳しい事を言えば「言ったら伝わる」は、伝える側の傲慢ではないか。
伝わらないとダメ。だから伝えるためにあらゆる工夫をする。



■シーン2:「環境教育にとって自然の中での体験は欠かせない!」



 私は山梨県の清里という八ヶ岳の麓に30数年前から住み、自然体験型の環境教育をずっと行っている。
最近では、森に入るよりも今日のように部屋の中で大学や行政、企業人相手等の人前で講演等をする仕事が多い。
しかしベースは、環境教育は森の中での自然体験が欠かせないと考えている。

そんな事を言っても「良い教材はあるので、森の中に行かなくても部屋の中でも環境教育ができる」
「(森の中での自然体験が必要という)証拠を見せなさい」と言う人もいる。

証拠を出すのは難しいがこんな調査がある。ある先生が女子大生に対して、次の3つの川の写真の内、
どれに一番親しみを感じるか選択する調査を行った。

上流域の川(自然豊か、生き物が多くいる)、都心部を流れる川、下流域の川(公園など身近な場所)、
3つ川の写真を見せて、その内どれか1つが圧倒的な支持を受けたが、みなさんはどれだと思いますか。

正解は、下流域の川。その次の支持を得たのが都市部を流れる川、
その理由を女子大生に理由を聞いた所、「虫がいそうな川は嫌なので消去法で選んだ」という回答があった。
最後に、上流域の川で遊んだことがある人を聞いた所、0だった。
100歩譲って公園の川に親しみを感じても、本来の自然の姿を毛嫌いするのはまずいのでは。

 「においも温度も痛みもない自然」。そもそも自分たちはどんな星に住んでいるのかを知らず、
ゴルフ場のような自然をキレイと言うが、彼女たちだけを責められるわけではなく、
自然の中での体験を作れなかった親、地域の大人の問題でもある。これが自然体験が大事だと僕が思う理由。



■シーン3:「環境教育2つの誤解」



ここからは、「環境教育2つの誤解」に関して問題提起をする。

要するに「みんな知らないから行動しない。色々な事を知ったら行動するはず」と言うのが1つの誤解。
しかし、30年環境教育をやっていて知っても行動しない人はいる。

人は大義や正しさだけではなく、経済的、社会的、習慣、「自分もやらなければ恥ずかしい」という世間の目、
など様々な要素があって人は行動するのではないか。
「知識か感情か」という話で言うと、ある生物学の先生は「感動という言葉はあるが知動という言葉はない」と言っている。

もう1つの誤解は「言ったら伝わる」ということ。人に教えさえすれば自分と同じ頭の構造で理解されるはず、
というのは大きな誤解。だからESDの学びの形は環境教育に限らず参加型・体験型を大事にしている。



■シーン4:人材育成ってどうしたら効果的?



 今日お越しのみなさんは、人材育成・教育に関わる意思のある人かどうか聞きたい。
どんな人材育成をしたら効果的か、学校以外の現場で考えたい。

・集合研修
 今日も同様だが、様々な分野の人が集まって行う集合研修という形がある。研修ではまず一般的には、講義を聞くという形式がある。一般化された話題を共有し、それを持って帰って活用する。また最近では体験・実習など実践を盛り込むこともあるが、まだまだ体験型は一般的ではなく、苦行のようにひたすら講義を聞く研修が多い。一般化された事例を自分の現場に合わせて翻訳して伝えなければならないがこれが難しい。どう翻訳するか、そもそも翻訳できないということもある。しかし集合研修には多様な人に出会い、自分を相対化して見るという良い点もある。

・出前研修
 また出前研修という形式もあるが、まだあまり一般的ではないが、私はこういうのが多い。その団体の関係者が集まり、団体にカスタマイズした学びの場ができ、むしろ講師が団体について体験させて学ばせてもらう場でもある。これは翻訳不要、むしろコンサルテーションに近い。ただ多様な組織から人が集まるわけではないので、相対化して自分たちを見ることが難しい。つまり、講師しか他所の風が入らない。

・OJT研修
 またOJTの研修というものもある。集合研修とセットで考えてもらいたい。集合研修で学んだことをOJTで活かし、自分の現場で実践する。そして研修で繋がった仲間たちと情報交換し、お互いに励まし合う。さらにフォローアップの集合研修(OJTを振り返る)もある。研修仲間や講師からフィードバックやアドバイスをもらえる。実践した後なので、さらに実践に活かせる振り返りが得られるのが利点である。

 ESD-J(認定NPO法人「持続可能な開発のための教育の10年」推進会議)の「未来へつなぐ」という企画で、ESDコーディネータープロジェクトをやっている。上記をセットにしたような研修を北九州・広島・岡山など各地で行っている。色々な研修方法をミックスして行っていかなければならないと思う。


■シーン5:MOOCS(Massive Open Online Courses)反転事業



 「MOOCs(ムークス)」「反転授業」というのを聞いたことがあるだろうか。
朝日新聞でも今年の正月に紹介されており、ネットで検索するとすぐに出てくる。

MOOCs(ムークス)とは、Massive Open Online Courses の略で、「大規模公開オンライン授業」の意味。
インターネット上の無料の動画サイトで有名大学講師等の講義を受け、レポートを書くと卒業できるという試みも始まっている。
日本では、佐賀県武雄市でも行われている。

また、「Kahan academy」というオンライン教育の旗頭があるが、
カーンさんというアメリカ人の方がいとこに数学を教えており、転勤等の関係で数学の動画をYoutubeにアップした。
そうすると、いとこだけではなく他の子どもも見るようになった。

いとこに「直接聞かないと分からないのでは?」と質問したが「そんなことはない。
ビデオの方が停止したり再生もできるのでいい」と言われた。
今ではカーン・アカデミーには動画が3,000本以上もアップされている。

 「反転授業」とは、教室に集まって一方的に講義を聞き、自宅では課題を出されて予習したりすることを反転させる、というもの。
講義は各自が家のネットで見て、教室に来たら質問や議論や新しいものを作ったりする。
昔は集まらないと授業が出来なかったが、今はそうではない。教師の役割が「教える」というよりも「引き出す」ことをする、
つまりファシリテーター型の先生が求められるようになってくるだろう。
要するにネットで優れた先生の講義を聞くことができる。

ESD-Jでも9本のビデオを作った。だからこれからはファシリテーター型の学びを大事にしてきたESDの出番。



■シーン6:このアナログなプレゼンテーション法はKP法



たくさん伝えればいいのではなく、何が印象に残って持ち帰れるかという点が大事。
KP法(紙芝居プレゼンテーション法)とは思考整理法で、いかに今日の人に何を伝えるかを考えて準備することが重要。
要は自分の頭をちゃんと整理して、ちゃんと準備しましょう、という話。シンプルで軌跡が見えるようにする。

よくパワーポイント説明で寝てしまったり、文字が多くて分からなくなってしまう人がいるが、
いかに聞き手・読み手に負担をかけ過ぎないかが重要だと考えている
。私の説明は話している量よりも文字の量は少ない。例えばパワーポイントで100伝えて8分かってもらうより、
KP法で10伝えて8分かってもらった方がいい。

これはパワーポイントの説明では「9割分からなかった」となり「KP法では8割分かった」となる。
参加者がどんな気持ちで帰れるかも重要な視点。
「これだけ伝えればそのうち何かヒットするだろう」と考えるかもしれないが、全部を逃す可能性もある。

KP法の基本はシンプルで、話すことを書く、書いたことを話す。
しかし、写真を活かしたいときはパワーポイントの方が圧倒的にきれいなので、
KP法と使い分けることも大切で、伝えるための準備をどうするかが、重要です。


ありがとうございました。



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